Shangri-La | angelique
  
 
Angelique
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 笑顔のゆくえ
 LOLLI-POP CANDY

 
 剣とお嬢さん
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 いつの日か君のとなりに
 羽化
 嘘とお嬢さん
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Attraction
 カトチャでGO!
 御覧あれ!


LOLLI-POP CANDY
<<Part:3.5>>


さて、どうしよう。
据え膳食わぬは男の恥、とはオスカーの隠れた座右の銘である。
水遊びですっかり冷えて、かわいらしいくしゃみまでしているアンジェリークに風邪をひかせないためには、風呂に入れてあたためてやるのが早い。
だが…
オスカーの思考は先ほどから同じ所で止まってしまう。
浴場に向かっている今になっても、オスカーはふんぎりがつかない。
抱き上げたアンジェリークをそっと見ると、嬉し気に微笑んでいる。
人見知りする彼女は、初めてのオスカーの屋敷と、知らない使用人を怖がって強く緊張していた。浴場へ向かうこの廊下でやっと、知らない人たちが周りにいなくなって、アンジェリークから肩の力が抜けていくのをオスカーが見て取ったほどだ。
侍女に風呂の世話をさせようと思っていたオスカーだったが、彼女の怯えを見ては、その案は諦めざるを得ない。
しかし…
アンジェと風呂に入る。
小さなアンジェリークのことだ。父親とそうするように、自分の前でも当然のように服を脱ぐだろう。
このアンジェがどんな娘になるのか、オスカーは知っているから、オスカーにはこの行為がなにか下心のある確信犯のように思えてしまう。
その娘に恋をしていたとなれば、なおさらだ。

オスカーはアンジェリークが好きだった。いつも儚げに微笑んでいた彼女を、オスカーは守ってやりたいと思っていた。
この感情を、恋だと自覚もしていた。それも、少年のような不器用な、一途で純粋な想い。
このお嬢ちゃんがあのお嬢ちゃんに成長していくのだ。
だからこそ、アンジェがどんなに無邪気に自分と風呂に入りたいと言っても、それは恋する相手に対する冒涜に思える。
まずいよなぁ。
どこかよその子と風呂に入るのならこんなに悩むことはないのに。

それだけではない。オスカー真剣にまずい、と思っている事は他にもある。
いや、むしろこちらの方が問題なのだ。
盗み見る様にアンジェリークを見た。
彼女は今はこんなにおちびちゃんだが、つい先日までは17歳の乙女だったのだ。きっと自分は、お子さまアンジェの裸から、成長したアンジェリークの体をほとんど条件反射のように想像するだろう。女性の体をよく知っているからこそ、本人の意志に反して、その作業は明確に行われる。
女慣れしてしまっている自分がこれほど恨めしく思えた事はない。
これこそ冒涜ではないか。彼女は真剣な恋の相手だ。その上、今は子供。
しかし…とさらに、オスカーはのめり込んでいく。
間違って、ちびっ子アンジェの体に自分の体が反応してしまったら!!
オスカーは目の前が真っ暗になる。もはや何に重点をおいて悩めばいいのか解らなくなるほど、オスカーは内心取り乱していた。
「おすかーさま?」
突然、怒涛のように苦悶している炎の守護聖の耳元で、アンジェリークに名を呼ばれて、オスカーは心臓がはずれるのではないかという程驚いてしまった。
「な、何かな、お嬢ちゃん」
ちょっと変、というように、アンジェリークは首をかしげている。
「何でもないんだ。気にしないでくれ」
女性の前でうろたえるような真似はしないぜ、と囁いてみても説得力にかけていた。
アンジェリークが真直ぐ自分を見ているのが痛い程感じられる。
「あのね、おすかーさま、あんじぇね」
アンジェリークはそんなオスカーにはお構いなしで、やわらかな手のひらをオスカーの頬に添えた。オスカーは息ができない。
自分の心臓の鼓動で、アンジェリークが振動酔いするのではないかと思った。
「おすかーさまの背中あらったげるね」
そう言って、にこーっと笑うと、オスカーの首に抱き付いた。
と、とりあえず。
オスカーはごくりと息を飲んで、浴場の扉を開ける。
腰にタオル巻いて入ろう。


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