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笑顔のゆくえ
<<Part:1>>


普通の女の子、だよね、私。

鏡の前で自分を確認する。いつもの何の変哲もない顔が、鏡に映ってる。
これが私。
いつもの私。
顔だって特別可愛いわけでもないし、頭だって善いほうじゃない。
普通なのに。

どうして、女王候補なんかに選ばれちゃったの‥‥?

全身が十分に映る鏡の縁どりの細やかさ。美しい細工の施された鏡の枠に指をはわすと、それでけで、なんだか惨めになってきた。
合成写真みたいな違和感。
鏡に映し出されれている背景に、自分だけが浮いているかんじ。
女王試験なんて、やりたくなかったな‥‥。
少女アンジェリークは、がっくりと肩を落として制服のエンジのリボンを結び直した。

自分の部屋よりも何倍も広い寮の一室で、アンジェリークは、憂鬱になるしか術がなかった。自分の身の程をいきなり目の前に突きつけられたような感じがしてしょうがないのである。
豪華な部屋に、豪華な食事。中世のアンティークのような完成された世界。
緑があふれて小鳥が歌って、笑い声の絶えない、平和主義の塊みたいな世界。
おとぎ話みたいに、天国みたいに、素敵すぎて、美しい世界。
どれをとっても、私みたいな小庶民には縁のない世界である。

レイチェルが見つかった時点で女王にすればいいのに‥‥

アンジェリークはため息をもう一つこぼして鏡を睨んだ。
リボンがなかなかうまく結べない。

‥‥何で私、こんなところにいるのかな‥‥

本当だったら今ごろ寝ぼけながら朝食をとっている。
毎朝代り映えのないメニューに文句をいいながら、朝のニュースを流して‥‥。
テレビの左上の時計で時間を確認しながら、遅刻を気にして食べるんだ。
卵焼きに、ソーセージ。トマトのサラダにトースト‥‥。
お母さんの料理の方がおいしかった。
ここで食べたどんな豪華な料理より、絶対おいしかった。

女王試験なんてどうでもいいのに‥‥。

女王にだったら、勝手に好きな人にやらせておけばいいのに。
アンジェリークは目を伏せた。
栗色の髪が、頬にかかる。
今日は黄色のリボンって気分じゃないな‥‥、そうつぶやいた。



それでも女王試験はうけなきゃいけない。今日はよっぽどサボろうと思ったけれど、ここでやめたら本当にただの馬鹿だ。
こんな辛い思いをして家から離れているんだ、何かしないと自分が可愛そう。アンジェリークは重い足取りで宮殿に続く庭園を歩きだした。
でも今日は美しい噴水にも緑にも何も感じない。
重いため息をもらした。
(適当におわらせて、今日は音楽でも聞いて寝よう‥‥)
そう決めて、アンジェリークは育成の様子を几帳面に書き込んだ立派なノートを開いた。
小さな文字が奇麗に並んでいるページをぱらぱらめくって、クリップボードの育成の予想表を写したページを開く。
(アルフォンシアの望みが一番高いのは‥‥)
望みの行を指で横になぞった。どの望みの量もあまり大差がない。
アンジェリークは、どの力も均等に送るという、えらく几帳面な方法で育成を行っていた。‥‥というより、あまりものを考えずに、執務室の端から順に育成をおねがいしたというべきか。とにかく、そのお陰で均等に万遍なく星が出来、育成もそれなりに出来ているのだが‥‥。
オスカーの、炎の星が一つもなかった。
(‥‥‥‥‥‥)
オスカーは苦手である。
最初に顔をあわせた時から苦手だった。
一目でわかった。彼が苦手な人物だということが。
目が違ったのだ。馬鹿にしたような目をしていた。
不遜な態度も、見下す瞳も、何もかもが喧嘩を売っているとしか思えない。
そのくせ『お嬢ちゃん』とか気障な台詞べらべら喋って、馬鹿にする事甚だしい。主星にもそんなガラの悪い男の子がいたけれど、たちの悪さが違う。彼等は気に入らなない事があったら、暴力やらなにやらで感情を表現していた。それに対して、あの炎の守護聖とやらは、嫌味と冗談のぎりぎりの言葉を選んで相手の出方を見たり、口では甘い事いうくせに目が馬鹿にして笑ってたりする。自分に酔っている人間でないと、そんな事は出来ない。
『言いたい事あんなら言えばいいじゃない』
心のなかでは売られた喧嘩を買っていたけど、出会ってすぐには人道に反すると思って言わなかった。
変わりに適当にあしらってやった。

ずいぶんとそっけないお姫様だな。
そんなんじゃ王子様のハートをいとめる事はできないぜ。

そのときのオスカーの台詞。笑ったアイスブルーの瞳が見下す。
紅い髪をかきあげて何処かに去っていった彼を睨んで私は思った。

最低。

最低。ああいうのが一番嫌い。なんでもかんでも恋愛に結び付けて、脳味噌の90パーセント以上がそっちのことしか考えてないタイプ。
そう、苦手というより嫌いなんだ。あのての人間は男女問わずに嫌いなの。
自分に惚れ惚れしちゃってて、本当に守護聖様じゃなかったら、だだの嫌な人間とかわりないじゃない。
いわれた人がどういうふうに思うかわかってて、あんな風に自分に酔った台詞いうなんて、‥‥きもちわるい。

あのひとは私と違いすぎる。

そう思ったが最後、実は育成をまだ一度も頼んでいなかった。
アンジェリークのノートの『炎の力』の欄には、他の力とは比べ物にならないくらい高い望みの量がかかれている。
(‥‥そろそろいかなきゃ駄目なんだけどだなぁ‥‥)
でも、今日はそんな気分じゃない。元気のある時ですらあの人に出会うと気分が悪いのに、今日あったらますます帰りたくなっちゃう。
(どうしよう‥‥)
アンジェリークは真剣に悩み出した。やりかけの事を投げ出すのは嫌いである。
でも、オスカーには極力会いたくない。
(困ったなぁ‥‥)
アンジェリークは凄い形相で、立ち止まってしまった。

きっと行けばあの嫌な笑顔が待っている。自分の余裕を誇示する事しか頭にない男が、にやにやと値踏みするような目で、私をみるに違いない。
見透かしたような瞳。あの自信に満ちあふれた瞳を思い出すと、なんだかとてもイライラする。
頭の中では、女王試験を受けなければならないのを解っているつもり。
女王陛下の命令だもん、逆らえるはずがない。別に女王に興味はないし、早くこんな身分の違う世界から抜け出したいけど選ばれてしまった以上、適当に受けているつもりだ。受けなければならないと解っている。
でも‥‥。
憂鬱になる。



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