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 十二国記とは?
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十二国記とは?


十二国記とは、講談社X文庫white heart・講談社文庫から出版されている小野不由美先生の中華風ファンタジー小説です。「十二国記シリーズ」として、現在以下のとおり発刊されています。ネタバレありなのでご注意あれ。

講談社X文庫white heart

月の影 影の海 (上下)
風の海 迷宮の岸 (上下)
東の海神 西の滄神
風の万里 黎明の空 (上下)
図南の翼
黄昏の岸 暁の天 (上下)
華胥の幽夢

イラスト:山田章博
講談社文庫

月の影 影の海(上下)
風の海 迷宮の岸
東の海神 西の滄神
風の万里 黎明の空(上下)
図南の翼
黄昏の岸 暁の天
華胥の幽夢


   月の影影の海

「あなたは私の主、お迎えにまいりました」
学校に、ケイキと名のる男が突然、現れて、陽子を連れ去った。
海に映る月の光をくぐりぬけ、辿りついたところは、地図にない国。
そして、ここで陽子を待ちうけていたのは、のどかな風景とは裏腹に、闇から躍りでる異形の獣たちとの戦いだった。
「なぜ、私をここへ連れてきたの?」
陽子を異界へ喚んだのは誰なのか?帰るあてもない陽子の孤独な旅が、いま始まる!
月の影影の海(上)表紙折返しより

  
月の影影の海--読後解説

今までwhite heartといえば集英社コバルト文庫とならんで、胡散臭さ漂うラインナップ、女の子向け小説のくせにナゼか男の子表紙の目立つ(笑)近寄りがたい文庫のひとつでした。んがッ!十二国記シリーズは違うッ!

あらすじだけだといかにもな、よくある「なんの変哲もない女子高生(あるいは男子中学生)が異世界で勇者」もののように思えますが、そんなに世の中甘くないことくらい読者は知っているわけです。
その辛さを知っているからこそ、小説の中の主人公が多少苦労しながらも、何か大きな力によってトントン拍子に助けられ成功していくのが楽しいわけです。

しかしッ!十二国記はここが違うッ!(JOJOっぽく)

とくに「月の影影の海」は何度も主人公が窮地に追い込まれます。
「世の中そんなに甘くない」の「甘くない」ところばかりを凝縮したような窮地が何度も何度も主人公・中嶋陽子を襲う!
メロスが中盤疑心暗鬼になってセリヌンティウスを疑いはじめるように、右も左もわからない世界に放りだされ、妖魔に襲われ続け、傷つき、惑い、消耗し、それでも家に帰るために立ち上がる。出会った人に裏切られ、陥れられ、最後には自分以外のものは信じないと叫ぶようになる。それも、セーラー服を着たおさげの女子高生がですよ?
彼女がそう考えるに至るまでの描写!たまりません。仮にも異世界ファンタジーを冠するこの小説に、空想小説ならではの御都合主義的痛快さはありません。陽子はかわいそうなほど辛い目にあいます。

それでも最後はハッピーエンドです。この流れでどうして!と思ったそこの貴女、是非読みましょう。

「月の影影の海」でのファンタジー要素というと、どんなに斬っても刃こぼれしない宝剣と、傷と疲れを癒してくれる宝珠。妖魔と呼ばれる、異形の獣。なんだ回復アイテムあるのと思った貴女、甘いです。傷と疲れを癒してくれると言っても、効果はベホイミ程度(笑)。体力が落ちてくるつれて薬草程度にしか効かなくなる!
陽子が辿りついた異世界は王がいます。王がいて城があって、と書くといかにもな舞台ですが(全部中華風でお願いします)州があって県があって里があってと緻密な設定のもとに成り立っている法治国家です。
生活文化や政治にファンタジーを求める人にも満足できる世界観だと思います。
最も重要なファンタジー要素もありますが、それは読んでのお楽しみ!







   風の海 迷宮の岸

麒麟は王を選び、王にお仕えする神獣。金の果実として蓬山の木に実り、親はいない。
かわりに、女怪はその実が孵るまでの十月を、かたときも離れず、守りつづけるはずだった。
しかし、大地が鳴り、大気が歪む蝕が起きたとき、金の実は流されてしまった!
それから十年。探しあてた実は、蓬莱で”人”として生まれ育っていた。
戴国の王を選ぶため連れ戻されたが、麒麟に姿をかえる術さえ持たぬ泰麒____
幼い少年の葛藤が始まる!
風の海 迷宮の岸(上)表紙折返しより

  
風の海 迷宮の岸--読後解説

ああ、人がせっかくネタバレなしで「月の影影の海」の解説を書いたというのにあらすじでモロバレ(笑)。
二話目となる「風の海 迷宮の岸」は、小野主上お気に入り(と思われる)戴国の麒麟、泰麒(たいき)が主人公です。
この泰麒、新潮文庫から出版されている小野主上著「魔性の子」の主人公・高里要くん。お気に入り加減が伺われるというものです。

この巻は、十二国記シリーズのかなめとなる「王と麒麟」のシステムについて丁寧に述べられている巻とも言えます。
国の陰陽を整える王、その王を選ぶ神獣・麒麟がどのように生まれ、育ち、その責務を果たして国を支える柱となるかが泰麒の成長を通してうまく解説されています。
「魔性の子」ではぴちぴち(?)の高校生として描かれている泰麒ですが、「風の海 迷宮の岸」での泰麒はその前、おさない泰麒が王の選定に入り、そこで景麒のせいで大変な苦労をさせられるのです(あれ?)

詳しいことは読んで貰うしかないのですが(笑)前巻の「月の影影の海」のハードボイルド・サバイバルファンタジーに比べて、なんとまあ可憐な雰囲気なのでしょうか。もちろん、読んでいただければわかりますが(しつこい)、
小野主上のお気に入りキャラだからといって彼の運命を容易いものにするわけもなく(むしろ人一倍不幸)幼い泰麒にも散々苦悩に満ちた運命が待っているのですが、それにしたって陽子が泥のなかを這い回るように生き延びて胃液を吐くまで衰弱させられているのに対し、泰麒は体育会系な苦労はありません。まあまったくない訳ではないんですが(どっちだよ)、舞台となる蓬山の花に満ちあふれた描写がなんとも可憐なのです。
そのなかを転がるように駆け、花のように笑う泰麒のかわいいこと!素直で純朴で、とんでもなくいい子なのです。
彼の身の回りの世話をする女仙たちも可愛らしくも凛とした感じで、泰麒とのやりとりが微笑ましです。

泰麒とたおやかな女仙たちが花のさきこぼれる蓬山で過ごす幸せな日々と、そのあとにやってくる苦悩の日々。
幼い泰麒は己の犯した誰にも告げることのできない罪のために、絶望と向かい合う。
後半、キーとなる人物・驍宗は十二国記の中でも延王と争うほどの美丈夫、白銀の髪(長髪)に珠玉の瞳、恐ろしいほどの覇気を漂わせる浅黒い肌のバリバリの軍人です。軍人に目がないかたは是非どうぞ!(笑)






   東の海神 西の滄神

「国がほしいか?ならば、一国をお前にやる」
これが、雁州国延王・尚隆と、延麒・六太とが交わした誓約だった。
民らが、かつての暴君によって廃虚となった雁国の再興を願い続けるなか、漸く新王が玉座に就いたのだ。
それから二十年をかけて、黒い土は緑の大地にと、生まれかわりつつある。
しかし、ともに幸福を探し求めたふたりのこどもの邂逅が、やがて、この国と王と麒麟と民との運命を、
怒濤の渦にまきこんでいく!!
東の海神 西の滄神表紙折返しより

  
東の海神 西の滄神--読後解説

十二国記シリーズの最強の王、武に秀でて辣腕家、泣く子も黙るいい男(笑)雁州国・延王がまだ王に登極して二十年という若い王様だったころの雁のお話です。
シリーズを通して、「延王は在位500年の賢王、雁国は世界をリードする大国」という立場で登場人物たちに関わってくるので「東の海神 西の滄神」は一応番外編という位置づけになっているらしいです。

さて、CDドラマ化しているくらい人気がある雁国主従が主役のこのお話、延王・延麒の登極前の生活が描かれていておいしいことこの上ないのです。物語も、一見バカ殿風な延王の切れ者ぶりが遺憾なく発揮されていて、延王ファンならバイブル状態です。やんちゃで口の達者な延麒の「お前、ホントはかわいいとこ、あんじゃん☆」的見せ場もあって、とにかくさりげない読者サービスが上手いです小野主上!

性格仁にして忠実なる麒麟の性と己の生まれから「王」という存在を信じきることのできないふたつの思いに悩む延麒や、小国ながらも国を継ぐものとして
生まれたにもかかわらず、その責務を果たせず終わってしまった尚隆の思いが丁寧に書かれています。
延王の在位500年を支えた彼のブレーンたちも登場し、とにかく雁国好きならばたまらんでしょう、ええ。
王宮の官吏の名称とか軍構成とかもう細かくって細かくって、はっきりいって私には覚えられません!(笑)

この「東の海神 西の滄神」の話の書くとなる内乱の指導者・斡由の物の考え方はある意味立派です。麒麟に対しての穿った物の見方は、この世界に住んでいる者ならきっと一度は考えることだろうと思わせる「フィクションのなかの
リアリティ」みたいなものがあって心地よかったです。






   風の万里 黎明の空

慶国に、玉座に就きながら、王たる己に逡巡し、忸怩たる思いに苦悩する陽子がいた。
芳国に、王と王后である父母を目の前で殺され、公主の位を剥奪されて哭く祥瓊がいた。
そして、才国に、蓬莱で親に捨てられ、虚海に落ちたところを拾われて後、仙のもとで苦業を強いられ、蔑まれて涙する鈴がいた。
負うにはあまりある苦難の末に、安らぎと幸せを求めて、それぞれに旅だつ少女たち。
その果てしない人生の門が、いま開かれる!!
風の万里 黎明の空(上)表紙折返しより

  
風の万里 黎明の空--読後解説

またしてもあらすじによるネタバレ!今度は大物ですよ!
でもここまで読んでくれている十二国記未読者さんはまちがいなく十二国記を買って読んでくれるでしょうからもう気にせずいきます!ていうか隠して書くの無理!

「月の影影の海」で散々ひどい目にあった我らがヒロイン、陽子が主役の物語です。かつて女子高校生だったとは思えないほどりりしくなって再登場。このぶっきらぼうな喋りが私は好きです。
さらに「月の影影の海」で事態をややこしくしただけの陽子の相棒、景麒が今回もやってくれます。どうしてこいつはこうなのか。顔がいいだけじゃ許されないんだぞわかってんのか?という活躍ぶりです。

「風の万里 黎明の空」ではふたりのヒロインが登場します。
父親である芳王が斃され、公主としての籍を剥奪され後宮を追われた祥瓊(しょうけい)、蓬莱(日本)から蝕によってこちらにながされ、意地悪な仙のもと日々暮らすことを強いられていた鈴。
それぞれが身に振りかかった不幸を嘆き、そこから逃れられずに苦しんでいる姿を描いています。
どちらも前半は、意地悪な継母にいじめられるシンデレラ状態からスタート。辛い下働きを悪意をもってあたえられ、それに刃向かうことを許されず、ただ頭を下げ、俯いて耐えることしかできずにいる二人の娘。
祥瓊と鈴の立場は違えど、こんなに辛い目にあうのは自分のせいではないと思っているのは同じ。

小野主上の凄いところは、彼女たちの言い分を否定できない状況をつくりあげる文章力、とでも申しましょうか。
読者は、彼女たちの嘆きも憤りも「うんうんそうだね」と受け取ることしかできなくなっている。祥瓊や鈴の訴えに「それは違うだろう」と反論できなくなってしまっているというのが凄い。ストーリーの中に引きずり込まれて、
叫ぶ登場人物たちと同じ風景を見せられてしまうのです。

慣れない王様として四苦八苦している陽子も、自分のなかに解決策を見いだしたくて行動を開始。祥瓊も鈴も動き出し、三人はであうことになるのですが、おっと続きは読んでのお楽しみってやつよ(笑)
延王に負けないくらい現場主義になりつつある陽子ですから、当然戦闘シーンもふんだんに用意されていて武闘派の貴女にもお勧め。悩んで虐げられて泣いて泣いて、沢山失っても最後はハッピーエンドです。嬉しいです。






   図南の翼

恭国は、先王が斃れてから二十七年。
王を失した国の治安は乱れ、災厄は続き、妖魔までが徘徊するほどに荒んでいた。
首都連檣に住む珠晶は、豪商の父をもち、不自由ない生活と充分な教育を受けて育った。
しかし、その暮らしぶりをは裏腹に、日ごとに混迷の様相を呈していく国を憂う少女は、
王を選ぶ麒麟に天意を諮るため、ついに蓬山をめざす!珠晶、十二歳の決断。
「恭国を統べるのは、あたししかいない!!」
図南の翼表紙折返しより

  
図南の翼--読後解説

いや、なんかこのあらすじに騙されると思うんですよね。「恭国を統べるのは、あたししかいない!!」って‥‥。
「東の海神 西の滄神」に次いで二本目の番外編が「図南の翼」です。恭国に住む、こまっしゃくれたお嬢ちゃん珠晶が、昇山するために黄海をいくお話です。

これまでシリーズで何度も「昇山」するという単語が出てきますが、このお話はその昇山の経過がどのようなものか珠晶の目を通して解説しているお話でもあります。神が見放した地、黄海という荒れはてた地を通らなければ麒麟のいる蓬山に辿り着くことはできず、その黄海は妖魔の住む世界。自らが王であると自負する者が麒麟に目通りを願い、その天意を諮る「昇山」に十二歳という年齢で挑んだ珠晶に待ちうけるものは?

最終的には読んでもらわなきゃ、という話になるんですが(意味あるのかこのコーナー)珠晶、なかなかあっぱれな心映えの女の子です。「風の万里 黎明の空」でちょろっと出てきていますから探してみましょう。おっと、探すのはお買い上げ頂いた後ですぜ?
賢くて口が達者、それがお供にひっぱりこまれちゃった頑丘には頭痛の原因なのです。頑丘いいです。冗祐と張るくらいいいです。おっさん希望。さらに無精ヒゲ希望。声なら立木文彦氏希望。(笑)

ストーリーのテーマは「犠牲」かな。王を戴く国の成り立ちと、なによりも優先されること、また、それを優先するために支払われる犠牲。それらをどう考え、どう踏み越えていかなくてはならないのか?
珠晶は悩みます。ていうかこの十二国記で悩んでない奴なんかいるのか、と思いますが、珠晶の悩み方はポジティブでアグレッシブです。あんまり暗くくよくよしないので見ていて楽ですが、犠牲というテーマはかなりシビアなのでバランスはとれているかもしれません。これが珠晶じゃなくて泰麒あたりだったらどう考えても収拾つきません。(笑)
なりは小さいけれど、ちいさな体でげんきいっぱい、いろいろ将来を悩む少女・珠晶は、陽子とはまた一味ちがった行動派。活発でかしこいちいさな女の子が好きな方(結構いると思うぞ)、是非!







   黄昏の岸 暁の天

登極から半年、疾風の勢いで戴国を整える泰王驍宗は、反乱鎮圧に赴き、未だ戻らず。
そして、弑逆の知らせに衝撃を受けた台輔泰麒は、忽然と姿を消した!
虚海のなかに孤立し、冬には極寒の地となる戴はいま、王と麒麟を失くし、災厄と妖魔が蹂躙する処。人は身も心も凍てついていく。
もはや、自らを救うことも叶わぬ国と民----。
将軍李斎は景王陽子に会うため、天を翔る!
待望のシリーズ、満を持して登場!!
黄昏の岸 暁の天表紙折返しより

  
黄昏の岸 暁の天--読後解説

満を持して登場!!とかいうレベルじゃないくらい待たされました「黄昏の岸 暁の天」です。(笑)
次回作は戴が舞台らしいという噂が先行していて、発刊されたら噂の通り戴のお話でした。いやー、ネットの情報ってあてにならないものだと決めつけていた私を許して下さい。

吹雪荒ぶ戴の物語です。戴は今までのシリーズでも意識して隠されていた国でもあり、いままでちらっ、ちらっと紹介されていたエピソードがこの巻でようやく明らかになるという「さんざん焦らしやがって☆」的ヒミツの解明が
多い巻でもあります。さらに今まで登場してきたキャラクターが一同に揃ってしまう、大変ファンサービスに満ちた巻です。
散々待たされた甲斐があるってもんですよね!(笑)

さて、王が行方不明だとか麒麟がいないらしいとか怪情報が乱れ飛んでいる戴からひとりの使者が慶にやってくるシーンからはじまります。沈黙を続けてきた北の孤島、戴で一体何が起っているのか?
そんなストーリーの空白を埋めるエピソードが、使者・李斎の回想によって綴られます。
慶といえば我らが主人公・武闘派女子高生景王陽子の治める国、舞台を戴から慶にもってくるあたりウマイです主上。
陽子の発案でとある計画が十二の国を巻き込んで発動したりして、胸のすく内容も用意されていてアメとムチがウマイです主上。

とはいえストーリーは暗め。この「黄昏の岸 暁の天」はこの後につづく物語の中間点でしかありません。作者のお気に入りであるが故に、その身に一身の不幸を背負わされている少年・泰麒は?戴は?行方の知れない泰王驍宗さまは!?どうなってしまうのかコラ!はよ続き出さんかい!というのが正直な内容です(笑)

そんなストーリーと並行して、この十二国記世界の不思議な法則について深くつっこんだ内容がかかれています。
沢山ある「天の定めたとされる決まり事」の大罪と無罪の線引きは、どのようになされているのか?天帝という神の存在、果たしてその決まりを定めているのは「何」なのか、それとも「誰」なのか?
さらに「あちら」と「こちら」の位置付けなど、ファンタジー小説のファンタジーたらしめている法則を、現代っ子陽子の穿った視線で、いやーな感じで解説されているのが面白いです。ここらへんの真相も、早く知りたい!

新たなる登場人物もそうとうイッちゃってていい感じです。十二国の王が全員明らかになる日も近い(といっても10年はみておく)!








   華胥の幽夢
「夢を見せてあげよう」____しかし、荒廃と困窮を止められぬ国。采王砥尚の言葉を信じ、華胥華朶の枝を抱く采麟の願いは叶うのか。
「暖かいところへ行ってみたくはないか?」____泰王驍宗の命で漣国へと赴いた泰麒。雪に埋もれる戴国の麒麟が、そこに見たものは。
峯王仲タツの大逆を先導した月渓は、圧政に苦しむ民を平和に導いてくれるのだろうか。
陽子が初めて心を通わせた楽俊は、いま。
希う幸福への道程を描く短編集、ここに!!
華胥の幽夢表紙折返しより

  
華胥の幽夢--読後解説


陽子がこちらに流されてきた本編とは離れ、番外短編集といった体裁の「華胥の幽夢」です。本編で触れる程度に紹介されてきた国を舞台にして、5つの物語を読むことができます。

「冬栄」は戴国の黒麒麟、ちいさな泰麒が漣国へお使いをするお話。
小さな泰麒が相変わらす人懐っこく愛らしく描かれていて、泰麒好きにはたまらんお話です。初登場の廉王が意表をつくキャラクターとして登場します。勝手にフラフラ王宮を出て行く延王もすごいですが、この廉王も相当すごい(笑)。なぜ十二の国があまり他国と交流を持たないのか、原因は国土の広さなどより王の個性が皆強すぎるからじゃねーのかと思ったりしました。とはいえ廉王と廉麟の仲睦まじさは和ませていただきました。

「乗月」は、芳が舞台。「風の万里 黎明の空」の冒頭で起きた芳の大逆の後、朝廷を統べる決意をするまでの物語です。
月渓が「何故玉座につこうとしないのか」という思いが、語る本人にもよくわかっておらず、語っても語ってもどこかおかしい、何かねじれている言葉にしかならない。その話の通らなさが読者にもそのまま投げられてくるので、途中、読んでいるこちらもすっきりせずに、国官たちと同様「なんでお前がやらないの?」と思ってしまうこと請け合い。上手いです。

「書簡」は陽子と楽俊の手紙のやりとりという形式で、二人の状況を描いています。慣れない王宮で右も左もわからない王という使命に立ち向かう陽子と、雁の大学に入学し新しい環境で生活をはじめた楽俊。こっちはなんとかやってるよ、と互いに報告しあうけどホントはね…というお話。
陽子の手紙に、日々どれだけ景麒から注意を受けているのかがよーく表れていて面白い。楽俊も前途洋々ではなく、シビアな悩みを抱えているのに、それでも前に向かって、笑って生きていこうとする二人がほんのりと勇気をくれるお話です。

「華胥」はこの短編集で最も長いお話。この本の表題にも登場する「華胥華朶」という采国の宝重を絡め、傾きかけた王宮を舞台にした物語です。
失道した采麟、ゆがみじめた王朝、ひたすら理想だけを追い求める王。その王を登極する前からずっと支えてきた仲間たち。一体なぜ失道する事態になったのか解らずに、混乱する官たちに訃報がとどく…
麒麟の失道にはいろいろなタイプがあるのだなと怖くなった話でもあります。この失道のタイプはもっとも哀しい形かもしれません。
さすが推理作家の旦那がいるだけある、小野主上風「王宮ミステリ」といったところでしょうか。十二国記の舞台で推理ものが読めると思いませんでした。探偵役の下男が無邪気な雰囲気なのがこの物語の唯一の救いです。
「責難は成事にあらず」、まさに今の日本にも通じる言葉です。是非野党に聞かせたいですね。

「帰山」は十二国記を代表する二大風来坊の夢の競演です。傾きかけた柳を視察中、大国出身のお二人が偶然出会う。そこで語られるのは国の起こりとその「山」。この「山」が超えられれば国はある程度もつだろう。そう統計が取れてしまう程この二人は長く生き、まわりの国は多く潰えてきたということなのでしょう。あいかわらず宗のご家族は仲良しです。それでもどんな王朝も今まで必ず潰えてきた。それがまた事実でもあるのです。

短編集とはいえ、本編では紹介されていない国が登場したり、知らないエピソードが読めたりとファンならうれしい一冊です。願わくはこの調子でどんどん発刊しますように!主上が途中で筆を折りませんように!










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