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ここでは、ゲーム業界が抱える様々な問題点にスポットを当ててみました。
ゲーム業界というのは見た目も地味ですが、中身はとんでもなく過酷です。
単に仕事が忙しいとかではなく、経営者・管理職が労働基準法を守っていなく(というか知りもしない)、違法な重労働が平然と行われているのが最大の原因です。

この業界に来る人はそいういった現状を把握しておかないと絶対後悔すると思いますし、そもそもそれらの問題を解決しないとこの業界は近い将来滅びるでしょう。

業界が抱える問題は労働環境だけではありません。 様々な要因に起因する売り上げの減少や海外勢力の台頭など、解決すべき問題は多種多様です。

厳しい内容ばかりになると思いますが、嘘は言ってません。 そこをしっかり理解して読んでください。

・あまりにも劣悪な労働環境   2005/05/29

久々の更新ですが、ますます悪化するこの業界の労働環境について書いてみようと思います。

この業界の労働環境が劣悪なのは周知の事実ですが、先日、とある上司との面談において「この業界の仕事はそりゃ忙しいですよ。 忙しいから好きじゃないとやっていけない。 その仕事に対する情熱が無くなってしまったのなら会社を辞めた方がいい」と言われました。 
・・・・正直、この上司は馬鹿じゃないのかと思いました。 なにしろ、自ら「この業界は重労働が当たり前。 仕事が好きなら重労働も苦じゃないはず。 それに耐えられないのならば仕事に対する情熱を持っているとは認めない」と公言したのですから。

私はこの業界・この会社へ並々ならぬ情熱を持ってやってきたつもりですし、仕事においても過酷な重労働・サービス残業も我慢してやってきました。 が、しかし、まさかこんなひどい仕打ちを受けるとは夢にも思いませんでした。

正直疲れました。 ほかの業界で働いた事はないのでほかの業界の詳細は知りませんが、それでもこの業界が著しく社会常識やモラルに欠如した異常な業界であると言う事は分かります。 
会社は「売り上げを上げろ」「目標必達」「おまえら頑張れよ」みたいな決まり文句を繰り返すばかりで、劣悪な労働環境や管理職に管理能力が無い事などはまるで自覚していません。 このような状態では会社が良くなるはずもありませんし、国内外の競合他社に勝てるはずもありません。
私は過去、いわゆる「大手」と呼ばれるいくつかのメーカーで働いてきましたが、どこもひどい環境でした。
現場の人間なんてゴミみたいな扱いを受けています。

今年の3月に行われたGDCにおいて「Quality of Life」と題されたセミナーが開催されました。
内容はこの業界の劣悪な労働環境に関するもので、様々な議論が行われましたが、結局の所、劣悪な環境であるという事は世界共通で、どこの労働者も使い捨て感覚で「使用」されているという事が分かりました。
希に普通の環境である会社もあるようですが、そんなのは例外中の例外なので、この業界の労働環境が劣悪であるという事に変わりありません。

正直なところ、この状況はよほどのことが無い限り改善されないと思います。
たとえば労働者がボイコット・ストライキを起こしたりですが、組合が無いに等しいこの業界ではそれも期待できません。
まもなく新世代のゲームマシンが登場しますが、ハードの性能が飛躍的に上がるという事は、間違いなく作り手がやらないといけない事が増大します。 そして、会社は仕事が増えるのにもかかわらず、同じ人数・予算・日数でやれと言うのはお約束です。

ゲームを作る者がゲームで遊ぶ暇が無く、娯楽を作る者が娯楽に興じる暇もない。
このような有様では、本当に「情熱」を失ってしまいそうです。


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・海外で通用するタイトルが作れなくなりつつある   2004/11/23

これは日本メーカー共通の問題で、個人的には早急に解決すべきだが簡単には解決できないと思っている深刻な問題です。
ゲーム業界における最大の市場は北米です。(今後、中国市場の拡大やオンライン・携帯市場などの推移等、未知数な部分はありますが)

かつてはその北米市場もマリオやソニックなど、日本初のソフトが大人気で、ハード・ソフト共に日本製品が接見した時代がありました。 もちろんハードは今も日本製品が優勢で、マリオやソニックが人気が無くなったと言う訳ではありません。
しかし、最近は「クエーク」「ハーフライフ」などのFPSをはじめ、「グランドセプトオート(GTA)」「トゥームレイダー」 、その他EA系のスポーツゲームやアクションなど、北米市場の売り上げ上位を占めるのはほとんど海外製(さらにその多くは現地北米メーカー製)であるのが現状です。

ここで私が危惧するのは、北米史上で人気が高いこれらのゲーム(ジャンル)のほとんどが、日本では馴染みのない文化や発想から生まれたゲームであり、日本のゲームメーカーが真似しようとしても困難なタイトルばかりであるという事です。
中でもFPSはその最たる物で、海外では現在最も人気のあるジャンルの一つであり、今後ブームが去ったとしても、必ずや一つの人気ジャンルとして定着するのは確実であると思われます。
ただ人気があるだけでなく、最近のビデオカードの性能や3Dグラフィックエンジンの進化はFPSが後押ししていると言っても過言ではないほど、人気的にも技術的にも最先端を行っているジャンルです。

ところが、このFPSというジャンルのゲームは、日本では悲しいほど普及していません。
このジャンルの火付け役となった初代「DOOM」が日本に導入されてから優に10年以上過ぎているにも関わらずです。
一応日本にもFPSユーザーは居ますが、RPGなど他のジャンルや、本場北米の盛り上がりと比べると些細なものです。
当然ながら、日本市場で人気のないFPSを作る日本メーカーはほとんどなく、未だに日本製のFPSは数えるほどしかありません。
しかし、FPSを作らないことには北米市場では勝てないのが現状となっています。
「DOOM」や「クエーク」「ハーフライト」といった超有名タイトルはもちろん、先日マイクロソフト社から発売された「ヘイロー2」は驚異的な売り上げを記録しています。 また、国家機関であるアメリカ陸軍も勧誘やイメージ向上目的にFPSを作っています。

私の知人にFPSを奨めてみると、最初は戸惑いながらも多くの人が「面白い」と言ってくれます。 しかし、それ以上に「3D酔い」する人が続出します。 北米の人ってあまり酔わないのでしょうか? それとも市場規模が大きいから目立たないだけ?
いずれにしても、このような状況では海外で通用するゲーム(特にFPS)を日本から発信するのはかなり困難な気がします。
なんとかFPSなどの海外で通用するタイトルを作れるようにならないと、5年後とかの近い将来に、日本のメーカーはさらなる窮地に立たされそうで怖いです。


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・労働組合が存在せず、遵守されていない労働基準法

いきなり問題だらけなテーマですが、この業界には労働組合というものが存在しません。 もしかしたら存在する会社もあるかもしれませんが、私が知っている限りでは無いです。 もし知っていたら教えてください。
そもそも労働組合とは、会社側と待遇改善などについて交渉する組織な訳ですが、この業界はそれが存在しません。

ゲーム業界は他の業界に比べて歴史が非常に浅く、また、管理職や社長になった人の多くは現場出身です。 つまり、元々はデザイナーやプログラマーや企画さんだった訳です。 つまり、経営・経済・法律などを学んだ人は居ないに等しいのです。 そういった人が管理したり経営したりする立場に就いている訳です。 デザイン能力の高い人=管理能力の高い人ではありません。 プログラム能力の高い人=経営の達人でもありません。
野球の世界でもよく言われる事ですが、「名選手=名監督」という図式はなかなか成り立ちません。ゲーム業界でもしかりです。 

誤解の無いように断っておきますが、現場上がりの人が管理職や社長になるのに反対しているのではありません。 部下や資材の管理能力、経営能力が不足している人が管理職や経営職に就くことに問題があると言っているのです。
管理職や経営者になるからには、当然それに関する知識を身につけてもらわないと労働者としては困ります。
今までいくつかの会社・職場を渡り歩いてきた経験から、そういった必須である知識・意識を持ち合わせている管理職・経営者はかなりレアなのが現状です。


こういった背景があるので、ゲーム業界では当たり前のように労働基準法違反が蔓延しています。
業界各地で働く仲間達と定期的なミーティング(近況報告会みたいなものですね)を行っていますが、私の職場及び友人達が働く職場の現状はひどい物です。 遅刻すると罰金を科せられる会社もあれば、バイトなのに固定給(しかも超低額)な会社もありますし、残業しないと怒られる会社もあります。 退社直前まで仕事に忙殺されて、有給消化もできなかったという報告もたくさんあります。 いずれ劣らぬひどい環境ばかりです。
セガの「パソナルーム」の一件はあまりにも有名ですね。 ゲーム業界以外でも類似した例は報告されていますが。

もっとも良く見かける労働基準法違反は、やはり残業・休日出勤に対する手当が無いことですね。
言うまでもない事ですが、私たちは奴隷でもなければボランティアでもありません。 会社と労使契約を交わした労働者です。 当然ながら働いた内容に応じて賃金をもらう権利があり、会社側は払う義務があるわけです。
しかしながら、この業界では、残業当たり前・祝祭日出勤当たり前という、非常におかしな「常識」がはびこっています。
これがおかしいと言うことくらい小学生でも判断できます。 が、それが当たり前なのがこの業界です。
私など、今までの数年間の労働におけるサービス残業や無報酬の祝祭日出勤はとんでもない時間・日数に及び、もしちゃんと手当が支払われていたら、という課程で計算したところ、新型フェアレディZがNISMOのオプション付きで新車で購入できるくらいの金額を損している事が分かりました。 悲しすぎます。

当たり前の事ですが、労働者は人間ですから、機械と違って体力的・精神的な要素が絡んできます。
手当がもらえない事が分かっているのにサービス残業や祝祭日出勤が続けば、誰でもやる気を失いますし、疲労もよけいに蓄積してしまいます。


以上のように、これからゲーム業界を志す人は、日本のゲーム業界はこういった状況であるという事をまずは理解してください。 たまにまともな会社もあるようですが、それはかなり希なケースと言ってもよいでしょう。
同時に、これらの事が改善されないと業界自体が駄目になってしまうのも間違いないでしょう。 
最近は内部告発などで劣悪な労働環境が明るみに出て、会社側が対応に出るケースも見られますが、結局は対外的なその場しのぎかつ見せかけだけの対応で終わる場合が多いようで、根本的な改善には至っていないようです。
確かに、今まで手当無しで働かせていた労働者に賃金を払うとなれば、かなりの出費になる事は間違いないです。だから会社としてもなかなか支払いに応じないという事もあるでしょう。 が、しかし、払わないのは犯罪です。 言うまでも無い事ですが。 


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・ソフトが売れない

信じられないような事ですが、10年ほど前に「出せば売れる」という魔法のような時代がありました。
その時代は、たとえどんな駄作であっても、例え価格が子供には重すぎる1万円前後であっても、ソフトが出せば出すだけ売れたのです。 現在ではとても信じられないと言うかあり得ない時代でした。 その頃はファミコンやスーパーファミコンが全盛期の頃でしたね。 まさしくゲーム産業の絶頂期と言っても過言ではないでしょう。

しかし、時は流れ、今では駄作や無駄に高いソフトはおろか、一部を除いて名作でさえ売れない時代になっています。
ゲーム業界の現状のコーナーでも書いてますが、多くの理由があります。
とにかくゲームが売れていません。 ミリオンセラーは奇跡に近くなり、ハーフミリオン(つまり50万本の売り上げ)で驚愕するような時代になっています。 ミリオンにはほど遠い数字なのにハーフミリオンとはなんとも往生際の悪い話です。
もちろん、駄作や高額なソフトでもたくさん売れていた時代の方がおかしいという考え方の方が普通だと思いますが。

ゲーム雑誌やゲームサイトの売り上げコーナーを見れば一目瞭然ですが、長い歴史を誇る超人気シリーズを覗き、ほとんどのタイトルは売り上げが数万本レベルです。 下手をすると1万本にも満たないケースもあります。 なぜこうも売れないのか!?
ここらで私が考える売れない理由をまとめてみましょう。(あくまで私の考察した内容です)

・ブームとしてのゲーム人気が去った
・ゲームに熱中していた世代が社会人となり、ゲームをする時間が減少して売り上げの低減に繋がった
・最近の子供達はゲーム以外の事に時間とお金を費やす事が多くなった
・携帯電話に時間とお金を費やす人が多くなった。 
・ゲームも携帯上でプレイできるのでパッケージ売り上げが減少した。
・昔と異なり、CD-RやDVD-R、エミュレーターなど、違法コピー産業が成長してコピーする人が激増した。
・駄作を引くリスクを恐れ、一部の定評ある人気シリーズ以外を買う人が減少した。


など、ざっと考えてもこれだけの原因が考えられます。 もちろん、的はずれな予想もあるでしょうし、さらに他の原因もあるでしょう。 ですが、あながち見当違いな予想ではないと思います。

100人近くの開発スタッフ・数億円の開発予算・数年の開発期間を投入したにも関わらずにサッパリ売れず、逆に手軽な2000円以下の格安ソフトが累計1000万本近くを売り上げたというようなニュースも飛び込んできています。
また、かつては「そのメーカーのソフトだったら全部大ヒット」という時代があったが、現在では人気シリーズ以外は売れなくなった、という例もあります。 どうやら、ゲームソフト総合の売り上げが低下している事と、売り上げの大半が手堅い人気シリーズに集中している事は間違いないようです。

では、この現状を打破するためにはいったいどうしたらよいのでしょうか?
完全に人気シリーズ以外が売れない市場になってしまったら、おそらくこのゲーム産業は大変な事になってしまうと思います。
原因が多種多様であるように、対策も多種多様であるような気がします。 


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・開発費が高く、元が取れない

ゲームを作るという事はとんでもなくお金がかかります。
その内訳は「人件費」「機材の購入・メンテナンス・更新費用」「取材費」「ライセンス取得料」「宣伝広告費用」「その他」などに分類できますが、当然ながら開発期間が長引けば長引くほど高くなります。 また、映画や漫画などを題材にする場合は当然ながら原作者や管理団体に対するライセンス料を支払う必要がありますし、外部の原画家や声優を起用したり、動画を外部スタジオに発注したりする場合もさらに費用が必要です。 最近の風潮として、ムービーや声優を使用する事が多くなっていますね。

ゲーム産業の初期の頃は、数人のスタッフが数ヶ月で制作するといった事例もありましたが、現在ではまず不可能といって良いでしょう。(貧乏ソフトのような特殊な例もありますが、あくまで特殊な例です。)
現状では数十人単位のプロジェクトチームで1〜2年程度で作るのが大体の目安となっているようですが、その際の開発費は大体数億円程度と言われています。(原作の有無、外部に発注した動画や声優の有無などによって変動)

ところが、中には100人以上のスタッフが数年もの歳月をかけて制作しているタイトルもあり、その際の開発費はとんでもない額になる場合もあります。 開発において最も有名なのがシェンムーの「70億円」ですが、おそらくこの70億円というのは低く発表していると思われます。 たぶん実際は100億円を超えているでしょう。

こうなると元を取るのが非常に困難になってきます。 例えば有名RPGやSLG・ADVシリーズは毎回50万〜200万本とか売れていますが、売上本数は華やかな一方、かかっている開発費もとんでもない額であるのは間違いなく、おそらく原価回収するのに精一杯でなかなか大幅な黒字という訳にはいかないはずです。 例えば70億円かかったシェンムーが黒字になったかという話ですか、DC版の売り上げは国内で約30万本、海外を含めると各機種合計で100万本程度は売れたようですが、かかっている開発費を考慮すると、とてもではありませんが、大幅な赤字のはずです。
「生きた英語、学べます」というキャッチフレーズでUS版を販売していたり、虎の子の極秘技術であるはずのSoftimage3D用の独自開発プラグインを「シェンムープラグイン」として販売していた事からも、原価回収には相当苦労していたと思われます。 技術を切り売りするという事は異例です。 もちろん黒字にはならなかったでしょう。

それ自体が開発費を回収するので精一杯なタイトルであっても、それがキラータイトルとしてハードの売り上げに貢献するような場合であれば、それはそれで戦略タイトルとして意味があります。 また、一度作ったデータを有効活用した関連商品(番外編、ファンディスク、設定資料集、他機種への移植など)を展開できる場合は期待が持てます。 しかし、そうでない場合、例えばそのソフト自体の売り上げに社運がかかっていたような場合に、開発費は高くて売り上げが散々だったとしたら、高い確率で会社は傾きます。 ゲームそのものが売れなかったら他のメディア展開も期待できません。

また、ハードが次々と進化して表現力は飛躍的に高まっていますが、制作者する側からするとこれも手放しでは喜べません。
ハードが進化して表現力が高まるという事は、その分だけやらないといけない作業の量や密度も同じだけ増えます。 ハードの検証も非常に大変です。 結果として製作期間も長くなり、それはそのまま開発費の高騰に直結します。

等々、様々な要因で開発費が高騰しています。 どうにかして安い開発費でより多くの利益を上げないといけないのですが、なかなかそうも簡単にはいかないのが現実のようです。