Shangri-La | MobileSuitGundam
  
 
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花嵐


永遠を約束するのもなどありはしないのだと知るのに、時間はかからなかった。
それがいくら幼い頃の、すべてが不確かな世界のことであっても______むしろ幼かったからこそ、世界に対して余計な装飾も願望もなかったからこそ得られた実感なのかも知れないが_____あまりにあらゆることが簡単になくなってしまうと。
幼い自分はどこか、すべてをあきらめていたように思う。

優しくて大きかった父を失った。あまりに突然で大きな喪失に、自分はどんな風に悲しんだのかよくわからない。
美しい母を失った。柔らかく甘い空気が自分の傍から消えてしまったことに戸惑って泣いたように思うが、よく覚えていない。
歳からいっても、覚えていない訳がないのに何故だか覚えていないのだ。
覚えているのは、父と母を亡くして泣いているのにそれが決して寂しくて泣いているのではないとわかっていたこと。
父と母を思いながら泣いていながら、自分は両親が恋しくて泣いているのではないともう一人の自分が理解していた。
すべての物事はこうして終わっていく。
手の中にある小さな日常は、風に彷徨う花びらのようなものなのだと。
偶然手のひらのなかに花びらは舞い降りて、次の瞬間にはまた風に煽られて手の内から去ってゆく。
今ある日常は何かの偶然でここにあるだけで、いつ消えてもおかしくないのだ。
幼い日、泣いていた私は、何に泣いていたのだろう。
次に何かを失うことになるだろうと、当然のようにそこにある予感に泣いていたのだ。

世界のすべてだった家を追われ、青い惑星に隠れるように暮らした。
そこで穏やかな時間を過ごした。父も母もいなかったけれど。
私たちは笑って過ごした。次に何を失うのかと心のどこかで脅えながら、穏やかな日々の中笑って過ごした。
無邪気に過ごすことが幼かった私に求められた勤めのように思えたから、何もかも忘れて笑った。
心のどこかで、次に失うものはきっとこの新しい暮らしだろうと思っていた。

兄を失った。
私の世界はここで終わる。

永遠を約束するのもなどありはしないのだと知るのに、時間はかからなかった。すべての物事はこうして終わっていく。
幼い自分はどこか、すべてをあきらめていたように思う。
その思いは今も変わらず自分の中に、澱のようにある。
自分が何者でも、どんな場所に生まれても、こんなふうに失っていくのだろうか。私が違う私として生まれていたらと、もがいて青い惑星から宇宙へ上がった。この人工の大地で新しい自分になることができたら変わるだろうか。違う自分になれば、ともがきながら、自分はすべてをあきらめていたように思える。
もがきながら、すべてをあきらめている。
なんと中途半端な存在だろう?
すべてをあきらめていながら、あがいている。

私の手から去ったものを取り戻したいのではない。
私の中で泣き続ける、幼い私の涙を止めたいのだ。
小さな花片を掌のなかに包んでいたいのだ。

だから、あがく。
それはきっと、兄さんも一緒でしょう?

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