106日間北海道一周!自転車&キャンプ旅行(2)


利尻山(利尻富士)

利尻島のシンボル、利尻富士(利尻山)
西側から見た利尻富士(8/25)
 利尻グリーンヒルユースホステルの利尻島一周完歩ツアーに参加した。夜が明ける前に出発し、利尻島内、そして利尻富士(利尻山)の周りを一周する道路を時計回りに歩き続けた。歩みを進める度に、山は刻々と姿を変え、写真や船から見るのとまた違った表情をいくつも見せてくれた。利尻“富士”と称されているように、富士山と似て端正な形をしているというイメージが強かったが、西側を歩いていると、大きく窪んだ急峻で厳しい地形を目の当たりにし、特に印象的だった。
 歩き切り、YHに到着すると、ヘルパーさん、ホステラーさんなど、YHにいる全ての人の「風来坊」の大合唱で迎えられた。早朝4時30分に出発してから約13時間後の事だった。


礼文島でのキャンプの一時。

洗濯を終え、礼文島のキャンプ場でくつろぎの一時…。
礼文島緑ヶ丘公園キャンプ場(8/26)
 利尻島完歩の翌日、フェリーで礼文島に渡り、フェリーターミナルから4km程北にある緑ヶ丘公園キャンプ場にテントを張った。無料ではないが、1日300円と格安な割に設備も整っているいいキャンプ場だ。このキャンプ場の少し変わっている点は、高床式の個別のテントサイトがいくつかある事で、2日目からは空きが出たのを見計らい、そちらの方に陣取った。
 礼文には一度来た事もあり、あくせくと名所周りをする気も起きず、滞在中は、キャンプ場でのんびりだらだらしていたり、自転車で、礼文最南端の知床や最東端のスコトン岬に行ってみたりと、気の趣くままに過した。空気は奇麗で、夜はキャンプ場の空に浮かぶ満天の星を見上げた。
 2日目からは、稚内のライダーハウスで仲良くなった女の子が礼文島にやってきて、私のテントで寝泊りしながら、メノウ浜でメノウ拾いに興じるなど、楽しい時を過した。ただ、私の1人用の狭いテントで2人が寝るのは満員電車の中で寝るような密着感で、かなり寝苦しかったのだけは難点だった。


礼文島、香深港でのお見送り

礼文島のキャンプ場で共に過した
面々による港でのお見送り。
礼文島、香深港でのお見送り(8/28)
 緑ヶ丘公園キャンプ場で泊まり合わせていたキャンパー達と、自然発生的に寄り集まり仲良くなった。彼らもひとり旅で、バイクで北海道を周っているとの事だった。キャンプ場で共に夕食を作って食べ、楽しい夜を過ごした。晴れた昼間にはくテーブルに集まり、何をするでもなくのんびりと一緒に過し、散る時はいつの間にか散って、それぞれの時を過していた。
 そんな彼らが、夕方に礼文島を離れる私と、一緒に寝泊りした女の子を見送ってくれた。礼文島・香深港でお見送りと言えば、桃岩ユースホステルのヘルパー達による宿泊者の送迎は有名で、歌あり、ダンスありの強烈さで、礼文島の旅人の風物詩といっても過言ではないだろう。
 だけど、共にキャンプ場で過した仲間達のお見送りも、温かさでは負けていない。自転車ひとり旅で出発の時は黙々とテントを畳んで、独りでひっそりと次の目的地に向うというパターンが多かった。しかし、こうやって人の温かさを感じられる出発もいいものだ。礼文島の、彼らと過した時の思い出を心に深く刻み、フェリーは礼文島を離れた。

 

稚内市の眺め

稚内全日空ホテルから稚内駅付近を眺める
稚内市の眺め(8/29)
 利尻、礼文で8日間過し、再び稚内に戻ってきた。そしてお世話になったライダーハウスに再び泊まった。稚内では、8月の上旬から中旬まで、このライダーハウスに泊り込み、アルバイトをしてお金を稼いだ。その間、行きつけの銭湯が出来たり、町で本や服を買ったり、医者に通ったりと、少しの間だけど、この街で市民の気分で生活した。それまで私にとって「日本最北端の駅があるところ」「宗谷岬があるところ」でしかなかった稚内が思い出の詰まった街になった。
 全日空ホテルの最上階のレストランが営業時間外は展望台として無料で開放されているので、記念に稚内の街を一望しに行った。


宗谷岬、日本最北の碑

日本最北の地宗谷岬の
日本最北の地碑の前。
この海と空はサハリンに続いている。
自転車旅再スタート!日本最北の地
宗谷岬到達(8/30)

 いよいよ稚内を離れる時が来た。思えば稚内に到着したのは1ヶ月前の事だった。朝にライダーハウスのオーナーさんや、ここで知り合い礼文島で共に過した女の子に見送られ、ライダーハウスを出発した。
。稚内ではアルバイトをして過し、利尻島、礼文島では短距離しか自転車には乗ってなかった。だから重い荷物を積んで各地を渡り歩くような自転車での移動は今日が久し振りで、気分は自転車旅行再スタートと言った所だ。まだ旅は長い。
 見慣れた町並みを走り抜け海沿いに出て、昼過ぎに宗谷岬に着いた。北緯45度31分14秒という日本最北の地だ。そして、この海と空は遥かロシアのサハリンに続いている…。だが、観光バスなど観光客の出入りが多く、最果てムードには程遠い。それでも、苫小牧港から約770km走り、この地に到達した感慨は深い。
 海を背景にした「日本最北の地碑」の横に自転車を置き、写真を撮ろうとした。その様子を見ていた観光客の男性が親切に自転車ごと台に上げ、私も入れて記念撮影しようとしてくれた。だが、私の自転車が重すぎ、台に上げる事は出来なかった。でも、台の下で私も入れてカメラのシャッターを押してくれ、記念の地をフィルムに収める事が出来た。


天北線(廃線)の山軽駅跡

天北線の山軽駅跡
JR天北線、山軽駅跡(8/31)
 かつて天北線というJRの路線があり、南稚内-浜頓別-音威子府をオホーツク海側を経由しながら結んでいた。1989年に廃止されてしまい、今では廃線跡の一部がサイクリングロードとして再整備されている。
 猿払からクッチャロ湖に向う途中に国道からそれて、そのサイクリングロードを走っていると、鬱そうとした森林に近づき、唐突に「熊出没」という看板が目に入ってきた。なんて恐ろしいサイクリングロードなんだと思い、仕方無く、しばらく国道に戻って走った。
 途中から再びサイクリングロードに入り走っていると、山軽駅の跡をそのまま利用した休憩所があり、一休みしようと自転車を停めた。ホームの上にかつての待合室とプレハブの休憩小屋ががあったのだが、割られた鋭い切れ口の窓ガラスが狭い室内に散乱ているのが放置され、殺風景で背筋が寒くなってくる感じさえする。ホーム上とそのまわりは雑草が生えまくり、まるで人々から忘れ去られた廃墟のようだ。打ち棄てられた鉄路の寂寥感をひしひしと感じた。

当サイト内関連コンテンツ
北海道廃線跡紀行6-天北線
もあわせてご覧下さい。


☆コラム(2)〜私の北海道アルバイト体験
 お金は旅立ち前に十分用意したが、それでも足りなくなる恐れがあると思い、北海道で何かアルバイトをするつもりでいたし、また旅の途中で北海道で働いたという思い出も作りたかった。私のように長期間滞在する旅人は、アルバイトをしながら旅の費用を稼ぐ人も多い。代表的な職種は、昆布漁、シャケバイ(鮭の加工)、農作業、農産物の加工などと、これまた北海道らしい仕事だ。仕事は、旅人が集まり易い場所、例えば、ライダーハウスや、一部のキャンプ場(羅臼、富良野等)に張り紙がしてあり、収穫時期など作業の忙しい時は、割と簡単に見つけられると思われる。また、宿や、観光客相手の飲食店では、私が長期旅行者と知ると、店主が「働かない?」勧誘してきた事もあった。面白そうな仕事だったが、残念ながらタイミングが悪く、お誘いはお断りした。

 私は北海道らしい仕事ではなく、ビルメンテナンスという全く北海道らしくない仕事を滞在中にした。そろそろ働こうか思った時に、稚内のライダーハウスで利尻島のホテルでのベットメイク等裏方作業の求人の張り紙を見た。面接をしたが、長期の人を求めているとの事で、条件が合わず、それならと、ビルメンテナンスの仕事を紹介された。交渉の結果、ライダーハウスの料金600円を上乗せした額を給料にしてくれ、目出度く職が決まった。期間は8月上旬からお盆までだ。昼食のため、おにぎりやサンドイッチを前の晩に作っておいたり、ボトルにお茶の葉を浸しておくなど、ここでもお金の節約に気を使った。

 ビルメンテナンスの社員の方が毎朝、ライダーハウスまで迎えに来てくれ、地元の高校生アルバイトの人と車に乗り、稚内市内や周辺の町に行った。病院や夏休み中の学校が主な仕事場で、ワックス掛けに汗を流した。いちばん遠い所では豊富町の病院まで行き、面白い所では、稚内温泉「童夢」に行き浴槽の掃除をした事もあった。

 私はこの仕事が始めてな事もあり、連日かなり疲れた。そして、ライダーハウス代も合わせても、確か6000円程度という賃金は、都市圏の賃金に慣れてしまった私には割に合わないと感じた。もし都市圏で同じ職種なら、1割〜2割は給料が高かっただろう。都市圏から離れる程、賃金は安くなるもので仕方なく、ましてや、ライダーハウス分を給料に上乗せして雇ってもらってる身でこんな事をいうとは罰当たりだが…。

 でも、いつも引率してくれる社員の方は職人気質で無愛想な所はあったが、道すがら北海道道民の方の生の話も聞け、仕事の後には温泉に立ち寄ってくれたりと親切な面もあった。また、北海道で旅行気分を抜いた体験が出来き、暮らすように稚内で過せたのは、かえって思い出深い。

 そして、仕事の帰路で見た利尻山の夕焼けは凄まじい程美しく、このアルバイト期間の出来事で印象に残っているシーンだ。利尻山がまさに富士山のようなシルエットになり、夕陽が空と海を真っ赤に染め、鮮烈で静かな日没だった。社員の方がさりげなく車を止めてくれ、しばし魂が奪われたように見入った。あの光景を正確に表現する事は出来ないだろう。その時カメラを持ってなかった事は残念だが、心の中にしっかりと刻み込まれている。

 思えばお金で単純に換算できない体験を色々としたものだ。

 個人情報保護のため、人物の写真にぼかしを入れています。不自然な点をご了承下さい。


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