106日間北海道一周!自転車&キャンプ旅行(1)


なぜ自転車旅行か?
 「なんで広い北海道をまわるのに、キャンプはともかく、わざわざ疲れが激しい自転車なのか?せめてオートバイにすればいいじゃないか」と、多くの方が思われる事だろう。実は、私は自転車が特別に好きなわけでもなかった。それなら何でと、余計疑問だろう。それらの疑問に、私は「北海道が好きだから」と答える。

 私はこれまでに何度も北海道を旅していた。車の免許はあってもペーパーなので、JRと公共交通機関ばかりだった。道内の主な観光地は大体行った。そして、何度も足を運んでも飽きないお気に入りの場所も出来た。鉄道旅行が大好きで、北海道の車窓は素晴らしく何度見ても飽きない。
 だけど、車窓から見える様々な風景…、観光地でない道民の生活がひっそり営まれているような小さな町、広大な牧場、車窓から見える寂しげな風景の中に延びる細い道など、公共交通機関で旅行していると感じる℃魔ェ出来ないものが多くある。そのような風景に触れながら、のんびり、きままに旅したいという気持ちが芽生えていた。
 そこで、歩きは時間が掛かり過ぎるし、思い荷物を背負いながら歩くのはかなり疲れそうだ。オートバイは、新たに購入するとお金が掛かる。それに、時速何十キロも出して移動するのは、私には速過ぎ、もっとのんびり移動したかった。そこで導き出したのが自転車だった。キャンプに興味があり、放浪のようなものに憧れていたので、自転車にキャンプ道具一式など荷物を載せて、のんびり旅をしようと言う結論に達した。数年前にキャンプではないが、北海道自転車ツーリングの経験はあったせいか、今回の旅に対する不安は、この時点では湧いてこなかった。このように、旅の移動手段として、半ば積極的理由で、半ば安直に自転車を使っての長旅を決めた。

大海に漕ぎ出す(7/15〜7/17)
 名古屋港フェリー乗り場で、車のデッキからの乗船を待つバイク、自転車の集団がいる場所に並んだ。その中に、同じく自転車を載せ北海道に向う20代前半位の女性がいた。色々話してる内、重そうな荷物を装着した自転車の扱いに手間取る私を見て「すごい荷物だね。大丈夫?それで旅行するのはきついそうだね。」と言い、私の旅が順調にいかないのではと懐疑的な目を向ける。彼女の荷物は後輪両横、後輪上と3ヶ所なのに対し、私の荷物は前輪の両横、前輪上、後輪両横、後輪上と彼女の倍の量の荷物を積載している。自転車で何十キロと走るだけでも体力が要り、坂道、気候によりさらに負担が増える。その上私の場合はキャンプ道具などが入っているかなりの重装備で、それらの困難を乗り切れるのかと不安になってきた。だけど旅を中断する気はもちろん起きなかった。

 2晩海上で過し、船は徐々に陸地に近づいている。陸地が見え、やがて王子製紙の工場の煙突からもくもくと出る白い煙が目立つ苫小牧市が見えてきた。荷物を自転車に括りつけるなど、下船準備を終え、係員の指示があるのを待った。待つ間、私はまるで大海に漕ぎ出す小船に乗って旅に出るかのような冒険心溢れる気持ちで、これから始まる旅への期待で満ちたていた。やがてタラップが降り、少し待った後、自分の順番が来ると、傾斜を慎重に滑り降り、暗い車用のデッキから、夏の光がまぶしい北海道の大地に踊り出る。遂に自転車と共に北海道上陸の一歩を標した。

北海道上陸の時が近付く

海上で二晩過し、苫小牧が…、
北海道上陸の時が近付いてきた。
 だが、その先は重い荷物に足を捕られるように、よろめきながらペダルを踏み、時々バランスを崩して倒れそうになる。自宅から名古屋港までは雨が強く、車で送ってもらっていたので、重装備で実際に走るのはこれが初めてだった。焦りながら、必死にバランスを取り自転車を漕ぐ。だが、ついに耐え切れなくなり、何百メートル進んだ所で、早くも、自転車と共にドスンと右側に倒れてしまった。遠くの方で、工事の警備員がこの様子を見ていた。かっこ悪い船出だ。

 だが、短期間で、なんとか重装備の自転車を運転するのに慣れ、無難に走れるようになった。苫小牧駅北口のイトーヨーカドーで、物資を調達し、道内1泊目の宿泊地である、15km北のウトナイ湖ユースホステルに向った。


北広島自然の森キャンプ場

初キャンプ!北広島市の自然の森
キャンプ場。写真左の木の下に、テント
(小さな明るい緑色)を張り、その側に
自転車を立て掛けた。
初めてのキャンプ(7/18)
 苫小牧に上陸した翌日、自転車旅行2日目にして生まれて初めてのキャンプの日となった。その記念すべき場所は、札幌市の東隣り、北広島市にある自然の森キャンプ場だった。札幌に向う国道36号線から坂を下った森林の中にあり、民家数軒しかない静かな所だ。管理人さんの話だと、オープンしたばかりで、私が4番目の客だそうな。
 マニュアルを見ながら、何とかテントを建て、早々に水で溶かす赤飯と缶詰の夕食を取った。
 結局、その日のキャンパーは私だけだった。日が沈み管理人さんも帰ってしまい、私1人が取り残され心細くなってきた。初めてのキャンプという事もあり、その気持ちは尚更だった。キャンプ場は夜の闇に包まれ、遠くの方から、何か動物の物寂しげな鳴き声えが聞こえてきて、心細さに拍車をかける。
 慣れないキャンプと寂しさに、何度も目を覚まし、よく眠れないまま夜明けを迎えた。


ひまわりが満開の北竜町ひまわりの里

北竜町ひまわりの里。満開の
ひまわりが畑を埋め尽くす。
北竜町ひまわりの里(7/25)
 広大なひまわり畑で有名な所が道央の北竜町という所にある。ちょうど咲いている時期なので、テントを張っている隣町の秩父別町から往復した。
 全体の3分の1程はまだ咲いてなかったが、それでもその他の畑が満開のひまわりでぎっしりと埋め尽くされている光景は圧巻でもあり、また美しくもあった。
仮設休憩所で一休みして、キャンプ場に帰る時に、今日のおやつにとひまわりの種のスナックを買った。

留萌から日本海オロロンラインへ

海へ踊り出て、日本海沿いの「日本海
オロロンライン」を走り、最北を目指す。
日本海オロロンライン(7/28)
 留萌市のライダーハウスで2日間過し、再び北に向けてペダルを漕いだ。留萌中心街を抜けると、道は海に出た。「日本海オロロンライン」と名付けられ、文字通り日本海沿いに最果てを目指す道路だ。オロロンとは、沿線の羽幌町内の島「天売島」に生息する「オロロン鳥」から来ている。海の眺めがいいフラットな道で、最初の内は気持ちいい程に飛ばし、走り続けた。
 だが、それも苫前辺りまで、その後はアップダウンが連続する道に一変した。やっと坂を登り終え、登りの憂さを晴らすように坂を下って、程なくしたら、また上り坂でげんなり…、というチャリダー(※)泣かせの道で、日本海を眺めながらのんびり走るという余裕はどこかに行ってしまった。しかも、太陽が容赦無く照りつけ、余計に汗が流れ続け、息も切れ切れだ。校舎の影で、大の字に仰向けになっているチャリダーを見たが、私も、まさにああしたい心境だった。
 それでも、孤軍奮闘するように、ひたすら走り続け、その日は初山別村のキャンプ場にテントを張った。そして、翌日も、同じような道が続いた。そして、ようやく開放されたのが、初山別のキャンプ場から、約km程走った遠別辺りでだった。
(※)チャリダ−:自転車で旅する人。チャリンコ(自転車)とライダー(バイク乗り)を掛け合わせた造語。


北緯45度線の看板と私の自転車

北緯45度通過点(幌延町)
北緯45度線を通過、日本の最北へ
(7/29)

 北海道に上陸して13日目になり、のんびり北上し、約400km走ってきた。もう重い荷物にもすっかり慣れていた。北海道とは言え、夏の昼間は暑く、日差しも強い。お陰でチャリダーなら例外無くかかる職業病?の日焼けで顔は真っ黒になってしまった。
 日本海から内陸に入り、道道121号線を走っていると、幌延市街地の手前に「北緯45度通過点」という大きな看板が立ち、北海道地図の幌延のある位置辺りで赤い線が横に伸びている。北に向う私には、まるで日本最北への入り口のように思える物だ。記念にと、通過点看板の足元にに自転車をもたせかけ写真を撮った。看板によれば、世界の他の都市では、ミラノ(イタリア)、モントリオール(カナダ)、リヨン、ボルドー(フランス)、ベオグラード(ユーゴスラビア)などが幌延と同じ北緯45度線上にあるとの事だ。


☆コラム(1)〜旅行中の経済事情
 この旅の心配毎の1つはやはりお金が持つかどうかで、これが無ければ、食べ物さえも満足に手に入れられず、快適に過す所も確保し辛い。中には駅寝・野宿などをしながらギリギリの状態で旅を続けている人もいたが、それは私の性分に合わない。もちろん、贅沢をするつもりは無かったが、この北海道旅行は数ヶ月間の長期に渡る予定で、いわば生活しながら旅するようなものだったから、責めて最低限の“旅=生活”はしたいと考えていた。しかし、一体どれだけお金が必要か予想できなかったし、予定外の出費も出てくるだろう。だから、あらかじめそれなりの金額を貯めておいた。はっきりと覚えていないが、確か40〜50万円位だったと思う。この他に、数万は親の世話にもなってしまった…。貯めたお金は全て郵便局に預け、必要に応じて、道内の至る所に設置された郵便局のATMで引き出した。

 だが、お金を貯めても道内での使い方が問題だったりする。金額が高くなりそうなのは宿代だ。安宿の代表格、ユースホステルや、とほ宿(ユースホステル形式の宿)がある。だが、1泊にに5000円程度掛かり、仮に殆どそれらの宿に泊まるとしたら、何十万円と掛かる事になり、それだけで蓄えが吹っ飛んでしまう。
 その対策として、旅行中、多くをキャンプ場で寝泊りした。北海道には無料キャンプ場、500円程度までの格安キャンプ場が数多くあり、長期滞在の旅人には有難い。キャンプは節約という観点を抜きにしても、もちろん楽しかった。
 そして、もう1つ格安の宿泊方法がライダーハウスだ。ライダ−ハウスとは、地元の方がご厚意で、空家や空部屋などを、ライダーに開放してくれるもので、値段は1000円以下と格安だ。その代わり、多くの所は、建物が古び、あまり奇麗でなく、設備は電気、トイレ、水道などと必要最小限だ。寝具も殆どの所では無く、夜は各々が持参した寝袋に包まって、雑魚寝状態だ。だけど、この場合、屋内で安心して眠れるだけでも良しというものだ。ライダーハウスは、“ライダー”となっているが、多くの所が自転車やヒッチハイクなどの旅人も宿泊可となっていた。そのため、自然とそのような旅人が集まり、ノリが合えば、輪になって語り合ったり行動を共にするなど、同じ旅人同士で過す事が楽しかった。

 食事は自炊を基本としていた。その方がコンビニ弁当程度の値段で、倍の量が食べられ、費用の面からだけでなく、食べ物が燃料のチャリダーには栄養的にも体力的に有用だ。

 それらを始めとした出費を押さえる努力のお陰で、酷く困窮する事無く旅する事が出来た。でも、貧乏旅行である事は変わり無かったけど(笑)。お金をあらかじめ貯めておいたり、途中でアルバイトをして収入を得たが、今思えば、あの金額で4ヶ月近くもよくやっていけたなあと改めて関心してしまう・・・。

TOP旅の写真館

106日間北海道一周!自転車&キャンプ旅行
[1]⇒
[2]-[3]-[4]-[5]-[6]-[雑記帳]

my旅BOX-鉄道旅行と旅 Copyright(C) 2003 solano, All rights reserved.