No。100
夢とそろばん
2002.3.11
「構造改革は、絶対やる」。
あんたこれ、就任直後に言ってなかったか?
もう、就任して1年だぞ。
「支持率が下がった」という報道のたびに言うな、当たり前のこと。
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少し前に、「日産のマーチは売れない」と書きました。
http://www.horae.dti.ne.jp/~tmt/diarykako0202.htm
その時は、軽く書いただけだったので、その理由を少し補足しておきたいと思います。
最初に、個人的に気に入らないところを言ってしまうと、何と言っても「ヘッドランプの位置」なんですよ(マジ細かい(^-^;))。
これ、日産の銀座のショールームで撮った写真です。
ショールームの中で、写真を撮るのは気が引けたので、外から撮りました。
だから、ガラスの反射がきつくなっており、すみません。<(_
_)>
でも、このヘッドランプ、CMでも前面に押し出して、アピールしていますね。
ちょっと可愛らしい目という感じで。
これを訴求ポイントとしたいのでしょう。
私には、NHKの「おかあさんといっしょ」の「スプー」のパクリみたいな気もするんですけど。
(皆さん、ご存知ですか?)
私としては、あと「10センチ下げて欲しかった」ですね。
たしかにランプの形は可愛いですけど、このフロントのグリルというんですか、このあたりを含めて、クルマの顔つきが「出っ歯のサル」って感じがして、イヤなんです。
ランプを、あと10センチ下にすると、グッと可愛くなると思うんだけどな〜。
すみません、これはマーケティングでもなんでもなく、私の好みです。
で、このマーチに関して、またまた登場した日産のデザイナー、中村さんが、これまたCMで何かおっしゃってましたが、今ひとつ伝わってこない。
あの方、もう少し、滑舌よく喋る練習をした方がいいと思いますね。
「面構え」が、今ひとつ明るい印象の方ではないので、「喋り方」は極めて重要な要素になるはず。
いくら業界では有名な方でも、一般的には無名ですから、ボソボソ喋っているだけでは、何にも伝わらない。
「第一印象」にもっと注意を払うべきではないでしょうか。
今のままだと、とてもとても「楽しそうなクルマ」には思えません。
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そう、私が「日産の回復」について、常々疑問を呈している根拠は、ここなんです。
「日産のクルマに乗ると、何が楽しいのか」、全然伝わってこないんです。
「工場閉鎖」「仕入れの見直し」、聞こえてくるのは、そんな「マイナス」の情報ばっかり。
だから、スカイラインとか、マーチとか、新車を見させられても、「あー、この陰には、出入りの業者の涙が、相当流されているんだろうな〜」としか思えない。
「セレナ」あたりでは、「カタチより思い出」でしたっけ、いい感じのメッセージを出していますけど、ホンダのステップワゴンと、所詮はネタがカブっているから、今ひとつ伝わりきれない感じ。
だいたい、セレナって何台売れているんだ?
発売台数ベストテンに入っていないということは、消費者には伝わっていないと判断せざるをえないでしょう。
カルロス・ゴーン氏の手腕は、たしかに凄い。
利益も、急激に出るようになった。
でも、「クルマに乗る楽しさ」が、一向に伝わってこないので、「ダメ」だと思っています。
ゴーンさんが、朝7時に出社して、仕事をしているのは分かったんですけど、ところで、あの方は「クルマのどこが好き」なのでしょうか。
最近、出版された「本」には、その辺が書いてあるのでしょうか。
この辺の「伝わっていない」ということは、もちろん、日産自動車だけの問題ではなく、当然のことながら、そういうことしか取り上げない「マスコミ」の責任も大だと思います。
ゴーン氏を「コストカッター」としか表現しないマスコミを、日産の広報担当は、もっと誘導しなきゃ。
「日産はこんなに楽しいクルマを作っているんですよ」とも言っていることを。
これ、日産の広報戦略上、非常に重要な点だと思うんですけど。
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トヨタとホンダが、ここまで強くなければ、「日産=ゴーン=コストカッター=業績急回復」という、ステレオタイプな表現ばかりされてもかまわないと思うんです。
でも、トヨタばかりか、ホンダまでが絶好調の今、クルマに乗る楽しさを伝えられない自動車会社は、勝ち残れないのではないでしょうか。
例えば、マーチが対抗するのは、トヨタでは「ファンカーゴ」「bB」、そして「ヴィッツ」。
ホンダは「フィット」。
これだけでも、クルマのタイプが、「ナンパ系」「マジメ系」など超強力な布陣なのに、さらに「ローバーミニ」も、リニューアルして発売というんだから。
日産は「マーチ」で何を目指そうとしているのか?
「遊び」という点では、ファンカーゴやbBほど「はじけ感」が足りない気がする。
「真面目さ」という点では、燃費を謳ってヒットしたヴィッツやフィットより格下という感じ。
「ステイタス」という点では、ミニにかなうはずもない。
(ここでのステイタスは、「伝統」という意味として)
どこにも売れる理由がないと思うんです、マーチが。
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「夢を語れていない」
何も「日産自動車」だけの問題ではないと思います。
これだけ景気が悪いと言われる中で、例えば、「金融機関」で今、夢を語ることができる経営者が、どれだけいるでしょうか?
「ゼネコン」の、今の夢ってそもそも何だ?
そういや、うちの会社の夢って何だっけ…?
「今はそれどころじゃないだろう」
そう言われてしまうと思うんです。
私は違うと思う。全く逆だと思う。
むしろ、こんな時代だからこそ、「夢を語る経営者」が必要だと思います。
確かに、「帳尻」を合わせることは必要。
でも、そんなこと誰だって分かる。
自分の財布にカネが少なくなってくれば、自ずと生活を切り詰めるはず。
ましてや、金融機関などには優秀な人が多いのだから、ねぇ。
こんなにキツイんだから、もっと楽しく仕事ができるように仕向けて欲しいんですよね。
そう、高橋尚子がマラソンを走っている横で、ガハハと笑っている小出監督のように。
「金メダル取ろうよな〜、Qちゃんっ!」って言う人が欲しいです。
最近は、「オマエのベストタイムは2時間18分25秒だから、あと10分縮めれば、メダル圏内。そのためには、体脂肪率をあと5%減らして、それで毎日60km走って…」ということばかり、耳元でガミガミ言われているような感じ。
ちょっと疲れちゃう。
(もっとも小出監督は、選手によって、指導法を使い分けているそうですが)
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ゴーンさんの難しいところは、何から何まで、一人で責任を負わされているところ。
コストに関して、ガミガミ言う人と、夢を語る人は、一人で担当するのはなかなか難しいこと。
役割を分担した方が、やりやすいはず。
やっぱりそういう意味で、ホンダの「本田宗一郎」と「藤沢武夫」のコンビは、最強だったと思います。
ホンダの技術と夢は本田宗一郎が、営業とカネは藤沢武夫が、という図式は、理想的すぎるほどに、理想的な経営体制であったはずです。
もっとも、それぞれの能力が、偉大であったことが前提条件ではありますが。
一人の人が、一方では「コストを削減しろ」と言いながら、片一方では「夢のあるクルマを作れ」と言われても、受け取る側は困ってしまう。
「あんた、どっちなの?」、そう思ってしまうのが普通。
「矛盾してるじゃん」、誰でもそう思います。
「二人に分けて言ったところで、結論は一緒でしょ」と考える人は早計。
結論は一緒でも、「納得の過程」が違います。
この、本田&藤沢コンビのような体制は、別に珍しいことではありません。
最近では、「ソフトバンク」の「孫正義」と「北尾」コンビもあげられるでしょう。
大言壮語とも取れる発言で、物議を醸しながらも、前進を続ける孫氏と、野村證券出身で財務面を取り仕切る北尾氏。
今、ソフトバンクが残している業績を見れば、本田技研工業と全く遜色ないことは、間違いないでしょう。
後世に、この二人はどのように語られるのでしょうか。
今、世間で最も注目を浴びている会社にも、絶妙のコンビはいます。
そう、ダイエーの高木社長と平山副社長。
でも、このコンビは、社長が財務面に明るく、副社長が営業面に強いということで、先のホンダ、ソフトバンクとは、逆の感じ。
だからキツイのかなぁ〜。
私の理論的には、もっと頑張れるはずなんですよ。
でも、やっぱ、「夢」は社長が語る役目なのかもな…。
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翻って、小泉首相は、結局のところ、「そろばん」が伴っていなかったのでしょう。
彼は、「夢」を十分に語ってくれたので、私も相当期待したんですけど、やっぱりダメみたい。
少なくとも、今のところはダメ。
竹中さんを大臣に起用したけど、彼は、経済の理論と数字には強くても、「現場の営業を知らない」感じだから、ダメだったのでは。
やっぱり、「モノを売った経験のある人」ではなくては、「日本国の財政担当」は務まらないということですね。
というよりも、「モノを売ったことのない学者」では、今の日本経済は救えないということか。
いずれにしても、アメリカのように民間から登用すべきだったのでは…。
会社だけではなく、ましてや日本経済だけではなく、「人生」にも追い続ける「理想」は、なくてはならないもののはず。
これがなくなると、人はやってられなくなっちゃう。
だから、「夢」は絶対に必要。
もちろん、「財政的な裏付けのない夢」では、早々に破綻してしまう。
でも、「夢はどこかに置き忘れて、そろばん勘定ばっかり」でも、萎えてしまう。
両方のバランスを、いかに取るかが重要なポイントなんですね。
そう、「夢」と「そろばん」を、いかに両立させるかが、肝心なんですね、人生でも。
ホンダのコンビのように、絶妙なまでの天の配剤が、あちこちにあれば別でしょうけど、世の中は、そうそううまいことばかりではない。
ゴーンさんのように、一人ですべてやらなくてはならない人の方が、大半のはず。
皆さんの人生は、「夢とそろばん」のバランスを、どのように取っていますか?