特急白鳥12時間55分の旅路(2)


出発前夜
 下北交通大畑線に乗ってむつ市で泊まった翌日、大阪行き特急白鳥に乗るため、青森駅前の青森グランドホテルに泊まった。白鳥は早朝の6時11分に青森を出るため駅前のホテルに泊まるのが便利だ。
 白鳥に乗るに当たって1つ気がかりな事は、雪などで大幅に遅れたり運休してしまわないかだ。近年の暖冬と違い、今年は雪が多いという。白鳥は雪深い地域を走り、遅れや途中での運転打ち切りという事がたまにあるみたいだ。また、1日くらいは運休しても余計に泊る覚悟だったが気になる。
 白鳥の乗車を明日に控えた晩も、雪が滅多に降らない地域に住んでいる私にとっては、凄いドカ雪だと思えるほど青森市内には雪が降り続き、辺りの風景は雪で霞んで見える。でも郷土料理屋のおばさんは「こんな雪こっちでは普通だよ」とさらりと言ってのけ、だぶん明日は大丈夫だろうと安心する。
 明日は早いので、早めにホテルに帰り荷物整理をした後、シャワーを浴びてさっさと寝た。明日は5時前に起きなければいけない。

青森駅の電光掲示板

青森駅の発車時刻掲示板。上りの白鳥
は、6時11分という早い時間に青森駅を
発ち、夜の19時6分に大阪に着く。


早朝、出発前の青森駅
 5時半にチェックアウトをして夜明け前の青森駅に向かう。駅にはまだ人が少なく寒々としていて、蛍光灯がコンクリートの壁や店の シャッターを明るく照らしている。でも、盛岡行特急はつかりを始め、列車が徐々に動き出すので、時々人が来ては改札からホームに消えていく。私も白鳥が出発する3番線に向かった。
 跨線橋を渡っていると青と黄色に塗り替えられた485系はつかりが見え、その向こうに肌色に赤いラインが入った国鉄色の特急車が見える。 もう白鳥は入線していた。発車まであと30分近くもあるが、こんな寒い日は、早い入線で助かる。
 3番線に降り、とりあえず自分の席の2号車に荷物を置いてホームに出て編成を見る。両端ボンネット車の今や懐かしい思いがする国鉄色の9両編成で、グリーン車1両、指定席5両、自由席3両という時刻表に書いてあるのと同じだ。反対のホームの隣の5番線には札幌から到着した 急行はまなすが停車していて、ドラえもん車両を何両か連結している。
 長めの編成だが、朝早く乗客は各車両10人いるかいないかだった。お別れ乗車の鉄道ファンと思しき人も何人かいるが、まだ廃止まで1ヶ月以上あるので落ち着いていて普段通りの光景といった所か。
 そば屋、 キオスク、駅弁屋は少ない乗客のため営業してくれていてとても嬉しい。寒いホームにあって、店の灯りが光り、そば屋から湯気が出てるのを見ると、買わなくても、こちらで暖まったような気分になる。乗客達はホームに出て自動販売機で飲み物を買ったり駅弁屋から弁当を買ったりしている。私も弁当を買いに行こうとしたら、弁当屋のおじさんは白鳥の車内に入っていくのが見え、ワゴンは無人になってしまった。しばらく待っていると、ひよっこりと車内から出てきた。たぶん車内のトイレを利用したのだろう。戻ってきたおじさんから弁当を買いさらにキオスクでお菓子や飲み物を買い長い旅に備えた。
 自分の席にに戻っても数えるほどしか乗客は増えていない。車内はシートをフリーストップ式のリクライニングシートに取り替えられ、乗り心地はまあまあ良さそうだ。前の席に収納されているテーブルを見ると毒々しいほどの黄色をしていて異様な感じを受ける。他のテーブルもほとんどその色をしていて、いくつかが壊れて付け変えたためか、オフホワイトのテーブルもあり異様さを引き立てている。多分、元喫煙車の名残でテーブルにタバコの煙の色が染み付いてしまったのだろう。そういえば、壁の灰皿の跡の穴は銀色のネジで塞いであり、肘掛の灰皿は使えないようにしてある。一昔前は喫煙車のほうが多かったが、今はたいてい禁煙車の方が多い。この白鳥もグリーン車を始めとした6両が禁煙車だ。
 やがて出発時間の6時11分になり、白鳥は青森駅3番線を離れ、夜明け前の闇の中に消えた。

特急白鳥大阪に向け飛び立つ
 長い旅が始まった。終点大阪の到着は、約13時間後の19時6分だ。13時間と言えば新幹線「のぞみ」で東京-博多間を往復しても、2時間程度のおつりが返って来る。ヨーロッパ行きのノンストップの航空便でも、12時間もあれば目的地に着いてしまう。13時間なんて、今問題になっている「エコノミークラス症候群」になってしまうよと、思い浮かんでしまうような長い時間だ。
 どうでもいい事を考えていると、車内放送が流れてくる。一通りの挨拶と案内なのだが、さすがに停車駅が多い!39駅もあるので、一駅一駅、余さず停車駅を紹介する車掌さんも、途中に息継ぎをし、僅かに間が空く。新潟までは秋田運輸区の2名の車掌が担当するとのことだった。
 長い車内放送を聞きながら、早めの朝食の弁当を食べ始めた。長い乗車時間の楽しみの1つは、車窓を見る事や食べる事などだ。買った弁当は「青森味づくし」で、細かく仕切った箱に青森の名物が入っている。青森を離れ、旅行の思い出に浸りながら食べるにはぴったりの弁当だ。様々な海産物に、デザートは青森のおばあちゃんおすすめお菓子と追分あっぷるミント風味で、これが意外と美味しかった。
出発を待つ特急白鳥

凍てつく早朝の青森駅で出発を待つ
大阪行き特急白鳥。国鉄色の485系。

グリーン車の方向幕

大阪行きの方向幕を掲げて待つ。
特急白鳥のグリーン車は2-2の横4列。


白鳥の普通車車内

発車20分前の白鳥の車内。
元喫煙車のためか、テーブルが
異様な程黄色く汚れていた。

駅弁「青森味づくし」

朝食は青森駅で買った駅弁「青森味づくし」

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