No。105

商行為とゴリ押し
2002.4.15
by Y.Tomizawa

「みずほ」は、ちょっとヤバいかも知れませんねぇ。
私も、少し前までは、「まあそのうち回復するだろ」くらいに、タカをくくっていました。
でも、それが覆ったのが、社長(CEO?)の参考人質疑を見てから。
何すか、あの答弁は?(--#)
まるで、雪印や、それこそ全国さまざまな警察の謝罪会見みたな感じがしました(かなりヤバい例え〜(^-^;))。

世界最大の銀行らしいですけど、このお家の一大事に、トップがあんな態度じゃ、底の浅さがバレバレ。
「トップの顔」というのは、実は企業の「ブランド」を象徴する一つなんです。
いや、私が勝手に言っていることではなくて、かのアーカー先生がおっしゃってることです。
ちょっと、そのまま引用してしまいますと…、

The arrival of Lou Gerstner at IBM and the reinvolvement of Steve Jobs with Apple both were associated with brand equity improvements. These visible CEOs articulated major changes in business strategy that clearly influenced their brands.
(Brand Leadership / David A. Aaker, Erich Joachimsthaler)
※慣れないことすると疲れる…(-。-;)

「Visible CEO」。
なかなか思慮深い言葉ですなぁ。
IBMのルイス・ガースナーや、アップルのスティーブ・ジョブズと、みずほの社長を同等に見ちゃ、ちょっと可哀想な気もするけど、いちおう「世界最大の銀行」なんだから、同じと言えば同じでしょう。

「Visible CEO」とは、今回の「みずほ」の件や、それこそ雪印などとは、裏腹の関係のことだと思いますけど、世の経営者が理解しておかなければならないことでしょう。
これは、つまり、経営者が「自分がどのようにVisibleなのか」ということを、常に意識せよということではないかと思います。
まあ、もっと言えば、経営者だけでなく、従業員一人一人にも同じことが言えると思うんですけど。

それにしても、次の山場が25日の給料日だとか。
乗り切れるのか? 大丈夫なの?
うーん、ダメだろうな〜、残念ながら。
間違えて、オレの給与口座に振り込まれているとか、ないのかな。(^-^;)

いや、マジメに申し上げますと、一度、元の3行に解体して、出直した方がいいのではないでしょうか。
私が、もし経営陣だったら、そうするけどなぁ。
だってこれ以上、システムのバグつぶしに時間をかけられないでしょう。
あぁ、でも、前のシステムは、もう全部捨ててしまって、後戻りできないのかな?
システムって、そういうものなんでしょうか。
だったら、尚更ひどい「見切り発車」だったということだな。

3月下旬に、何気なく撮っていた写真が、何か微妙な意味を持ってきました。(^-^;)

ほれ、またこうやって看板にシールを貼れば、すぐ元に戻れるじゃない。

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その一方で、大手銀行の不良債権額が、また増えている。
追加処理で1兆9千億円、処理総額は7兆8100億円。
もう、訳の分からない金額。

えー、相当な手前味噌ながら、私の著書でも、この「不良債権問題」については、やたらと細かく書いてます(そう、本のタイトルにそぐわないほど…(^-^;))。
だって、気に入らないんだもん、銀行業界が。

いちおう公表されている不良債権総額は、30兆円。
だけど、そんな数字、誰も信じていないことは明白。
100兆円だとか、さらにもっと多いということも、ちょっと調べれば分かる。
だけど、マスコミも報じない。
世の中に、無用な混乱を巻き起こさないためだと思うんだけど、もうそういう時代じゃないですよねぇ。
社民党の原陽子が、ペロっと「ホントのこと」をHPにアップしてしまう時代ですからねぇ。

バブルが崩壊して、この10年間、日本はなかなか変わらなかったと言われている。
それは、全員が変わらなかったのではなくて、ひとえに都銀をはじめとする銀行業界が変わらなかっただけ。
あと政治家と役人か。
他の業界は、みんな変わっていますって。

今日も、パソコン屋に行ってきたんですけど、中高年のオジさんどころか、最近は女性の姿も、本当に当たり前になった。
それも、少し前は、彼氏っぽい男と一緒という女性が大半だったけど、一人で結構マニアなコーナーにいたりする(メモリの売り場とか)。
「個人」は、この10年で結構変わっています。

変わっていないのは、「1+1=1.5」という算式を理解できない人が、経営している会社だけ。
今の時代なら、「1+1=0.8」くらいの算式を宣言できる人でなければ、評価されないはず。

みずほも、預金量が世界最大ということを誇る以前に、3行が合併して、世に何をもたらすのか、何も示していなかったような気がします。
あぁ、通り一遍の御託ではなくて、庶民に分かりやすい「提言」をね。

預金量は最大でもいいけど、少なくとも従業員は「1+1+1=3」ではなくて、せいぜい「2.0〜2.3」くらいで、その人数で我々はこういうことをしますよということを示してからが、世界の金融機関との勝負のはず。

要するに、彼らは、そういうことは考えていなくて、相変わらずの「たすき掛け人事」とか(3行だったらたすきじゃないような気もするけど…)、それぞれのシステムをゴリ押しすることをやっていたんですな。
でもこれって、「族議員」と同じような気がする。
「道路族」とか、最近だとムネオ君とか、自分の都合のいいことや、票になることだけをゴリ押しすることに、血道を上げる人々。
うん、同じですな〜。
もしかしたら、日本人の体質なのか?

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「富士通」「IBM」「日立」、これらの会社のシステム担当者は、どのように思っているのでしょう、今回の事態を。
自社のシステムを推してくれて、「ありがたい」と思っていたのでしょうか。
それとも、日本の金融システムの将来を慮って、「ここはうちではなくて、○○社が担当すべき」と進言していたのでしょうか。
彼らが、どのような態度を取っていたのか、おそらく公表されることはないのでしょうが、場合によっては、彼らの責任が追及されることもありうるでしょう。

これ「システム屋さん」の話だから、私の仕事とは、少し遠いところにあると思っていますが、「出入り業者」の身分にある人間は、すべてこういうリスクを負わされる可能性がありますよね。
取り引きしている企業に、「オレは、お前が『是非お願いします』というから、会社に薦めたんだ」と言われるリスク。
「通常の商行為」なのか、「ゴリ押しへの加担」なのか、微妙なところでしょう。
皆さんは、こういう時に言えますか、「我が社は、今回は手を引きます」と。

私もマーケティング関係とはいえ、「ゴリ押しへの加担」に関わるリスクはあります。
「今の世の中に、何が本当に重要なのか」という視点を、常にどこかに持っていないと、見失ってしまうことでもあるでしょう。
「カネを稼ぐ」ことは正しいことですし、汚いことではないですけれど、商売人である前に、一人の人間であることを忘れてはいけないということを、今回の「みずほ事件」は教えてくれているような気がします。