No。097
こぼれたお酒と顧客満足
2002.2.18
一人で酒を飲んでいたんです、焼鳥屋で。
いや、ちょっと色々あって…。
誰か、今度一緒に飲みに行ってください。<(_
_)>
いや、そういうことじゃなくって。
で、最初はビールから…。
ヤキトリも、ムシャムシャパクパク食べていた。
ほどよく酔ってくると、日本酒が飲みたくなってきたので、「冷酒」を注文。
「枡」に入れられた「グラス」に、なみなみと注がれるお酒。
うーん、うまそ!
お酒を飲まれる方ならお分かりでしょうが、注いでくれるときに、「枡までこぼす」のが常識ですね。
これがまた、いいんですけど。
で、グビグビ飲んで、飲み進んでくると、「枡」にこぼれていた分を、「グラス」に入れますね。
で、また飲み続けると。
その時、ふと閃いたんです。
「このお酒の原価管理は、どうなっとるんや…」と。
このお酒は、一升瓶から注がれたわけですが、普通の飲食店なら、「一升瓶(1.8リットル)から何杯取れるか」を計算しておくはず。
でも、この「枡にこぼれた分」は、どうなっているんだろうと思った次第です。
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ということで、飲み屋で「酒の写真」を撮るのも、ちょっと憚られる感じだったので、ある日、自宅で実験をしてみました。
実験というか、単なる計算か。
でも気分は、もう「経済工学の学者」って感じ。(-_-;)オイオイ
「ブラック・ショールズ・モデル」なんて、メじゃないゼ〜みたいな。
ところで、幸いにも、我が家には「枡」があるんですよ。
まあ、なんちゅーか、その〜、「結婚式で配ったもの」ですな。(^-^;)
もちろん自分の。
結婚式で、「鏡割り」っちゅーヤツをやったんですな。(^▽^;
いや、何となくやりたかったんで。
こういっちゃなんですが、私(といちおう配偶者)こそは「オリジナルウエディングの先駆け」と自負してますんで。
何しろ、結婚雑誌なんて、世の中に、ぜーんぜんない時代にやったんですから。
ええ、もう二度とやりません(たぶん…)。
だって、めちゃくちゃ面倒だったし。
だから、やたらケンカもしたし。(^-^;)
だいたい、最近の方々の「オリジナルウエディング」って、結局、プロデュース屋に乗せられた「型にはまったオリジナル」じゃないすか。
その点、我々の時は、「本当のオリジナル」だから、すべて「ゼロから考えた」。
うん、オレ様(と配偶者様)の功績があるから、結婚プロデュース業も、今こうして儲かってるんだと思ってるんす。(^▽^;ハハハ
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あれ、何の話でしたっけ?
あぁ計算、計算。
「ブラック・ショールズ・モデルを超えろ」でした。
えー、だいたい、「枡」というくらいだから、これはちゃんと「1合」なんだろうなということを、まず測定してみました。
計算内容は、こちらの図でご確認ください。
(枡の大きさ)
6.2cm(縦)×6.2cm(横)×4.6cm(高)=176.824cm3(A)
≒180cm3
おー、だいたい合ってる。(^-^;)
妙に納得。
で、次はグラス。
これ、たしか「何オンス」とかサイズがあるんでしょうけど、よく分からないから、適当に測ってみました。
(グラスの容量)
8.0cm(高)×2.6cm(半径)×2.6×3.14=169.8112cm3(B)
「円の面積」って、「πrの2乗」ですよね。(^-^;)
これ間違えてると、シャレにならないんですけど。
グラスも正確には「1合」って感じになるんでしょうか?
ま、よく分からんけど、いちおう計測上は、こんな感じ。
円錐みたいな形だけど、円柱だと思って、適当に計算してみました。
小数点以下は、やたらと出していますが。
で、最後に問題の、「グラスが枡にあって、酒が注がれた状態」の量。
これ、「秤」があれば、アルキメデス的に測ると簡単なんでしょうが、家に秤がないんで、やっぱり定規でセコセコ測ってみました。
(枡の高さまでのグラスの容量)
3.0cm(高)×2.5cm(半径)×2.5×3.14=58.875cm3(C)
手計算ですから、細かいことは指摘せんといてください。
私、文科系なんで…(と、いい年こいて、くだらん言い訳)
ということで、「枡にグラスを置いて、酒をグラスに一杯に入れ、さらに枡のふちまで一杯になった時の酒の量」は、次のようになります。
(B)+(A)−(C)=287.7602cm3
合ってると…思う。あー、やたら時間がかかった。
けど、飲み屋では、「酒1合」といいながら、「酒1.5合」くらいを売っていることなるんですな。
まあ、目一杯まで入れると、枡からもこぼれてしまうから、現実的には、「1.2合」くらいの感じなのでしょうか。
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で、結局何が言いたいのかというと、こういう「バッファー」って、嬉しいですよね。
簡単にいえば、「こぼれた分」。
「1合しか飲めない」って思っているのに、予想外に「ドボドボ注いでくれる気前のよさ」。
「オヤジィ、江戸っ子だね?」「おう、神田の生まれヨゥ」って感じ?
そもそも酒の注ぎ方に、こんな風習があるの、日本だけ?
ビールじゃできないだろうし、ワインやブランデーなんて、半分くらいしか注いでくれない。
ウイスキーもグラスで飲むけど、下に「受け皿」がない。
そうか、下に受け皿がないと、ダメなんですな。
「下に受け皿」を置いて飲むお酒って、世界中あるんでしょうか?
老酒もなさそうだし、韓国焼酎もない感じ。
ちなみに、私の実験は、家に日本酒がなかったんで、焼酎でやりました。
そのおかげで、実験当日は、かなり酔ったデ〜。
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まあ酒の注ぎ方はいいんですけど、この素晴らしき日本の習慣こそ、「VCM」とか「CRM」などの対極にあるものではないかと思うんです。
まず、言葉の定義を調べてみました。
ここでは、とりあえず「VCM」の方を。
★「バリュー・チェーン・マネジメント」
=情報ネットワークの有効活用によって、資材調達・生産・物流・販売・カスタマサービスに至る一連のビジネスプロセス(バリューチェーン)を、よりお客様志向で無駄のない形に再構築する経営。(NTTのサイトから、かなり昔のリリースを引用)
http://www.ntt.co.jp/news/news99/9903/990318.html
=戦略的コスト・マネジメントや付加価値分析等を通じて、徹底したコスト・ダウンを推進し、顧客価値を高める活動へ経営資源を集中し、インタンジブル・アセットを拡大して企業価値を高める為の,マネジメントの革新を行います。(日本総研のサイトより引用)
http://www.jri.co.jp/consul/cluster/data/SCMB2B.html
「インタンジブル・アセット」って何だ?
難しい言葉使っちゃってモー。
要するに「無形資産」ですな。
VCMってもの自体は、「無駄のない」とか、「徹底的なコストダウン」という言葉に象徴されるように、やたらとコスト削減しそうな感じのもの。
アタマの悪い経営者が聞きかじりで、「VCM」を解釈してしまうと、翌日から従業員に「酒をこぼしすぎるな〜!(--#)」とか言いそうじゃないですか。
で、「枡&グラス」形式をやめて、少し大きめのグラスで、きっちり1合がわかるように線を引いちゃったりして。
最近の経営学的には、こっちが正しい感じ。
でも、そんなことやってると、客から「あそこの店はケチ」なんて評判が立ちそう。
だから、「CS的」には絶対バツでしょう。
ちなみに、東京は有楽町のガード近辺の飲み屋だと、「枡からもこぼれるくらい」注いでくれます。
ま、単に、バイトの兄ちゃんが、手元を見ずに、注いでいるだけなんですけど。
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これポイントとなるのは、要するに「原価管理の基準」をどこに置くかですね。
基準を「グラス1杯」と置くか、「枡まで一杯になった状態」と置くか。
メニューとしては、「1合」として売っているから、グラスが「1合」だったら、「グラス1杯」の方にとって、「枡にこぼれた分」は「無駄」になります。
でも、「枡まで一杯」を基準とすれば、(ケチな考え方だけど)店として「トク」する部分になる。
しかも、私みたいな客は、妙に満足していたりする。(-。-;)小市民
お酒の原価なんて、調べればすぐに分かってしまうんだから、せこい問題なんですけどね。
でも、原価が、シロウト的には分からない業界も、世の中には一杯あるでしょう。
そういう時に、VCMだとか、CRMとか、難しいこと言い出してしまうと、「グラス1杯を基準」にしてしまいがちなのではないかなと思います。
うちの近所に、持ち帰りの焼鳥屋(屋台)があって、たまに買いに行くんです。
私一人で買いに行くと、どうってことないんですけど、子供を連れて行くと、ほぼ必ず「1本おまけ」してくれる。
こういう時に、「おまけはいいから、その分安くしろ」なんて言いませんね。
もう1つ、これもまた、うちの近所にあるクリーニング屋の話。
歩いてすぐなんで、最近は子供に持って行かせたりしているんですけど、これまた必ず「アメ」もしくは「チョコ」をくれる。
まあ、安っぽいアメだったりするんで、子供の虫歯を考えると、「余計なもの与えるな」とも思うんですけど、こういう時に、そんな無粋なこと考えますかね。
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この不景気のさなかに好業績の会社って、こういう無駄は許されない感じがします。
それこそ、日本酒を「量り売り」でもしかねないような感じの経営。
子供に飴玉なんて、もってのほかなんて感じの経営。
ユニクロも、マックも、きっちり量って売ってる感じ。
キヤノン、リコーあたりは、どうですか?
違います?
皆さん、なんか息苦しくないですか?
マックなんて、「スマイル0円」ばかりで、最近あんまり「これぞ顧客満足っ!」って体験をしたことないな〜。
友達に、「こんなこと見かけたよ」って話をすることすらない。
皆さんは、どう思います?
ユニクロもそう。
「最近景気がよくないらしい」ってこと以外には、「年収2千万円の店長」がいることくらい。
「カネ」の話ばっかり。
「バイトの店員が、小さな子供に、小物をサービスであげちゃった」なんてこと、全然聞かない。
あんまり「ガチガチの経営システム」を構築してしまうと、顧客満足を感じる「隙」もなくなってしまうような気がします。
もっと余裕のある方がいいな〜。
これを「余裕」と捉えるか、「無駄」と捉えるか、それこそ経営者の「余裕」に関わってくるんでしょうけど。
どこかに、「テキトー」な部分があった方が、嬉しい感じがします。
外資系コンサルタントなんて、こういう部分をどのように盛り込んでいるんでしょうか?
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私としては、フリースが、1900円でなくてはならない必要はない。
2000円だってかまわないし、たぶん2300円でも、買うときは買う。
ハンバーガーだって、65円でも、130円でも、150円でも、食べるときは食べる。
ある一定の金額まで下がってしまったら、それ以上安くある必要はほとんどないと思います。
そんなに安くしなくていいから、その分、アルバイトも含めた店員の自由裁量で、お客さんに喜んでもらうことに使ってよいとする「経費」に充てて欲しいです。
母親の買い物につき合わされて、むずがる子供に、小さなオモチャとかをあげてしまったり。
ユニクロなんて、こんなことできないのかな?
できそうな気がするんですけど…。
ひょっとして、最近この手のことができているのはスタバ?
私、スタバには行かないんですけど、サービスは、もしかしてこんな感じ?
どうなんでしょう。
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とはいえ、「余裕のあるVCM」を構築したとしても、客の方も、「あの客にだけ不公平だ」なんて、無粋なことを、絶対言ってはいけないんですけどね。
店もそうだけど、客も大人にならないと、日本のCSも成長しないような気がします。