No。085
単価と総額
2001.11.26
by Y.Tomizawa

また狂牛病ですか…。
「牛」関連銘柄が一段と下げ始めたようで、「牛」関係の企業は、モーどうなっちゃうんでしょうって感じ?
いやいや、くだらんネタを振りまいている場合ではなく。

「牛角」の290円セールなんて、これじゃ何にも意味なかったってことじゃん。
困るんだよなオレ的にも。
人がせっかくマーケチング的に分析してんのに、お役所君や政治家君たちは、一瞬で人の苦労を吹き飛ばしてくれるんだもの。
まったくも〜。(-_-メ)
これじゃ、オレが書いたことが検証できないじゃない。

ということでですね、こうなったら私も意地です。
今回は「牛角」の値下げセールの補足を中心に、「値段」について考えてみようかと。

---

「吉野家」も、NYにできる店が、1000店目になるらしく、一時的に250円セールをやるみたいですね。
並盛400円から、280円に下げたのを、さらに250円に、と。
私、これは「いい」と思います。
なぜでしょう?

「牛角」のカルビ490円を、290円にするのは「ダメ」で、「吉野家」はOK。
まあ、どちらも似たようなものですが、微妙に違いますね。
わかりやすくいうと、「いくら払うのか」ということが、まずあります。

吉野家では、普通の人が食べた場合、支払う金額はせいぜい500円。
まあ、彼らもそういう戦略を取ってきているわけです。
サラリーマンや学生が、「ポン」と払える金額で提供できるような仕組みを作っている。

ところが、牛角だとどうでしょう。
たしかに、「カルビ」に払うのは490円でも、他に「ミノ」やら「牛タン」やら、もちろん「中生」やら頼んだら、ま、だいたい3千円。
ちなみに我が家は、子供2名とカミさん、あと私で、だいたい8千〜9千円。
そう、牛角に支払っているのは、490円なんてものではなく、(我が家では)「9千円」なんですよ。

こういう時に、カルビ1皿が200円下がりますと言われたって、トータル9千円がいくらになるのかって、スパっと分かりにくいですよね。
だから、あんまり意味がないと思うんです。

---

その「意味がない」理由として、もう1つ。

それは、(前にも書いたように)牛角が「顧客満足を追求している」から。
牛角は、単に焼肉を安く提供するだけではなく、「お客様に喜んでもらう」ということをサービスの第一義に考えているんです。
店内にも、そういうことを書いた小じゃれたポスターが貼ってありますし、トイレにもこれ見よがしに貼ってあったりします。
「雰囲気」「サービス」「気配り」、ホームページでもうたってます。
http://www.gyukaku.ne.jp/

そう、牛角自身も、「焼肉を食べに来てもらうことだけ」を望んでいる訳ではないんですね。
サイトには、こう書いてあります。
「美味しいお肉、美味しいお酒を、もっと気軽に、もっと楽しく味わえたらいいな」

で、実際に、行ってみるとたしかにテキパキ店員が働いていたりする。
(とはいえ、中には、それが実現できていない店もあったりするんですけど…)
こういうサービスを期待して来る客は、「カルビ1皿の値段」なんて、あんまり意識しないんじゃないっすか?
いや、細かく考えたら、意識しているのかもしれません。

でも、例えば、「ホテルオークラ」を定宿としている人は、「朝食料金いくら?」なんて気にしないでしょう。
ああいうところに、しょっちゅう泊まる人は、おそらく「○○様、本日の宿泊料金は5万8千円になります」「あっそう…」なんて言って、どうせサラっとカードで払うだけ。
「もうちょっと安くならない?」なんてことは、聞くはずもないでしょう。
(というか、オークラが朝食込の宿泊料金なのかも、私はよう知らんのですが(^-^;))

でも、出張旅費が限られているサラリーマンが、ホテルに「安く泊まりたい」と思ったら、余計なサービスは排除したいと思うはず。
「こんなタワシみたいな歯ブラシいらんわ。この分、値段下げろや」と思うはず。
(関西弁になったことに他意はございません<(_ _)>)

ヒジョ〜におおげさにいえば、牛角はホテルオークラ、吉野家は(安い)ビジネスホテルだと思うんです。
違いますか?

---

人的サービスや空間的価値によって顧客にベネフィットを提供しようという店や企業は、サービス内容を「単価明細」で考えてはいけないと思います。
「合計価格」、つまりそこで受けるサービスの「総額」を重視すべきでしょう。

そこで提案。
牛角さん、もし第2弾をやるのなら、「牛肉いくら食べても2千円」っていうのどうです?
食べ放題あらしが怖ければ、上限を設ければいいじゃないですか。
「MAX1名様あたり10皿まで」とか。
そうだ、「牛肉に限定」すればいいんだ。
絶対飽きるし、何しろ不安だから、「豚肉」や「鶏肉」にも流れるはず。
口直しもしたいから、飲物もすすむはず。

そういや、どこぞやの大手コンサルティング会社も、フィーを「3千万円」と言い張って、「見積の明細」を一切出そうとしなかったとか。
ま、こういう強気な姿勢も、マーケティング的には見習うべきところはあるってことですかな。