No。080
リスクマーケティング
2001.10.22
という言葉があるのかどうかわかりませんが、要するに「狂牛病」のネタです。
リスクマネジメントという言葉はありますが、まあ、マーケティングタウンですから、「リスクマーケティング」という言葉を作ってみました(というかあるのか?)。(^-^;)
でもまあ、ひどい話ですね。
何がひどいって、お国の対応が。
生産農家には罪はない。
肉屋にも、吉野家にも、マクドナルドにも、罪はない。
ましてや、牛にも罪はない。
罪を問われるべきは、唯一「国家公務員」だけだと思います。
彼らの言い訳は、もう聞き飽きた。
アメリカだったら、とっくに訴訟で、公務員総入れ替えなんだろうにな〜。
日本は、そうならないんですね〜。
今回の件に関しては、鈴木宗男が、まともに見えるぞ。
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という公務員の無作為批判はさておいて、まったくもってはた迷惑な、今回の狂牛病騒動に関して、牛肉を扱う会社がとった対応を考えてみたいと思います。
まず「マクドナルド」。
こちらは、CMで安全性を訴えるとのこと。
まだ見てませんが、いつから流すのかな?
どんなCMになるのでしょうか?
ノンタレで淡々と15秒やるのか、今までのCMの最後に「牛肉はすべて外国産使用です」のようなテロップでも入れるのか。
「吉野家」。
こちらも、店内に「うちの牛肉は絶対に安全」という貼り紙がしてあるらしいです。
「らしいです」という言葉の通り、私は、騒動以来食べに行ってません。
(だってやっぱコワイ〜(^-^;))

そして、「レインズインターナショナル」。
といっても、ご存じない方もいらっしゃるかも知れませんが、首都圏では「牛角」という焼肉屋で急激に店舗展開を進めている、伸び盛りの企業です。
(へへへ、私も結構利用させてもらっております)
こちらのレインズは、今週末、新聞各紙に15段広告と、その広告と同様の折り込みチラシを入れてきました。
今回の騒動で、最も大きな影響を受けているのは焼肉店らしいですから、レインズ社の「牛角」も相当な被害を被っているのでしょう。
で、各紙への広告とともに、レインズ社は思い切った「値下げ」という戦略を採りました。
写真の通り、「霜降りカルビ」や、今流行の「熟成ハラミ」が通常価格490円のところ「290円」(!)。
すごいっすね〜。吉野家並みの価格。
ライスとカルビだけ食べて、帰ってきてもいいのかな?
もっとすごいのが、「生ビール98円」(!!)。
私、これを見た瞬間、「うぉ〜っ!」と思ったのですが、よく見たら1人1杯限定なんですね。
がっくし。(T-T)
それにしても思い切った価格設定で、しかも7日間という限定の「感謝祭」ですが、この戦略を、皆さんはどう見ますか?
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私は、期間限定であるにせよ、「値下げ」は最悪の選択だと思います。
確かに、売上はきついのでしょう。
騒動は、「そんなに長期化しない」という前提に立てば、肉を腐らせてもしょうがないのですから、安くても叩き売った方がマシ。
そういう判断での「値下げ」なのでしょう。
でも、今後も「牛角」が、永く焼肉チェーン店としてやっていくなら、採るべき選択ではなかったと思います。
なぜか?
そもそもこの「牛角」が、これまでにも「値下げ感謝祭」でも、普段からやっていれば話は別です。
しかし、「牛角」は、そういうことはしていません。
(サイトを見たら、「牛角の日」ということをやっているようですが、知りませんでした…)
いや、むしろ「牛角」のコンセプト自体が、これまでの焼肉店よりも「いつも安い値段」で、しかも「いい雰囲気」でという感じでしたから、値下げセールをやらなくても、十分集客はできていたと思います。
だから今回の値下げは、普段利用している人には、「おー! すげえ〜!」という意外性を与えることはできたと思います。
でも、それは少し唐突感を持ったもののはずです。
「そんなに苦しいのか」という。
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また、「290円」という価格設定も問題。
上にも書いたように、何しろ「吉野家並み」ですから、この価格は、牛角ユーザー以外にも「圧倒的なお得感」を与えることはできるでしょう。
でも、思いませんか?
「なんだ、290円で売れるのかよ」って。
普段から、490円を、390円にするセールでもしていれば別です。
ユーザー側の「セールに対する慣れ」ということも重要。
牛角の場合、ユーザーが慣れていないはずです。
で、いくらセールでも赤字にはしないはずですから、たぶん290円あたりがギリギリのラインのはず。
でも、消費者はそんなこと考えませんよね、普通は。
「なんだ安くできるんじゃん」、それくらいでしょう。
たぶん、仕入れ価格自体が下がっているのでしょう。
そりゃそうでしょう。
卸売業者も、肉を在庫で抱えるわけにもいかないから、多少値下げしてでも、売ってしまいたい。
それに、今回の一件は、あまりにも「特別」すぎる。
だから、思い切って値下げして売ってしまおう。
色々な思惑があったんでしょう。
でも、ここまで下げてしまうと、「元の価格(=490円)」に戻したときに、ユーザーはどう思うか?
「もう感謝祭はやってくれないの?」って思いますよね。
こうして、悪魔の選択に迫られる訳です、「標準価格を値下げすべきか」という。
「値下げ戦略」は、たしかに短期的な効果は期待できますが、ユーザーは「すぐに慣れて」しまいます。
一度、甘い汁を吸わされてしまうと、元の「甘かったはずの汁」は二度と吸おうとしない。
そう、元の汁は、もはや「甘い汁」なのではなく、「苦い汁」にすぎないんです。
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今回の騒動は、結構長期化するのではないでしょうか。
騒動の内容を吟味すれば、「お国の検査体制」が問題だったことはすぐにわかる。
だから、いくら国が安全宣言を出しても無駄です。
だって、今回の一件に関して、消費者は、何よりお役人を信用していないはずですから。
「じゃあ、誰が安全宣言するんじゃ!」と頭を抱えるくらい、本当にたちが悪い騒動です。
で、残念なことでしょうが、被害の長期化を前提とするなら、レインズ社のもう1つ考えるべきは、「牛肉の競合はヤマほどある」ということです。
実際に、スーパーなどでも豚肉・鶏肉の扱いが増えているように、消費者は別に牛肉を食べなくてもいいと思っている。
レインズ社自身も、焼鳥屋や寿司屋、天ぷら屋もやって、リスクヘッジをしているくらいですから、言わずもがなでしょうが。
一度下がった売上を回復する方法は多々ありますが、「代替品がヤマほどある場合」は、非常に難しいです。
そう、雪印の売上が、いまだ事件前の70%しか回復しないと言われているように。
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では、「牛角」は今後どうすべきか?
最近は、豚肉や鶏肉の方が「健康イメージ」がありますから、消費者の中での、牛肉の相対的価値は下がり気味だったはず。
牛肉は、「松阪牛」など一部の高級和牛を食べる価値観が残っていたくらいか。
でも、その「和牛」がイメージダウンしてしまったのだから、おそらく「牛肉=高級」というイメージは、この騒動でおそらく「なくなってしまう」ことすらあり得ると思います。
牛角が目指すべきは、「290円で売ることができる体力をつける」ということしかないでしょう。
カルビ1皿290円で売るということが、どれだけ苦しいことか、私は全然わかりません。
無理を承知で言っています。
でも、まず牛肉の卸値は、今後下がるはず。
消費者の需要がないものは、価値も下がって当たり前。
仕入れ値を下げて、あとはコスト削減か…。
どこまでできるのでしょうか。
顧客満足度を重視していますから、安易に従業員削減もできにくい。
となると、あとは、回転率をいかに上げるかにかかっているでしょう。
平日夜の集客をアップするか、深夜まで営業するのか…。
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お役人の安易な対応が引き起こす経営危機。
牛角、そしてレインズ社の動きを、今後も見守っていきたいです。
とともに、応援もしたいです。
ええ、290円をずっと続けてくれるのなら、私はせっせと応援しまっせ〜。(^○^)
それにしても、これ、本当に訴訟起こしてもいいんじゃないでしょうか?
カイワレの時といい、お役人のいいかげんさに鉄槌を下さないと、日本はダメになる一方だと思うんですけどね。