No。032
契約書新時代
2000.5.9
by Y.Tomizawa

久々の写真ネタ・・・まずは、右の写真を見て欲しください。
これは、三和銀行の「ALL ONE」という新サービスの申込書です。

そう、私は、三和銀行をメインバンクにしています。
別に隠してもしょうがないから、書きますが、三和のインターネットバンキングもやっています。
これは便利です。
何しろ、振込の時にATMで時間を取られることもないし、列の後ろの人の白い視線を気にしながら、「オテスウデスガ、サイショカラオテツヅキクダサイ」という機械の声にいじめられることもなくなりました。

で、この申込書というか、サービスは、要するに、シティバンクが先駆けてやっていた「高額残高保有者への優遇」というサービスを、三和も始めました、というもののようです(わかりやすく言ってしまうと)。
いや、本当は、「三和銀行の口座保有者に対して、総合的に付加価値の高いサービスを提供する」というのがお題目だろうが、要するに、1ヶ月間の平均残高が所定の金額に達している人は、時間外のATM利用などでも、「手数料は無料にします」というのが、最もわかりやすい特典にすぎないサービスなのですが。


ところで、皆さんは、日々様々な契約を(実は)していると思うのですが、ちゃんと読んでますか契約書
例えば、「
通勤(通学)用定期券の裏側」にも、実は、あれこれと契約的な文面が書いてあることをご存知でしたか?

私、実は、隠れ法学部出身でして、まあ契約書を読むことくらいは、一般人よりは抵抗なく読めると思いますし、なるべく読もうと心がけています。
「心がけています」というと、「消費者の鑑」という感じですが、そんなたいそうなものではなく、契約書を(たまに)真面目に、細かいところまで読んでみると、「その会社の、この契約に対する弱みがわかる」ので、読んでいるだけです。
このくらい読まなきゃダメダメよ〜
「ああ、ここを突かれると弱いわけね」というのが、ありありとわかる契約書もたまに見かけます。

で、この「ALL ONE」の契約書ですが、ちゃんと裏面にあります。
当然、注意を促すために、
「裏面を見ろ」という文言も、記入面にあります。
当たり前ですね。
消費者は、一般的にこんな契約書をいちいち見ません(通常)。
でも、銀行側としては、ここで係争になったときに、有利になるために(というか当たり前なんですが)、自己の正当性を、契約書に書き連ねておいて、いざという時に備えます。

いやでも、問題はそんなことではなく、問題は、この裏面にあるんです。
契約書様のおな〜り〜まあご覧ください。
すごいでしょ。
読めないでしょ。
そうです。
これ、何もネット上の画像だから読めないのではなく、本当に読めないんです。
ちなみに、この紙はA4サイズです。

うらうら〜読んでみいや〜ちなみに、一部接写を試みましたが、その結果が次の写真です。
どうです、読めます?
読めませんね、フツー。

これを読ませようっていうんですから、
三和銀行も強気です。
強気というか、ここで2枚に渡ってしまっては、
印刷費が絶対にアップするはずですから、それは許されないことです。
ましてや、これは販促パンフレットですから、おそらく10万単位以上で発注をかけるはず。
銀行にとって、身銭を切る単価が1円であがることは、きっと許されないんでしょう。

読めます?でも、さすがに気が引けたんでしょうね、こんなことも書いてありました。
8ポイントで印刷した会員規約全文はカード送付時に同封します。

何か気になりませんか?
この「8ポイント」という言葉。どこまで一般的なんでしょう。
日頃使っているワードなどの標準設定が、だいたい10ポイントくらい。
通常読みやすい字だと9ポイントくらいでしょうか。
でも、「8ポイント」と聞いて、「このくらいの文字の大きさ」とスパッと理解できる人って、印刷会社に勤める人くらいでは。

これって要するに、「
もう少し大きい字の、わかりやすく言うと、皆様が読みやすい会員規約は・・・・」ということですよね。
それを、持って回って「8ポイントで印刷した・・・」などと、印刷用語(ワープロ文書用語?)みたいなのを使って、消費者を煙に巻こうとしている。
素直に認めればいいのに、「
文字が小さくて申し訳ありません」って。



しかし、天下の大銀行が、公的文書に「8ポイント」なんていう俗っぽい言葉を使うようになったということ自体、時代が変わってきているということの象徴ですね。

立法関係者も、今のうちに、「消費者契約にかかる契約書の文言は、10ポイント以上で書かれなくてはならない」なんていう条文を作っておかないと、そのうち大変なことになるかも知れません。