No。031
ネット時代の最低限の礼儀
2000.5.5
このプログラムは不正な処理を行ったので強制終了されます。
終了しない場合は、プログラムの製造元に連絡してください。
この文章に遭遇していない人は、おそらく生まれてこの方「Macintosh」「Linux」しか触ったことのない人だろう。
だいたい、この文章、それでなくても、頭に来ているときに出てくる文章だというのに、この「口の利き方」は、「一体何様のつもり」という感じである。
まあ、確かに私の不手際で「不正な処理」を行ったのだろう。
しかし、この文章を考えたヤツの発想は、あくまでもソフトウエアメーカーの視点でしか考えていない。
これが気に入らない。
しかも、「終了しない場合は、プログラムの製造元に連絡」しろだあ?
ふざけるな!
この文章を書いたヤツは、とっくにお前(もちろんPCのことですが(^_^;))の不手際のせいで、オレのやっていた仕事は終了しちまっているんだよっ、ということがわかっていない。
インターネットが盛んになり、メールでのやり取りが増えるにつれて、「メールならではの文章の書き方」が一般化しつつある。
通常の業務上の手紙なら、
「拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。日頃は小社業務に格別のご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。
さて、このたび・・・・・」
と、前置きが長い。
いや、顔を合わせずにやり取りするのであれば、このぐらいの「儀礼的な挨拶」は、日常の営業現場でも当たり前だろう。
しかし、Eメールでは、
「○○様。お世話になっております。
さて、×××の件ですが・・・・」
と、一気に本題に入る。
ま、簡便で敏速さを追求するEメールなのだから、このような超略式化した挨拶は、至極当然だろう。
むしろ、ダラダラと、どこからが本題なのかわからない文章の方が、たちが悪い。
しかし、この「このプログラムは不正な処理を行ったので強制終了されます」の文章の問題と、簡便な文章を志向することは、別問題である。
最近、E−Commerceのサイトを見ていて気付いたが、「支払方法」についての記述で、ちょっとした書き方の違いが、読み手を大きく変えてしまうことに気付いた。
●支払いはすべて、宅配便の代引きで行っております。商品到着時に、宅配業者に以下の料金をお支払いください。
これは、普通だろう。しかし・・・
×弊社に対する支払いは、郵便振替のみです。他の支払い方法は一切扱っておりません。
さあ、どういう印象を持つか。
私なら、その商品がさして欲しいものでなければ、このサイトからすぐに出ていく。
というか、少なくとも購入をやめる。
どうして、「一切」などという強い印象を与える言葉を使う必要があるのか。
これこそまさに、「売り手の驕り」ではないか。
もしかしたら、「他の支払方法はないのか?」などという問い合わせが殺到して、うざったくなっていたのかも知れない。
それで、ついサイトの文章を書き換えてしまった。
ネット社会、デジタル社会、簡便さを追求し、売り手も買い手も便利になっているからこそ、「最低限の儀礼」を忘れてはいけないと思うのである。
そして、冒頭の例の文章は、こう書き換えられるべきである。
申し訳ございませんが、システム等の問題により、このプログラムは終了させていただきます。
もし、終了しない場合は、大変お手数をおかけいたしますが、説明書をご覧いただくか、プログラムの製造元にご連絡くださるようお願い申し上げます。
別に、訳のないことだろう、こんな文章に差し替えることは。
毎度のこと、「Windows Update」で配布すればいいのである。
もっと早く、このような文章に書き換えてくれれば、マイクロソフトの分割も、みんなもう少し待ってくれたと思うのだが・・・。