No。022
孫正義
2000.3.4
この人は、取り上げなければいけないでしょう。
それこそ、カラスの鳴かない日はあっても、この人の名が、マスコミに取り上げられない日はないということは、誰もが認めざるをえないことです。
単なるパソコン流通の経営者から、いつの間にか、世界のネット業界を牽引する人になっています。
一体いつの間に・・・という気もしないでもないですが、そこはそれ、計算高い方のようですから、すべてが計算通りにいっているのでしょう。
私が、「孫正義」の名を初めて知った時のことは、今でも記憶がはっきりとあります。
記憶ははっきりあるといいながら、時期は曖昧なのですが、確か、私が大学生の頃です。
今は、すっかり凋落した「月刊プレイボーイ」を、かつては毎月のように、エログラビア目当てで買ったのですが、その中に、「西和彦」と「孫正義」の対談があったのです。
タイトルは、「未来の日本を引っ張る」だったか、「パソコンの旗手」だったか、全く覚えていません。
ただ、この2人が、当時、まだ黎明期であった日本のパソコン(当時はまだパソコンとは呼ばれていなかったかな・・・。ポケコン?)に携わる仕事をしており、2人とも20代と若かった。
だから、取り上げられていたという気もしないでもないですが、いずれにしても、プレイボーイはかなりの先見の明があったと言ってよいでしょう。
西和彦は、今は、相当厳しい状況に置かれていますが、彼も怪しげな投資になぞ走らなければ、今頃は、孫正義と2人で、日本のネット業界を二分する勢力を築いていたでしょう。
そう言う意味では、わずか5〜6年前と立場は、全く逆転しています。
私自身、孫正義を認めざるを得ないという気持ちもありながら、やっぱりどこか「ひっかかるもの」があります。
まあ、ビル・ゲイツ負けず劣らずの「金儲けの天才」「億万長者(兆億長者?)」ということに対するやっかみが、根本的にあるからなのでしょうが、でもそれを除外しても、気になることがいくつかあります。
まず、日本版ナスダックを作ったことは素晴らしいことですが、あれはどこまで「フェア」といえるのでしょうか。
何となく、「てめえで、賭場を作って、胴元も博打打ちも全部やる」って感じがしてしまうんですよね。
そりゃ、胴元をやっているんなら、絶対に勝ちますよ。賭博で絶対に負けないのは、唯一胴元だけですから。
どうして、設立にだけ奔走して、後は人に任せるということができないのでしょうか?
彼の今の立場は、おそらくかつての「渋沢栄一」に近いのではないでしょうか。日本で最も多くの会社を興したという人に。
渋沢栄一が、「ごっつく儲けた」という話は、歴史では伝えられていませんが、一体どういう人だったのでしょうか。
日本で最も多くの会社を興して、最も多くの公開利潤を得た人だったのでしょうか。
彼は、これ以上儲けたって、そんなに使えるはずはないのだから、もうビジネスよりも、「世のため人のためになること」をした方がいいのではないでしょうか。
いや、少なくとも、「人のために、無償で努力しているという『イメージ』」を植え付けることは重要でしょう。
もう一つは、「インターネット財閥」を標榜していること。
なんで、この第2の財閥解体の時代に、「インターネット財閥」なのでしょうか。
我々「庶民」が、「財閥」という言葉を聞いて、「よいイメージ」を持つ人は少ないでしょう。
私は、「創業者のラッキーに乗っかって、いい想いをしているアンポンタン」という感じがしてしまいます。
たぶん、いい言葉がなかったのでしょう、これに関しては。
財閥でなければ、コンツェルンか。それでもイメージは一緒だ。「グループ」じゃ、自分の意図することが、世間に伝わらない。
なら、多少の誤解は招いても、「財閥」でいいか、と。
こんな意志決定が、彼の中であったのでしょうか。
でも、いずれにしても、彼が財閥を標榜した時点で、彼のことを好ましく思わない人が、少なからず発生し、それが真のインターネット関連の発展を阻害することにはなっていないでしょうか。
「インターネット遊牧民」
金のあるところを求めて、草原を彷徨い歩く。
そんな青臭いことを言っていた方が、「彼のファン」がついたと思うんですが。
今の彼のまわりにいる人は、「彼のおこぼれに預かって、儲けたい人」が大半なのでは?
金儲けのためのビジネスに走り始めた時点で、すでにバブルが始まったといえるでしょう。