PCオーディオに移行して間もなく1年になります。
デジタル音源再生において、CDプレイヤー以外にPCオーディオという選択肢が加わったことは、オーディオ界にとって大変
好ましいことだと感じています。最初に断っておきますが、私はCD音源の再生に限れば、回転装置とPCとの間に優劣は無いと考えています。
デジタルデータに記録された音楽信号をいかに正確にDACへ伝えるかは共通の課題であり、それぞれやるべき事をやれば、同じ境地に
立てるだろうと。ただし、やるべき事の中身には随分違いがあるのも確かです。そしてこの違いが、PCオーディオを選ぶ動機につながっています。
CDプレイヤー(CDトランスポート)はディスクの回転機構により、デジタルデータをデジタル信号に変換しています。
回転機構の音のランクを上げるには、安定動作、振動対策が必須で、どうしても物量投入型に
ならざるを得ません。
このアプローチのネックは、手段がメーカー依存になり、結果的に高価になることです。
例えばエソテリックの最高峰P-01はCDトランスポートだけで200万円超えです。
サプライヤーが限られていること、世間ではCD離れが進んでいることを考えると、頂上クラスの製品のコストダウンは期待しにくいところです。
iPodが出てきたとき、これでCDプレイヤーは不要になるだろうと
直感しました。しかし、単純な話ではありませんでした。PCは本来オーディオ装置ではなく、音を悪くする要素に溢れていたと言えます。
それでも先輩方が試行と錯誤の中で、音を良くする方策(電源、ハード、ソフト、OS、アクセサリー、転送方式など)を見出してきました。
得られた知見はネットや雑誌で共有され、サプライヤーも製品で応えるといった状況が生まれました。
ゼロベースから比較的短い期間に音が改善されてきた点は、特筆すべきだと思います。
両アプローチの違いはつまるところ、ユーザーやサプライヤーに対して開かれているか、否かということでしょう。それがコストの差、進化のスピードの差を
生んでいます。
この差はそのままPCオーディオの魅力でもあります。旧オーディオ目線ですと”安い=音が悪い”となりがちですが、PCオーディオの安さは
従来オーディオとは別次元で決まっているので気にすることはありません。音の改善に主体的に取り組める点もポイントです。
これはアナログの調整が面白い、難しいと言われていることと、本質的には同じだと思います。
2011年 6月15日