No。124

ブランド戦略にもいろいろある
2002.8.26
by Y.Tomizawa

1.ブランドライフサイクル


我が家の近くにもスタバができました。

土曜日に開店して、これは日曜日の午前中の状況。

まあ、開店2日目で行列を「作ってない」んだから、まあ安心したというか。(^-^;)
今時、スタバで行列作っちゃう街というのも、いかがなものかと思っていたので…。


場所をもう少し具体的にご説明いたしますと、東急東横線と南武線が交差する「武蔵小杉駅」の北口にあります。
http://www.mapion.co.jp/c/f?uc=4&pg=1&grp=starbucks&ino=BA372803

アザラシの「たまちゃん」で一躍有名になった「丸子橋」から、近い街です。
「武蔵小杉」という街自体、住んでもう10年以上になりますけど、あんまり発展性のない街というか、計画的な開発が全くなされていないというか、まあそんな街です。

何十年も前くらいは、工場の街だったようですけれども、今やそんな面影もない。
だからといって、ビジネス街として発展しているわけでもない。
住宅街としては、街が古いため、幹線道路が中途半端な広さ。
その上、路地が入り組んでいるため、宅地開発も虫食い的。

言ってみれば、日本中あちこちにありそうな街の一つなのかもしれません。
でも、そんな街にも、スタバが出来た。


スタバは、ユニクロとともに、この不況のさなか、伸びている数少ない会社の代表というイメージ。
ともに、少しばかり陰りが来ているともいわれていますが。
(実は、武蔵小杉には、ユニクロもちゃんとできております)

実際のところ、「こんな街」にまで出店してしまうと、「大丈夫なんかいな?」と疑問を持ってしまいますが…。
どうなんでしょう?

ということで、スタバの店舗展開がどうなっているのかと思って、サイトを調べてみたら、かなり驚きの事実が…。


スタバが1号店を出したのが、96年8月。
有名な銀座松屋裏のお店ですね。
私も、(たしか)まだタバコが吸えた頃に、入った記憶があります。
そう、たしか昔はタバコが吸えたような気がしたんですけど…。
で、ある日、麹町に出来たスタバに入ったら、「店内全席禁煙」の文字。
「えーっ!」とびっくりして、入ったことを後悔したことも覚えていますから、やっぱり第1号店は、最初「喫煙可」だったのではないですか。

ま、スタバのタバコ問題はいいとして、そこから100店目を出店するまで3年半かかっているんです。
ところが、そこから200店目までは、わずか「9ヶ月」しかかかっていない(!)。
さらに、300店目も、そこから同様に「9ヶ月」。
2004年3月末までに、「500店」を達成するそうですが、いくら何でも早過ぎる感じがしませんか。


で、他社はどうなんだということで、「ドトール」を調べてみたんですけど、残念ながら1号店から500店までの「詳しい達成月」は分かりませんでした。
そこで、「ユニクロ」「マクドナルド」の出店状況を調べてみると、こんな感じ。
【ユニクロ】
「100店目」2年7ヶ月(※)
「200店目」1年11ヶ月
「300店目」1年8ヶ月
「400店目」2年5ヶ月
「500店目」1年
※「ファーストリテイリング」と社名を変えてからの経過年月
【マクドナルド】
「100店目」5年5ヶ月
「200店目」2年10ヶ月
「300店目」1年9ヶ月
「400店目」2年5ヶ月
「500店目」1年8ヶ月
【スターバックス】
「100店目」3年6ヶ月
「200店目」9ヶ月
「300店目」9ヶ月

ユニクロの1号店は正式には、84年1月なんですけど、「ファーストリテイリング」と社名変更した時が、事実上の「開店」と判断して、そこからの経過年月数にしました。

どうお思いでしょうか、皆さん。
スタバはやっぱりちょっと「早過ぎ」ませんかねぇ。
マクドナルドが100店から500店あたりを過ごしたのが70年代後半から、80年代。
この時代と今の時代の店舗展開を、単純に比較することは、もちろんできないでしょうが、それでも…。

さらに、スタバは最近、持ち帰り専用店舗も増やしているようなので、マクドナルドやユニクロと比較するのは、妥当ではないかもしれません。
でもちょっと、「焦り」も見られるような感じがするんですよね。


「焦らなければいけない理由」は、はっきりしていると思います。
スタバは、幸か不幸か、今まさに渦中の「ナスダックジャパン」に「上場してしまった」(^-^;)。
それでなくとも、最近は投資家の目は厳しくなってきているといわれる上に、「ナスダックジャパン」ですから、「右肩上がりの成長」を期待されて当然なのでしょう。
ドトールなどに負けるわけにいかないのでしょう。
だから、ノンビリとした出店計画など許されない。

この「投資家が要求する成長水準」と、「ブランドの成長過程」がマッチしていれば問題ないでしょう。
でも、スタバも、「初期採用者」が支持する段階から、「後期採用者」に支えられなければ安定しない時期に入ってきていると思うんですね。
こういうタイミングの時は、一気呵成にいった方がいいのか、それともワンクッション置いて、ブランドの浸透を図った方がいいのか…。


プロダクトライフサイクルは、最近あまり話題の俎上に上らなくなったけど、「ブランドライフサイクル」は、もっと意識すべきだと思うんですよね。
しかも、「サイクル」になってしまって、衰退しては困る訳だから、尚更意識すべきではないでしょうか。

「ブームが落ち着きつつある時」でも、一挙にブランド浸透を図った方が、コストとしては安く済みそう。
普通の消費財だったら、在庫のリスクを考えながらも設備投資すればよいのでしょう。

しかし、スタバは「店舗」です。
「店舗」という「ブランド」を展開することは、何も「コーヒー」や「お菓子」を大量に作って売っていればいいのではない。
「従業員」という「ブランドの具現者」も大量に作らないといけないわけです。

この辺の指導体制が、万全なのでしょうか?
100店くらいの時と、500店を目指す企業規模は、ちょっと違うレベルになるはず。
それまでは、優秀な社員やアルバイトの個人能力に支えられて、従業員を教育してきたものが、なかなか浸透しなくなる。

実は、スタバの従業員教育が素晴らしいことは、飲食店の専門誌などでもかなり取り上げられています。
先輩が後輩を指導する風土が、アルバイトの中でも出来上がっているらしい。
今の成長を支えているのは、何も一過性の「スタバマニア」だけなのではないんですね。
しっかりした従業員教育があるからこそ、そこに心酔するマニアも発生する。
ここまでは、よくできた話です。


100店と500店。
単純に5倍です。
チェーンオペレーションに確固たるものがあれば、問題なさそうに思える。
でも、100という数字と、500という数字は、少し違います。

私は大学の頃、サークルの代表をやっていました。
普段は、50〜60人で活動をしています。
このくらいの数だと、一人一人が今どんな状態か「見える」んですね。
「あいつとあいつが仲がよい」とか、「あいつとあいつが、今ケンカ中」とか。
後輩からすると、同じような人がたくさんいるから、「目が行き届かない」と思いがちですけど、そんなことはない。
結構見えるものです。

でも、4月の新人勧誘の頃になると、話は違う。
こちらもあの手この手でカワイイ子を入れようとしましたので、どうしても人数は増える。
ピークでは、120人くらいいたこともありました。
そうなると、「見えない」んですね、一人一人の行動が。
「手に負えない」という方が正しいのか。

私の感覚値としては、80人くらいまでだったら、何とか「見える」のですが、100人を超えてくると、急に「見えなくなる」感じです。
この辺は、その人の「器量」によって変わってくるのでしょうけど、いつかお会いした会社の社長も「同感だ」とおっしゃってました。
その会社も、従業員数が100人くらいで、これ以上拡大すべきかどうか悩んでいたのでした。
「これ以上大きくすると、管理方法を変えなきゃ」と話していたのを思い出します。


100店の時にスタバに入社した人と、300店、400店となっている時に入社した人では、自ずとそのモチベーションにも違いがでるでしょう。
いや、違いが出て当然というべきでしょう。
それをどのようにしてクリアして、今のブランドイメージを維持しつつ、拡大していくのか。
スタバの発展は、ひとえにここにかかっているのではないでしょうか。
マクドナルドやユニクロよりも、ある意味、一段上のサービスを提供することを義務づけられているだけに、多店舗展開もそうそうラクではないはずです。

「フレンドリーなバリスタが醸し出す雰囲気」(スタバのサイトより)が、500店になっても維持できるのか。
これから、ちょっと何ヶ月かかけて、「スタバの新店」を集中的にみて、この辺の従業員教育をチェックしてみようと思います。



2.のどスプレーはブランド拡張の見本市


先々週からノドが痛いんです。
単なる夏風邪かと思ったら、その後、ノドの痛みだけ、ずっとひかない。
まあ、元々ノドが弱くて、さらに痛いのに、タバコは吸ってるせいもあるんですけど。(-_-;)

で、ノド用の風邪薬を飲んでも、効いている感じがしないので、「のどスプレー」でも買おうかと思いました。

これ、上の「スタバ」を撮影しようと思って、偶然カメラを持っていたんですけど、ドラッグストアでもつい撮影してしまいました。
だって、すごくないですか?


この「のどスプレー市場」は、「フィニッシュコーワ」が開拓したんですよね?
あの、「歌手の小金沢君」を、一躍有名にしたCMは、皆さん記憶に残っているでしょう。
その後の参入の順序は分かりませんけど、この店舗には「6社7種」の商品が並んでいます。

左から、
「のどぬーるスプレー」小林製薬
「イソジンのどフレッシュ」明治製菓
「フィニッシュコーワ」興和新薬(2品)
「ベンザブロックスプレー」武田薬品
「クリーンピットAZ」明治乳業
「浅田飴のどスプレー」浅田飴
です。

どうです、何か感じませんか?
元祖である「フィニッシュコーワ」については、興和新薬はコルゲンという風邪薬はあるけど、「フィニッシュ」なんていうブランドを持っていたわけではないから、純粋なる「市場開拓者」だった。

でも、それ以外の会社は、
「イソジンのどフレッシュ」
 →「イソジン」という強力な「うがい薬ブランド」のエクステンションを利用
「ベンザブロックスプレー」
 →かぜ薬ブランドで見事に再生した「ベンザブロック」を利用したエクステンション
「浅田飴のどスプレー」
 →のど飴ブランドとして強力なブランドを利用したエクステンション
「のどぬーるスプレー」
 →分かりやすいネーミングの小林製薬が分かりやすいネーミングで参入
明治乳業の商品だけは、よく分かりませんけど、それ以外はどれも「ブランドエクステンションの見本」みたいじゃないですか。
ある会社が開拓した市場に、「自社のブランド資産を利用」して参入してきた。
しかも、それぞれの「資産」が、また見事なまでに「強力ブランド揃い」。
さらに、その「資産の構造」が、「のど飴」→「うがい薬」→「風邪薬」→「医薬品」とキレイに階層化されていて、だまっていても企画書のイメージが浮かんできそう。
こりゃ、「フィニッシュコーワ」も大変でしょう。


ということで、私が悩んだ末に買ったのは、これです。

だって、やっぱり「ノドがガラガラする」といえば、このブランドでしょう?
何か「人にやさしい感じ」もするし…。

医薬品のブランドは、消費財のブランドとは、薬剤師の影響が無視できませんので、少し異なりますが、この「のどスプレー戦争」は、いつ頃から始まっていたのでしょうか。
「ブランド論を勉強したい人」には、スタバよりも分かりやすい市場だと思います。
この秋冬にCMも活発化してくるでしょうから、少し注目してみたいと思います。




3.ラグビーよ、どこへ行く


プロ野球は、個人的には開幕早々シーズン終了という感じで、狂乱のサッカーW杯も夢の跡という感じ。
アメリカのメジャーリーグはストライキだとか暢気なことを言っている上に、ゴルフのメジャー大会も終わってしまった。

日曜日の過ごし方に困るんですよね。
私にとって、スポーツ観戦は、生活の一部ですから、シーズン終了は本当に困る。
(まあその〜、横浜YBが普通に試合をしていればいいんすけどね(-。-;))

ということで、こりゃ「ラグビー」しかないかな〜と思って、日曜日にこんな試合をテレビで見ていました。

実は、それでも横浜YBの現実を直視しようと思って、「どんなもんかい今日は?」とスカパーを見たら…、案の定敗北ムード。
で、チャンネルを回してみたら、「おーラグビーやってるじゃん」と相成りました。

「ツムラ」が提供して、イギリスのクラブチームを招聘して、日本の強豪チームサントリーと戦うんですね。
このイギリスのチームは強豪で、さらに日本人の岩淵という選手が入っているので(非レギュラーだけど)、そんな経緯もあって、招聘されたのでしょう。

で、試合はサントリーが善戦して、最後はかなり差がつきましたけど、結構いい試合でした。
しかしそんな試合内容よりも気になったのが、これです。

お気づきになりますでしょうか?
ちょっと分かりにくいかも知れませんね。
では、もう1枚の写真もご覧ください。

タッチライン外側に、「お下げ髪」「スコート姿」の青Tシャツの女の子がいますよね。
何だか分かりますか?
これ「ボールガール」みたいです…。
ボールが、タッチラインを割って転がってしまった時に、用意していたボールを渡す役目。
サッカーでも、必ずいますね。
2枚目の写真では、ちょっと分かりにくいですけど、手にボールを抱えているのが見えます(ラグビーのボールは白い)。

皆さんは、どう思いますか?
今さら、「ラグビーは男のスポーツ」なんて、野暮なことはいわないつもりです。
でも、私としては、これにはちょっと抵抗したいな〜。


この前イタリアに渡った「中村俊輔」の何試合目かでも、ピッチに水着姿のおネエさん方と登場する姿が、テレビに映されていましたね。
まあ、あれは練習試合だから、ファンサービスでいいんだろうけど、でもこっちの試合は、いちおう「世界の強豪チームを招待」した試合です。

観衆も、わずかに「1万3000人」とはいえ、いちおう国立競技場を使っている。
そんな試合に「ボールガール」。
「女子マネ」なら分かるんですけどね。

サッカーのW杯では、選手がピッチに登場するときに、子供達と入ってきていました。
ああいうことを体験した子供は、絶対にサッカーが好きになるはず。
ラグビーでも、日本一を決める「日本選手権」の試合前に、「高校生東西対抗」をやって、「その場の雰囲気」を体験させている。

この試合でも、夜の試合だったため、小学生ラガーではなくとも、せめて高校生ラガーにボールボーイをさせればいいと思うんですよ。
日本で一番強い奴らや、世界最高レベルの選手達に、ボールを渡せる。
実際にラグビーをプレイしている少年には、貴重な体験です。
「観るだけラグビー派」の私だって、声がかかればやってみたいですよ。

なのに、なんでこんな女の子なわけ?
この子は、派遣社員?
それともツムラか、サントリーの社員か?
もしかして、コンパニオン派遣か?
どっちにしても、どうして「スコート」なの?
どうして「ジャージ」を着ないの?
いずれにしても、グラウンドで浮きまくっているぞ。


最近は、女性でラグビーをやる人が増えてきています。
現に、ついこの前、女性版ワールドカップも開かれていたりする。


まだ世界では、(男と同様)全然歯が立たないみたいですけど、同じ女性を起用するなら、こういう人たちにやらせればいいのに。
(あのボールガールが、ラグビープレイヤーの女性だったら、「スコート」は履かないでしょうなぁ)

ボールガールに、あんなファッションをさせているということは、あくまでも「華」としての起用なのでしょう。
別にフェミニストぶるわけではないですけど、それでなくとも衰退しているラグビーを活性化させるための策の一端が「これ」かと思うと、情けない限りです。
これじゃ、プロ野球開幕戦の始球式に、アイドルタレントを起用するどこかのチームと同じ感覚じゃないの。

こういうスポーツの真義を忘れたプロモーションを始めると、一瞬は盛り上がるかもしれないですけど、すぐに「飽きられる」と思うんですよね。
ジャニーズやモー娘。の誘惑に負けてしまった「バレーボール」がその典型でしょう。
(今のラグビーでは、一瞬すらも盛り上がらないかも…)

この前の、ゴルフの「全英オープン」でも書きましたけど、どうして日本はこういう「チャラチャラ系のプロモーション」が好きなのでしょう。
スポーツを正しく理解しようとしない、バカな男が考えそうな企画ばかり目白押し。
もっと、「歴史と伝統を重んじたプロモーション」をやって欲しいです。
先達を尊敬するようなプロモーションが、なぜできないのか。
過去の歴史を、疎んじるスポーツは、絶対に衰退します。

尊敬されるほどの先達がいないのか?
いや、そんなことはないはず。
日本の一部のスポーツは、戦前の方が、世界的には強かったのですから。
陸上しかり、水泳しかり、そしてテニスしかり。

日本がオリンピックで最初に「メダル」を取ったのは、実は「テニス」だったりするんですよ。
「金メダル」は、陸上の織田幹雄さんですけど、その前に「テニス」で「銀メダル」を取っている。
それだけでなく、国別対抗戦のデビスカップやウィンブルドンでも、世界の強豪と善戦していた。
でも、今では、そんなこと誰も知らない。
それは、テニス界が伝えてこなかったからという責任もあるのではないでしょうか。


ラグビーは、日本一を決めるはずの「日本選手権」が、すっかり形骸化してしまって、来季からはこれまでとは全然異なる形式で実施する模様。
今、あれこれ悩んでいる時なのでしょう。
どうすれば集客できるのか、どうしたら選手が増えるのか。

悩んでいるからこそ、こんなボールガールみたいなことも、「ついやってしまった」のでしょうか。
そう信じたいです。

おそらく、10年前のラグビー協会だったら、こんなこと絶対に許さなかったはず。
あの頃は、やたら儲かっていただろうし、「観客」のことなんて、まるで無視に近い状況だった。
それこそ「ラグビー」というスポーツが、一大ブランド化していましたから。
高飛車なブランド戦略ばかりしていたんですね。

「観客」を意識し始めただけでも、「進歩」なのかも知れないけれど、こういう進歩をするなら、私はもうラグビーは観たくありません。
いや、正直言うと、ボールガールくらいであれば、まだ許せるけど、これ以上スポーツを冒涜した破廉恥な進歩は、絶対にしないで欲しいです。


でも、意外とプレイしている選手達は、「おっ!」みたいな感じで結構喜んでいたりもするのかな…。