No。102
自分勝手か、十人一色か
2002.3.25
by Y.Tomizawa

先週あれだけ、「ソニー、ソニー」って、まるで「ソーリ、ソーリ」って感じで書いてあげたのに、ビデオデッキの調子が悪くなって、つい買ってしまったのが、「ビクター」製品。

だって、「サトウ無線」に置いてなかったんだもーん。(^-^;)
ま、消費者の商品選択なんて、こんなもんさ。

でも、最近は、ビデオデッキに「DVDプレイヤー」がついて、3万円台で買えるんですね。
全然知りませんでした…。

自分としては、1万5千円くらいのビデオデッキを買おうと思って、電器店に行ったんです。
で、目的のモノは、すぐにあったんですけど、あれこれ他のモノも見ているうちに、「おー、これDVDついてるじゃん」と思って、思考回路が一気にグルグル回り始めました。

実は、この前も書いたのですが、PS2のDVDが調子悪くて、しかも例の初期不良のこともあった。
(PS2のDVDの調子が悪いのは、クリーナーをかければ直るとメールいただきました。ありがとうございました<(_ _)>)
DVDプレイヤーも、だいぶ安くなったと聞いていたけど、いいヤツだと、まだまだ10万円前後するということは、知っていた。
それが、突然、視界に「ビデオとDVDで3万円」というのが入ってきた。
これは、そそられますよ。

ということで、パナソニック、東芝、ビクターの3社の製品があったので、そこから選ぶことに。

価格は、パナソニック3万6千円、東芝3万3千円、ビクター3万2千円。
店員さんのご意見を伺ったら、「パナソニックはビデオが5倍速で録れる」とのこと。
でも、私にとって、ビデオの録画時間の長さは、ベネフィットにならないので、パナソニックは価格も高いし、まず却下。

で、東芝とビクターの決戦となったのですが、これが見た目は、ほぼ同じだったんですよ。
もしかして、「東芝はビクターからのOEMか?」とも思ったんですけど、ビクターは松下傘下だからな〜とも思ったりして。

東芝製品は、「出力端子」が2つずつあることが、よかった。
一方、ビクター製品は、それが1つずつ。
両者とも、DVDプレイヤーでCD−ROMの再生ができるけど、ビクターの方は、それにさらに、MP3の音声も再生できるとのことが、よかった。
この点は、少し魅力だったけど、私としては、CDをテレビで「聴く」ということはしないと思うので、大したベネフィットにはならず。

ということで、最終的に決断したポイントは、何だと思います?
ふふふ、「リモコンのかたち」です。

東芝のリモコンが、ダサかったんですよ。
こう持ちやすいことを狙って、真ん中あたりがクビれていて。
ビクターの方は、超オーソドックスですけど、東芝より格好良かったんで、こっちにしました。

「購入理由」は、「前のビデオデッキが壊れた」「DVDプレイヤーの調子が悪い」など色々ありますが、「最終決定ポイント」は「リモコンのかたち」。
うーん、ユーザーベネフィットなんて、ホンマいいかげんなもんだ。
(なんて私だけ?)

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暖かくなってきたので、最近は休みの日に、ゴルフの練習に行っているんですが、一昨日の土曜日に行ったら、やたらと「空いている」んです。
ちょっと前までは。最低でも30分待ちが当たり前、凄い時は、60分待ちもあったのですが、何と待たずにできちゃった。
で、どうしてかな〜と思ったんですよ。
まあ、仮説ですな。

私の考えた仮説は、以下の通りです。

【ゴルフ練習場が空いている理由】
1)不景気だから、ゴルフにお金をかけられなくなった
2)年度末だったから、休日出勤などをしている人が多かった
3)お彼岸だったので、墓参りで外出していた
4)子供の春休みが近く、遊びに出かけていた
5)桜が咲いていたので、花見に出かけた
1)は、まあ誰でも考えられますね。
「ゴルフ」=「金持ちの遊び」=「景気が悪い」=「遊びにかけられるカネが減った」=「ゴルフをやらなくなった」という図式。
2)〜4)は、この時期特有の理由ということで、「練習場が空いていた」ということ自体、私の「勘違い」とも判断できること。
5)は、今年特有で、いきなり咲いてしまった「桜」のせいで、「お父さん、どっか花見に行こうよ〜」「オトーサン、ゴルフの打ちっ放しに行こうと思ったんだけどな…」「何バカなこと言ってんのよ!」という感じか。

でも、これ以外にも理由はあるでしょう。
例えば、
6)そもそもゴルフなんて流行っていない
7)私の通っているゴルフ練習場だけが流行っていない(人気がない)
なんてのも考えられる。
でも、ふと思った理由が、これ。
8)「花粉症」の人が多くなり、この時期の外出を控える人が増えた
どうでしょうね、この仮説。
こんな仮説を思いついたのも、「ゴルフを一緒にやる友人が花粉症のヤツがいる」、さらに、「練習場でマスクとサングラスをして、練習する人を見た」。
さらに、「花粉症が治ったという人を見聞きしたことがない(=花粉症発症者は減っていない)」、そして何と、「私自身が、先週末から何か花粉症っぽい」というのもあります。

私も、カミさんも、両親もみんな花粉症なんですけど、一人だけかかっていなかった。
「今年も何ともないな〜」と思っていたら、ついに先週末から、鼻水がズルズルになりはじめました。
たぶん自分が、こんなことにならなければ、8)の理由なんて思いつかなかったかも知れません。
「ゴルフ練習場が空いている理由」と「花粉症」。
かなりこじつけっぽいですけど、仮説を立てる時は、色々と多面的に見なければいけないということですね。

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で、日産マーチです。

今年3月5日に発売された新型の「マーチ」の累計受注台数が、1週間で2万5千台を超えたそうです。
そのニュースが、先週流れました。
この「マーチ」について、私が前のコラムで「これじゃ売れねえんでねぇの?」と書きました。

で、このニュースを聞いた何人かから、「売れてるみたいじゃん、マーチ」と指摘されました。
でも、この「売れているという判断」には、ちょっと意義を唱えたいんです。

今回のニュースの要旨は、以下の通り。

1)3月5日から発売したら、1週間で累計受注台数が2万5千台を超えた
2)月販目標は8千台だから、3倍強の売れ行き
3)ホンダフィットは発売10日で2万3千台だから、それを上回る勢い

そもそもですね、この「目標設定の数字」が怪しいですね。
実は、昨年発売されたホンダフィットの目標も「8千台」でした。
フィットがあんなに売れていて、小型車市場が賑やかになっているのに、同じ数字を目標値に置くということ自体、ウソっぽい。
これを読んでいただいている皆さんは、こういうところを鵜呑みにしないでいただきたいです。

仮に、日産が、「本当に8千台くらいしか売れないだろう」と思っていて、「こんなに売れてしまった」のなら、どうなるのでしょう?
ホンダフィットと同じように、大量のバックオーダーを抱えてしまい、「何ヶ月待ち」ということを、大切な大切なお客様に強いる訳です。
それでも、工場がフル稼働して、生産が間に合えばいいでしょう。
でも、もし間に合わないで、お客様を逃がしてしまったら、どうするのでしょうか?
今の日産が、こんな余裕のあること、できるはずがないですよね。

それに、今度のマーチのモデルチェンジは、国内販売で低迷する日産が、「活路を切り開くべきクルマ」のはず。
そんな重要な「国内戦略車」なら、絶対に市場調査をして、「どのくらい売れそうか」という予測はしているはず。
市場調査はしていなくても、何らかの根拠に基づいて、「これくらいは売れるはず」という予測をしているはず。
で、前述のように、トヨタがヴィッツやファンカーゴで賑やかにした小型車市場を、ホンダフィットがさらに拍車をかけたというのに、市場分析をした結果、はじき出した数字が、「フィットと同じ」なんてことあるはずがない。
いくら何でも、腰が低すぎません?(^-^;)

しかも、あれだけ赤字を出していた会社を、財政的には、あっという間に立て直したゴーン氏が率いているんですよ。
これしか売れなかったら、リバイバルプランも達成できないのではないですか?
ゴーン氏が、こんな「マヌケな目標設定」を、大まじめに承認するとは、到底思えません。

何年か前から、こういう風潮はあります。
「売れ行き好調!」ということを、マスコミに取り上げて欲しいために、当初の販売目標を低めに設定するわけです。
すると、マスコミ側も、「当初目標の○倍の受注」とか、「予想を超える売れ行き」と書きやすいわけですね。
最近は、マスコミもラクして記事を書きたい記者が多いらしいし、企業側もマスコミに取り上げて欲しいから、こういうことをやるんです。

このマーチの売れ行きについて、ちょっと調べてみたら、予約は、今年の1月からしていたようですな。
1月から受注開始していたんなら、このくらい売れるでしょう。
だから、「発売1週間で、これだけの予約が殺到した」のではなく、2ヶ月くらいかけて、一生懸命営業した成果によって、「フィットと並ぶ予約を勝ち得た」ということなのでしょう。
でも、こんな浪花節的な話では、記事にはならない。

さらに、日経(か朝日)に、「女性が買っている」という記事もありました。
たしかに、あのデザインなら、男性よりも女性が買うのもうなずけます。
でも、これって、「流行」=「女性に人気」という、ちょっとステレオタイプ的発想。
だいたい、10年間売ってきたクルマなのだから、それなりにユーザーもいるわけで、その人達に、「この機会に乗り換えませんか」と営業すれば、そりゃ少しは成約につながるでしょう。

先週取り上げられたニュースの中に、もし「ヴィッツやシビックからの乗り換えが多い」との記事があったら、私は素直に敗北を認めました。
でも、そんなことはどこにも書いていなかった。

トヨタ、ホンダ、両社のユーザーを切り崩すことこそが、今の日産に求められることのはず。
なのに、「単に売れました」「フィットより勢いはあるみたい」「女性にも人気」だけでは、それは早計というものでしょう。

日産には、マーチの「社内自主目標」があるはず。
日産が、「もう一つの目標数字」があるかどうかを判断するのは、わりと簡単だと思います。
それは、4月もしくは5月の「販売台数」の数字を見ること。

ホンダフィットは、バックオーダーを大量に抱えながらも、月販1万8千台前後くらいしか供給できなかった。
日産の工場がいくら稼働しても、だいたいこの程度のはず。
(だって、フィットと同じ目標数字だったのでしょう? とイヤミっぽく)
だから、来月以降に、マーチがいきなり「2万台以上売ってきた」のなら、これは「相当怪しい」と判断できるでしょう。
工場の設備も、それなりの(そのくらいは売れるという)準備をしていたということ。

それに、この2万台という数字は、もしかすると、カローラを抑えて、車種別トップになれる可能性を秘めた数字のはず。

「マーチ、カローラを抑えて、日産悲願の首位!!」

日産に「経営企画担当」がいるのなら、ここまで読んでいなくては、ウソです。
(だって、私でもこのくらい想像できるんだし)

ホンダフィットは、半年で10万台売ったようです。
マーチが、半年で10万台売れたら、私の視点が誤っていたことを認めます。
でも、そもそも小型車市場が、そんなに大きいのかな…という疑念もあります。
その一方で、「セダンユーザー」が、ますます少なくなるという可能性も考えられます。
「だって不景気」だし。(^-^;)
やっぱり少しでも燃費のいいクルマの方が、いいことはいいでしょう。

マーチが10万台売れる可能性は「ある」と思ってます。
でも、それは旧マーチからの乗り換えでなく、また日産内でのカニバリでもなく、他社を切り崩してまで売れるだけのパワーは「ない」と思っています。

その「パワーのなさ」を、「予想外の大ヒット」→「販売車種別ランキングトップ」という相乗効果で補って、どこまで販売を伸ばせるか。
私は、こういう視点で「マーチ」を見ています。

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消費者は、自分勝手な選択をするかと思えば、マスコミの情報に、あっさりと流されることもある。
だから、今時のマーケターは、「マスコミの情報」にも注意を払わなくてはいけません。
マスコミ情報を鵜呑みにすることなく、「真実は何なのか?」を見極める目も必要になってきます。

よく、「人の心は十人十色」なんて言いますけど、マーケティング的には「十人一色」なんてこと、よくあります。
でなければ、「一人勝ち現象」は説明できない。
(そういや、バブルの頃は、「一人十色」なんてことも言われましたけど…ね。)

日産マーチが「売れる」ためには、消費者を「十人一色」にしなければいけない。
「自分勝手」な消費者を、「マスコミ情報」によって、どこまで染められるのか、私の結論は、いずれにしろもう少し先です。