No。054
「いいちこ」のブランディングと紙パ
2001.5.28
by Y.Tomizawa

今回は難題に挑戦してみます。「エコロジー時代のブランディング」とでもいいましょうか?題材は、焼酎の「いいちこ」(三和酒類)です。

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ところで皆さんは、カッコいいですよね〜いいちこ」飲んでますか? 私は最近肝臓の調子が悪いので、ちょっと控えておりますが、そうですね、ここ10年くらいずっと飲んできました。(^-^;)
で、「いいちこ」のポスターはご存知でしょうか。物凄く格好いいポスター。右の写真が最新のものです。営団赤坂見附駅で撮影しました。
かっちょいいでしょ。いわゆるひとつの、「いい感じ」でしょ?

「いいちこ」は、発売当初から計算されたブランド形成が行われてきました。
ちょっと調べ切れませんでしたが、たしかどこかの大学の有名な先生が監修されているんですよね。デザイナーも有名な方だったか・・・(この辺の取材の甘さが、コラムを脱しようとしない原因でもあります。だって面倒ですもん)。

季刊いいちこ」という小冊子も発刊しており、私も一度読んだことがありましたが、その難解さに、すぐ読み捨てました。
で、今改めて、三和酒類のいいちこのサイトを見ると、すごいことになってます。リンクは貼りませんのが、皆さんも是非一度ご覧ください。
その中の、「季刊いいちこ」の発刊趣旨の文章が、以下のようにあります。
現代産業社会のなかで、見えなくなりつつある固有の文化(そこに生きる人々をとりまく自然や精神)。これをもう一度掘り起こし、見直し、産業社会とのバランスある関わりをとらえてゆく。言い換えるなら、わたしたちがいま「生活する文化」とは何か、をしっかりと見据えてゆくために、わたしたちは86年から「季刊iichiko」という文化誌を発行しています。
(三和酒類サイトより飲用、じゃなくて引用)
皆さん、1回で理解できました? 私は理解できませんでした。(^-^;)
難しすぎるよ、これ。
さらに、掲載されている論文が、ちょっと古いものですが、タイトルが以下のとおり。
「地球環境戦略研究の哲学」〜場所主体の環境設計学へ〜
................Excerpt from the book"iichiko international No.8"(1997/2)
どうです、もう「参りました<(_ _)>」って感じでしょ?
でも、今日の本題は、「いいちこ」のブランディングを賞賛することではありません。

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何週間か前に飲み干したのがあってよかった・・・リサイクルに出すよちゃんと!これだけブランド形成に熱心な「いいちこ」ですが、私が飲んでいるのは、コレ。そう紙パックです。
ずーっと一升瓶で飲んでましたが、今住んでいるマンションでは、一升瓶のリサイクル回収をしてくれないみたいなので、紙パにしております。

で、問題は、「このいいちこ紙パックによるブランド形成とは?」ということです。
上の写真(ポスター)とこの紙パック。やっぱりちょっと違いますよね。
「びん」だと、「冷たさ」も感じられるし、「水滴」などともよく合い、いわゆる「シズル」が出しやすい感じがします。
それに引き換え、「紙パ」はちょっとねぇ・・・。やっぱり「びん」には劣るでしょう。

三和酒類でも、紙パを発売するべきかどうか、検討されたのでしょうか。
ちなみに、焼酎乙類を発売しているメーカーで、三和酒類は22.8%のトップシェア(99年度)を占めています。
上位10メーカーのうち、二階堂酒造以外は紙パを出しているようですが、三和酒類の紙パ比率は20%で、実はトップ10中最も小さいです。
第2位の雲海酒造は、65%、第4位の薩摩酒造は39%。他のメーカーはいずれも30%を超えていますが、三和酒類だけは20%。
これをどう見るべきか。

焼酎ユーザーの感じるベネフィットは、おそらく「燃費効率」でしょう。少なくとも私はそうです。
アルコール分と価格の効率を考えると、数あるアルコールの中で、最も効率がよいのです。
(だから、洋酒が減税されたりしたんですよね?)
ということは、「ブランド形成の意味」とは、どういうことになるのでしょうか・・・!?
何のために、「ブランドイメージ」を作り上げているのでしょうか。

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そもそも、いいちこが訴求しているシーンイメージで、いいちこを飲んでいる人は、おそらく、おそらく誰もいないでしょう。
ワインやカクテルだったら、海が見えるホテルのテラスなんか、洒落て飲んでいる輩もいるかも知れませんが、大自然の中で、グラスにいいちこを注いで飲んでいるヤツ・・・、こりゃ絶対にいないでしょう。

ということは、訴求しているイメージは何のため?
ポスターに使われている900mlびんを、家庭で飲んでいるのなら、「好イメージの波及効果があるので・・・」などと理論づけることはできますが、今後、紙パシェアが上がってきたら、どうなるのでしょうか。

「びん」と「紙パ」のイメージの連動
要するに、これがあるのかどうかが、焦点となりそうです。
例えば、高級シャンプーの詰め替え版なども、同じ問題を抱えているのでしょうか?
もっと考えれば、「じゃあシャネルの5番の紙パ版は成立するのか」ということもありそうです。

たぶん、シャネルの5番の紙パは成立しなくても、「いいちこ」なら成立しそうですね。
「高級でなくてはならないブランド」と、「高級である必要はないブランド」の違いなのでしょうか。
今のところ、びんと紙パのイメージは連動していないでしょうが、今後、紙パシェアが上がってくれば、自然と連動してくるでしょう。
人間の感覚なんて、そんなものだと思います。要は、「慣れ」の問題。
ちょっと安易すぎる結論か・・・。

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んー、ちょっとまとめ切れないですが、いずれにしても、今後、いいちこのポスターに「紙パ」が登場するのかどうか、ということが注目でしょう。三和酒類がどのような判断をされるのか、注視してまいりましょう。

でも、「ポスターはあくまで『びん』で、でも売上シェアは『紙パ』」、もしかしたら、これがブランドの究極のあり方、役割なのかも知れません。
「売上実態とブランドイメージが乖離していても、消費者は買い続けてくれる」という・・・。

なんかよくまとまっていないので、あとで書き直すかも・・・