No。053
DDIポケットの戦略はこれでいいのか?
2001.5.21
思いっきり、怒りがこみ上げているようなタイトルですが、事実そうです。私は、DDIポケットのPHSカード電話の「超スーパーヘビーユーザー」なんです。
右の写真をご覧ください。これまで買ってきたピッチカードの数々。
SII(セイコーインスツルメンツ)のだけ、こんなに買ってるんですから、一度もP−inに浮気することなく・・・。
左下の赤いのが、私にとって初代の「MC−P110」。いわゆるTwoLINKというやつで、電話をかけられる先を2カ所(最終的には3カ所になっている)に限定して、その分、基本使用料を安く設定してあるものでした。
しかし、電話をかけたい先が、3カ所では足らなくなり、買い替えたのが、右下の青の「MC−P100」。型番からわかるように、こちらが、赤よりも先に発売されております。こちらをずっと使っておりましたが、段々と、モバイルでのメール通信で、重いファイルのやり取りも増えてきて、64K対応が欲しくなり買い替えたのが、上の緑の「PC−200」。
どうです、この貢献度。
すでに「カードH”」が出ていますが、今のところ、これで不自由はしておりません・・・。
さらに言えば、月額使用料金が常に3万円前後。データ通信だけでなく、JRAの投票、競輪の投票、競艇の投票・・・、はっきり言って、DDIポケットの経営は、私が支えていると自負しています。感謝状の1枚も欲しいくらいです。
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というところ、先日新聞に、「DDIポケットが8月から月額固定料金導入」との報道があり、私は正直、「ようやく決断してくれたか・・・」と思いました。
しかし、「DIME」によれば、「64K通信は月額約6000円払うと25時間可能」「32K通信は月額約7000円で使い放題」とのこと。
「何じゃい、この戦略は!?」と正直思ったのが、今回のこの怒り半分のテーマとして取り上げた理由です。
怒りを感じたのは、もちろん「64K通信が月25時間まで」と制限されていることです。
月25時間ということは、「1日1時間つないだら、もう終わり」じゃないですか。この「制限」に何の意味があるのでしょうか?
DDIポケットとしては、ユーザーとしては、「64Kに殺到されて回線がダウンしても困る・・・」というところなのでしょう。
でも、(おそらく)「ドコモよりも早く月額固定制は導入しなくてはならない」という経営的な焦りと、「回線ダウンによるイメージダウンだけは絶対に避けたい」という技術的な焦りとの着地点が、この微妙な「制限」だったのでは?
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プレミアム的価値のある商品・サービスは、利用者を「制限」をするなり、「高価格」にすると考えるのは、当たり前のことです。
「高級ワイン」が、「高級」でありえるのは、基本的には「希少価値」によって、飲める人の「制限」が加わるから。それが「高価格化」を招いているはずです。
一流ホテルのスイートルームが高価格であることは、当たり前。
広い部屋やゆったりした間取り、高級家具などの空間演出もあるでしょうし、高付加価値のサービスもあります。
でも、このような「公式」は、通信サービス業の大半には「あてはまらない」と思います。
今の「通信サービス業」は、このようなことをやっていては絶対に勝ち残れません。
なぜでしょうか?
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プレミアム価値のあるサービスが成立するということは、そこにユーザーの「相場感」が成立しているからです。
(相場「観」という言葉が一般的のようですが、ここでは「感覚」ですので、「相場感」としております)
帝国ホテルのスイートルームが「30万円」と聞いたら、その時点で、まずユーザーは限られるでしょう?(実際にはいくらか知りません)
これは、普通のホテルが、シングルなら、せいぜい1万円という相場感を多くの人が持っているから、成立するのです。
そういう相場感を持っている人は、帝国ホテルのスイートには泊まろうと思わないはずです。
(もちろん、こんな相場に関係のない人は、関係なく泊まるでしょう・・・。在りし日のジョン・レノンとか!)
このあたりの「相場感」とは、ちょっと小難しく言えば、「潜在意識下でのセリ」とでも言うのでしょうか。
どんな商品・サービスでも、市場(いちば)のような「セリ」の形式を取るものではない限りは、「価格」が提示されて、それを消費者が認識したときに、この「潜在意識下のセリ」を行っているはずです。
確かに、今思えば、「64Kで、ワイヤレスで、通信ができるサービス」は、「プレミアム的価値がある」と言えるでしょう。
でも問題なのは、一般の人が、64Kと32Kのスピード感の違いを理解できるとは、思えないことです。
もし、この違いを多くの人が認識しているのなら、この「プレミアムサービス」の意味は出てくるでしょう。
でも、わかっていないでしょう、どう考えても。
だいたい、使っている人が少ないから、DDIポケットも経営がうまくいっていないんだから、そんなことわかるでしょうに。
だから、ここでは「セリ」は行われていないと思います。
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正直言って、携帯・PHSユーザーの大半は、使い始めてせいぜい2〜3年。
おそらく、通話料について、「1ヶ月あたり支払ってもよいと思う金額」は、何か別の支払い額と比較しているはずです。
私だったら、「飲み代」なんですけど・・・。女性だったら、「洋服代」とか、「化粧品代」なのでしょうか?
違いますか?
そうやって、自分なりの相場感を、何とか作り出して、自分を納得させてませんか?
だから、毎月の携帯使用料に1万円以上払うことに、多くの人が納得できる価値基準(=相場感)は、まだできていないと思います。
それに、今の通信業界の製品は、あっという間に機能が進化していきますよね。
つまり、昨日までの製品が、あっという間に陳腐化してしまうということです。
ついこの前まで、3万円で売っていた携帯電話が、新機種が出たら、あっという間に0円になってしまうじゃないですか。
こんな業界に、「相場感」はできないですよ〜。
だから、今の通信業界では、プレミアムサービスは成立しないと思います。
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で、32Kが使い放題で7000円。64Kが25時間で6000円。
一見すると、「価格は、64Kが安いから私はこっち」と思う人と、「私は使い放題がいいから32Kにする」と分かれると思うでしょう。でも、世の中そんなカンタンではないはずです。
PHSカードを使うのは、そもそもパソコンの超ヘビーユーザーでしょう(≒私とか(^-^;))。
おそらく、1日中つなぎっぱなしにできるのなら、そうしたいと思っている人種。
ブロードバンドほど高速でなくてもかまわないから、「つなぎっぱなし」に価値を見出す人種。
だから、どっちがよいかもよく理解できず、「誰も手を出さない」と思います。
もし、売れるとしたら、32Kの方か・・・。
DDIは、どういう条件設定をすればよかったのでしょうか?
もし、私が企画担当だったら、まず、妙な「時間制限」は絶対につけません。
ヘビーユーザーなんだから、時間制限を超過して、追加料金を加算されることは、確実にマイナス要素です。
その一方で、「価格」は、とりあえず「1万円未満」であれば、関係ないと思います。
「1万円未満」というのは、「9999円以下」」ということ。つまり、4桁であれば、PC超ヘビー層は、あまり差異を感じないでしょう。これで十分だと思います。
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今でこそ、モバイル環境では「高速通信」の64Kも、あと2〜3年もすれば、低速通信になっている可能性もありえます。
そもそも、サービス自体なくなっている可能性もあるでしょう。
だいたいブロードバンドで、100M(メガ)か10Mかで有線ブロードとNTTが喧嘩している時に、いくらワイヤレスとはいえ、所詮64Kですよ。
ここはあえて、DDIポケットさんに現実を認識してもらうためにも、「0.064Mbpsサービス」と表記してみましょう。
どうです、誰もこんなサービス使おうと思わないですよね。不思議なもんです。