No。029
女性の視点
2000.4.26
今発売されている「Forbes」に、元フィリピン大統領のコラソン・アキノと宮崎緑の対談が、「女性の視点〜」という感じのタイトルで行われているようです。
「ようです」というのは、電車の吊り広告で見かけただけで、実際に記事を読んだわけではないからです。
で、ふと気になったのは、この「女性の視点」。
そう言えば、最近、とんと聞かれなくなったのに、突然の登場です。
だいたい、この「女性の視点を○○に!」と言われる時は、「政治」とか、場合によっては「会社経営」とかに新風を吹き込もうとする時が多いように思います。
要するに、旧態依然とした体質で、にっちもさっちもいかなくなっている男性社会を、女性ならではの目線で見直して、改革の筋道をたててくださいという感じでしょうか。
でも、何となく、最近では変な感じもします。
元々は、市川房枝さん以来の、女性の地位向上のための運動も背景としてあるのでしょうから、軽々しく言えない部分もありますが、そこはそれ、最近はウーマン・リブなんていう言葉を使われることなど、絶対にないのだから、とりあえずこの問題は、横に置かせてもらって話を進めましょう。
※昨今の若い男性の情けなさを見るにつけむしろ「男性の地位低下改善運動」こそ起こってしかるべきでしょう。
折しも、大阪に続いて、熊本にも女性知事が誕生しています。
土井たか子が党首になった時は、「ブーム」という感じもしましたが、最近では、橋本聖子や野田聖子など、政争の具に使われる女性政治家(もどき)も別に物珍しい気持ちも起こりません。
こと政治の分野では、総理大臣が誕生しない限りは、「女性」ということでの新鮮味は出ないでしょう。
ビジネス社会でも、インターネットの進展により、以前に比べて起業しやすくなったためか、女性起業家もあまり真新しさがありません。
最近では起業家よりも、コンサルタントやアナリストなど、評論家の分野でも、女性はあたりまえのような気がします。
だいたい、女性自身が、「女性の視点」なんていう言葉を実感しているのでしょうか?
巷間言われるところの「女性の視点」って、要するに、「男が気付いていない(忘れてしまった)生活者としての視点」ということですよね。
例えば・・・
「え〜、このたび課長に昇進されたA子さんには、女性ならではの視点で、我が社を変えていただきたく思います」
「私も、この会社のいい部分や悪い部分を、女性ならではの視点で見直して、変えていきたいと思います」
みたいな使われ方をされていませんか。
別に、会社のみならず、政治や経済の不具合を改善するのに、男性も女性もないはず。
仮に、ある女性が、「女性ならではの視点」で何かを変えたのだとしたら、それは、彼女が女性だから変えることができたのではなく、単に、「その人が優秀だったから変えられた」のではないでしょうか。
いや、そうはいっても、一般社会では、まだまだ女性が不等に扱われていることが多いことも事実でしょう。
ですから、男に混ざって、なお活躍されている女性は、相当な努力をしていることは認識すべき事でしょう。
でも、それを承知であえて、今時「女性の視点」などというネタを持ち出すこと自体、間違っていると思うのです。
もうこれからは、男も女も関係なく、「生活者の視点」という言葉に統一した方がいいのではないでしょうか。
一般に、女性の視点うんぬんが語られる時には、そこには何となく、「女をうまく操らんとする男の影」を感じざるを得ません。
逆に言えば、女性が全くいない場で、そういうことが語られているというか。
ということで、件の「Forbes」の編集部には、きっと女性編集者が一人もいないのではないのかな〜、と思った次第です。
これから、本屋に行って、確認してみようっと。