No。025
がんばれAIR DO
2000.3.30
by Y.Tomizawa

先ほどの、テレビ東京ワールドビジネスサテライトで、「エアドゥが危ない」というテーマで、取材のような、半分宣伝のような、妙な取り上げられ方をされていました。
確かに、スカイマークと同様、かなり危ないみたいですね。

エアドゥの便の前後だけ、JALANAが値下げをしているという、露骨な新規参入企業つぶし。
そりゃ、JALやANAだって、だまって手をこまぬいて、みすみす商機を逸するわけにもいきませんから、これは、あくまでも消費者が選んであげればいいだけのこと。
エアドゥを、判官贔屓みたいな論理だけで生かすことは、意味のないことだと思います。

ただ、間違えてはならないのは、航空業界は許認可によって成り立っている業界だということ。
JALやANAも、規制に守られている部分もあるわけですから、それを開放せずして、嫌がらせはいけません。



番組の中で、エアドゥ自身が課題として、「認知度が低いこと」をあげており、その打開策として、「浜松町にアンテナショップ(みたいなもの)を開いた」と言っていました。

「浜松町?」
どうして浜松町?
その理由は、誰でも考えられます。
羽田へのモノレールへの玄関口だからでしょう。
ここならビジネスユーザーも、一般ユーザーも利用する場所だから、文句ないはずです。

しかし、皆さんは、「浜松町」っていったことがあります?
いや、たぶん「通過したことはある」と思うんですよ。
もちろん山手線・京浜東北線も通ってますから。
では、「浜松町」の雰囲気って、ご存知ですか?



実は、私の勤める会社が、以前、浜松町にあったからわかるのですが、あそこの駅は、典型的な「乗り継ぎ駅」です。
JRからモノレールへの。
だから、おそらくJRの乗降客数は、山手線の駅の中でも、それなりの順位なのでしょうが、では、その数の人が、街に金を落としているかというと、もちろんそんなことはありません。

駅や貿易センタービルから一歩出ると、非常に寂しい街です。
今は、例の「大江戸線」の地下鉄工事をしているため、何やら騒がしいですが、それも工事の音だけ。
街に金を落としているのは、そこに自分の会社がある人だけ。
つまり、一見すると、非常に多くの人がいるように見えるけれども、実は、単に通り過ぎているだけ。

だって、皆さんが仮に、東京駅あたりある会社に勤めているとして、札幌へ出張しなくてはならないとして、「時間をつぶす」のに、通過駅・乗り継ぎ駅である「浜松町」で一服しようと思いますか?
私だったら、羽田まで行ってから、一服します
※路線がイメージできない方のために=東京駅から羽田へ行く経路は、JR山手線で浜松町まで行き、モノレールに乗り換えるのが一般的です。これ以外では、「バス」「タクシー」などの利用になります。


だから、この「浜松町のアンテナショップ」は、たぶん利用客も少ないのでは。
マーケティング的には、「飛行機を利用する人が確実にいっぱいいる」「ビジネス客も旅行客も多い」という根拠なのでしょう。
でも、これは大きな勘違い
繰り返しますが、浜松町の駅ビル・貿易センタービルで、いかにも出張の人、旅行客が、大挙時間をつぶしているのを見たことがありません。
とはいえ、「そこそこの効果」はあるでしょうが、これは無駄のはず。

「知名度を上げる」のが目的であればこそ、「今まさに飛行機に乗ろうとしている人」に「エアドゥです」といっても、その人が乗る便は決まっているわけですし、そもそも飛行機を利用しているのだから、エアドゥ自体の認知を、「そんなところで地道に稼いでも意味がない」でしょう。



マス広告を打てということは無理なのでしょうから、では、アンテナショップを開くとしたら、どこがよいのでしょうか。ちょっと考えてみます。

新宿・渋谷が理想なのでしょうが、仮にテナント料が厳しければ、私なら、次の候補地として、お茶の水や高田馬場などの「学生街」を推薦します。
理想としては、お茶の水というよりも「神保町近辺」でしょう。学生ばっかりではなく、サラリーマン・OLもそこそこいるという意味でも。

そもそも、ビジネスマンは、行動に制約があるし、最近ではアンテナショップになど行かなくても、本当に安い航空運賃で出張したいのなら、時間の条件さえ合えば使うはずです。だから、ショップなど意味はない。
では、旅行客を狙うのかといっても、どこに行けばいいのかわからない。

そこで、学生の卒業旅行などに、確実に利用してもらうために、学生街にショップを開いて、知名度を上げる手段とします。
もともと、アンテナショップを出すということ自体、即効性を求めるよりも、長期的な効果を求めるためにやるのですから、現状を考えると、本末転倒という気もしないでもないです。
ただ、「ショップを開く」ということだけを考えるのなら、長期的視点に立って、「学生時代からファンを増やす戦略」を取るということが重要なのではないでしょうか。



といっても、やっぱり問題は、「ショップ」うんぬんの問題ではないでしょう。
私も、先日、札幌へ出張しましたが、エアドゥを利用しようとすら(想起することすら)しませんでした。
要するに、「使う理由がない」んですね。

私だったら、すぐにマネされるのを覚悟ですが、「バージン航空」のように「全席ビジネスクラスのシート」にします。
JASが、「レインボーシート」「スーパーシート」などをやっていますが、あれはいいものです。
だって、「エコノミー」のリクライニングって、事実上意味ないじゃないですか。
誰がどう考えても、後ろの人に迷惑だなという感じです。

それが、レインボーシートになると、「ま、少しくらいいいか」という気になるスペースがあります。
といっても、こんなアイデアでは、すぎにマネされますね。
とはいえ、大手を同じ土俵にあげたのですから、あとは「元祖はこっち」「真に経営努力しているのはこっち」「本当に安いのはこっち」ということを、次の段階でPRしていけばよいのではないでしょうか。



いずれにしろ、私は、知名度よりも、エアドゥのベネフィットは何なのかを、もう一度考えるべきだと思います。
「安さ」だけではなく、それに伴う「快適さ」をベネフィットとしない限り、新たな顧客開拓は、絶対に無理と言ってよいでしょう。
東京の人が、「使いたくなるベネフィット」をつけなくては、利用する価値はありません。