今、築地市場の移転騒動が持ち上がっている。
現在の施設が一部老朽化しており、また、一部手狭になってきているらしい。
そこで、豊洲近辺の埋め立て地に、移転しようというのである。

その推進派と反対派が、静かに盛り上がっているようだ。
石原慎太郎に決定権があるようだが、彼は移転させたいらしい。
しかし、築地に慣れ親しんだ人は、当然反対する。

年の瀬のいつだったか、小渕首相が築地市場を訪れたことをご存知だろうか。
別にまた、「カブ上がれ～」とやるために、訪れたわけではない。
築地に関係のない人が考えれば、「なんで？」だろう。それでなくても混んでいるのに、警備や護衛でますます混雑・渋滞するだけではないか。
しかし、これには当然深い意味があった。
築地がある中央区選出の国会議員、深谷隆司（通産大臣だったっけ？）の画策である。
彼も、自民党の古株として、移転反対という地元の期待に「首相を担ぎ出す」という「最高のイベント」で応えた。
果たして、どれだけ効果があったのかは、さておいて、色々と世の中あるものですな。

個人的な意見としては、「移転して欲しい」。
なぜなら、「路上駐車」「晴海通りの渋滞」と、近くに営業拠点がある会社としては、あまりいいことはない。
営業に行くときの時間が読みにくいこと、このうえないし、夜９時をすぎれば、人の気配がなくなる街というのも、会社勤めには寂しい。

だいたい、今さら、「築地経由の魚が新鮮だ」なんて思う人は、いないでしょう。
今、本当に新鮮な魚は、水揚げ港から直送されてますって。

今回のテーマは、新鮮な魚を求める場所の話ではない。築地市場の移転騒動に絡んだ話である。
まず、右の写真を見て欲しい。

その、市場移転に反対する会の、横断幕である。
何か気にならないだろうか？

コピーが、「（現在地での再整備を！）築地市場移転断固反対」。
そして、会の名前が、「築地市場移転に断固反対する会」。
思いっきり、カブっているではないですか。

会の名前を入れたばかりに、肝心のコピー（意思表明）が「やや平体気味」にもなってしまっている。
どうせ、会の名前とコピーがかぶっているのだから、どっちかひとつにして、その分、コピーの文字をもっと大きくすればよかったのに、と思う。

たかが横断幕である。しかし、その裏が見えてこないだろうか。
ちなみに、私はここまで考えた。

まず、彼ら（反対派）は、「横断幕を作って気勢を上げよう」と考えた。
幸いにも、移転推進派は表だった行動はしていない（のぼりを作るとか、ポスターを貼るとか）。
なら、推進派の機先を制する意味でも、ここは自分たちの意思表示をしようじゃないか、と。

横断幕に書くコピーは、もちろん「市場移転に反対」というコンセプトを盛り込む。
自分たちにとって、築地から豊洲なんかに移転することは、経営の根幹を揺るがすものであると考えているから、当然「断固反対」である。
なら、コピーは、「築地市場移転断固反対」でいいだろう、となった。

ここで彼らは、「はて？」と思った。
我々の、この「反対派」の名前を決めることを忘れていたのである。

古くからある市場のことであるから、築地市場全体の団体は、もちろんあるだろう。
例えば、「築地市場経営者評議会」とか、「築地経営推進協会」とか、たぶんあるだろう。
しかし、市場関係者が分裂している今、これらの名前を使うことはできない。
では、新しく団体名を考えなくてはならない。

「築地市場の未来のあり方を考える会」、これでは弱すぎる。
「築地市場移転反対期成同盟」、格好良いが、どこか古臭い気がする。
「The Organization Of Tsukiji Market」、英語を理解できる人が少ないのでダメ。

思案六法。
ここで、自分たちの会の意義を改めて考えてみた。
「自分たちは、市場が移転することに反対しているのではないか」
「ならば、自分たちの意思表明をすればいいのではないか」
「会の意義を、誰にもわかりやすく説明できるものでよいのではないか」

そこで、まず「築地市場移転に反対する会」とした。しかし、そこで横槍が入った。
「そんなんでは弱いのではないか。我々が築地を離れることは死活問題なんだ！　絶対に反対なんだよ！　断固反対なんだっ！」
この一言ですべて決まってしまった。
「築地市場移転を断固反対する会」

この横断幕を作るのだったら、せめて、「断固」は入れなくてもよかったと思うんですけど・・・ね。
ここはひとつ、あえて「築地市場の関係者全員が反対しているんだ」と思わせるためにも、「築地経営者協会」とか、ちょっと紛らわしい、ギリギリのネーミングにするべきだったのではないでしょうか（そうすると、そのネーミングでまたもめてしまうかもしれませんが）。

もし、あなたが、この「横断幕」を作るとしたら、どのようなコピーにしますか？
そして、「会のネーミング」も。