第3章 前橋での出来事
 高崎で電車を乗り換え、上越線で水上まで向かった。高崎、井野、新前橋と電車は水上へと向かっていく。因みに新前橋駅は、僕の実家の最寄り駅である。ここは前橋育英高校(元フリューゲルスの山口の母校)の最寄り駅でもあるので、高校生が沢山乗ってきた。(まだ昼なのに授業をサボっているのだろうか。)
 しかしここでとある不安が脳裏をよぎった。それは未だ群馬に生息しているヤンキーの存在である。昨年のゼミ合宿で草津に行った時にもここの駅を過ぎたのであるが、この時新前橋にて、限りなく完成体に近いヤンキー(1,ボンタン、2,単ラン←こんな処で漢字間違いすんな!正しくは「短ラン」、3,赤い靴下、4,ヤンキー座り(またの名をうんこ座り)、5,空き缶を灰皿代わりに煙草を吸う(出来たらショートホープ)、6,リーゼント、7,果てし無くぺっちゃんこにした鞄←これらの要素を全て満たすもの)がゼミテンに発見されてしまったのであった。そのヤンキーは電車が来ても気に止める様子もなく、
 「電車あー?だりーぜ。」
 とでも言いたげな様子で、ヤンキー座りで煙草を吹かしていた。ゼミテンはかなりウケていた。しかしそれはヤンキーに対してではなく、僕に対してのように感じられたので、それ以来この一件に関してはトラウマになってしまったのである。(←かなり大袈裟だ。)
と言うことで今回もヤンキーが現れてこないかと心配だったが、この心配は杞憂に終わった。(好かった好かった。)
 新前橋を無事に(無事なのは僕だけだったんですけど)出発した電車は次の駅、群馬総社に向かった。群馬総社は小暮洋の実家の最寄り駅である。ここで車内アナウンスが鳴り響いた。
 「次はー、群馬総社―。群馬総社―。なお群馬総社より先、終点の水上までは、駅に着きましても電車のドアは開きません。降りる際は各自ドアを手で開けて降車をお願い致します。」
 ・・・・・・・・・。一瞬僕達3人は静まり返った。そしてどっと吹き出した。つまり小暮の実家の近くはあまりにも田舎過ぎて、電車のドアを自分の手で開け閉めしなければいけないのである。客の乗降りが無いのにドアを開けて車内に無駄な冷気を入れないようにする、寒冷地の田舎には付き物のシステムですな。3人とも東京に戻ったら、この事をネタに、小暮をいびろうと心に誓った。このように群馬総社は田舎のくせに、駅前の公衆電話は一丁前にISDNの灰色電話であった。特に僕は、同じ前橋市民出身者として、
 「同じ前橋なのに、何故にこうも暮らしぶりが違う物なのかねー、小暮君。」
 と言った気分であった。しかし新前橋と群馬総社は隣駅であり、一歩間違えば新前橋も群馬総社と同じく田舎ゾーン(と呼ばせて頂く)になっていたかもしれない。人間の生と死は表裏一体であり常に隣り合わせになっているとはよく言われるが、都会と田舎も常に表裏一体である事を実感した。背に腹は代えられない気分でもあった。(しかし、その後小暮をいじめた。小暮君の意志とは裏腹にいじめられるネタがどんどん増えていく彼にとっては受難の日であった。)

 


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