第3章 「日光見ずして結構言う無かれ」と言う虚言 東武鉄道の浅草駅を出発した電車リッチに特急「スペーシア」と行きたい処だが、出費を抑えるため快速は、日光まで乗り換え無しで到着するのであった。僕達は旅情を満喫するべく、昼前からビールを飲みおやじ化していた。今回は5人だけでしたが、まぁ、恒例行事ですな。そして日光までは2時間近くかかると言う事で、僕と岡Tさんとマサルさんと遠藤でUNOをした。女子達は藤本がマイ花札を持って来たのでそれに興じていた。菊池と小暮は何やら睦言を交わしながら濃密トークを繰り広げていた。
UNOの罰ゲームとして浅草で購入した唐辛子煎餅を導入した。僕と遠藤は弱いので結構罰ゲームを被り、
「僕は唐辛子煎餅を食べさせられてとても不幸です。」
と言った顔をしながらゲームを続けた。(遠藤の方が弱かったが。)しかもこの電車は日光まで殆ど長時間の停車がない。追い打ちをかけるように車内にトイレは存在しない。つまり終点の日光に着くまでトイレタイムが無いのである。(岡Tさんは3分程のトイレに行くには余りにも短すぎる時間で強引にトイレに行って来てしまったのですが。辛さを我慢出来ずにビール2本飲んでしまったアホですから・・・)と言う事は畢竟、水分を多く摂れないのである。結果的にビールで唐辛子煎餅の辛さを紛らわす事が出来なくなり、
「僕は唐辛子煎餅を食べさせられてとても不幸ですが、水も飲めなくてもっと不幸です。」
と言った状態に陥ってしまった。最後に唐辛子煎餅の残りの粉を遠藤に食わせて残りの粉全部の罰ゲームを提案したのは遠藤である。彼は廃人になった。正に、
「僕は唐辛子煎餅の一番辛い所を食べさせられてとても不幸です。」
と言う様子であった。Tシャツ1枚に「闘魂」鉢巻きをして廃人化する姿は女子高生と思しき一行の笑いのタネにされ、写真に撮られていた。この様な事をしている間に、電車は終点の日光に到着した。
東武日光駅の直ぐ近くに東照宮が有るので、旅するからにはたまには観光もしないとと言う事で、見物する事にした。(←今までの僕達の旅行は観光と言う要素が蔑ろにされていた。)バスを降りてから本殿に着くまでの杉並木は壮大さが感じられる。この杉並木の巨大さは、巨大さ自体がそれだけで価値であろう。遙かなる日輪の下、頭上の木漏れ日が眩く注いでいる。そして取り巻く空気が美味である。
そして深閑とした杉並木を抜けると日光東照宮は姿を現した。日光東照宮は東照大権現徳川家康を奉るために建立された建造物である。しかし陽明門や唐門を筆頭に、全体的に華美過ぎる感を受ける。歴史的価値の尺度から鑑賞すると、この社殿は然るべき荘厳さを失ってしまっているのでは無かろうか。点在する数々の社殿がどことなく、
「俺達歴史的建造物だもんね。凄いんだもんね。」
と鼻高々になっている様で敵愾心が湧いてきた。華美さや壮麗さは家康の過去に対する罪の粉飾の現れなのであろう。(華美で壮麗にしたのは3代将軍家光であるが。)
と罵詈雑言、悪口雑言の限りを尽くしたのも然るべき理由が有った。まず東照宮への入場料(1260円)を搾取された。(ちょっと高すぎる様な気がしたのですが。)更に本社で俗欲神主に
「お土産を買え。俺達は貪欲に私腹を肥やしまくるのだ。」
と言った趣旨の説教を延々とされた事に起因する。「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿の彫刻が有るが、その後に「もう行かざる」と付け加えたくもある。僕達は日光東照宮に打ちひしがれた為、心に平安を求めて流浪していた。やはり温泉しかない、兎に角温泉に行く事が先決だ、と言う事でホテルの有る川治温泉へと向かった。
BACK 著作:あむみ st53189@srv.cc.hit-u.ac.jp(99年4月30日まで)![]()
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構成:おかわん okada@virgo.higashi.hit-u.ac.jp