あれやこれや

2010年01月07日
俄評論家誕生


今日は前置き無しでいきなり本題です.冬期休暇特集第3弾.私も成長している
(?).

NHKのニューイヤーオペラコンサート.一昨年だかその前の年だか,えらく歌手の調
子が悪くて,練習中に皆さん集団インフルエンザに感染してしまったのかと思うほど
のこともありましたが,昨年も今年も素晴らしい出来.どの歌手もワールドクラスでし
た.問題なのは独りよがりの演出.演出が悪い時は歌手が頑張るというのも一般的
傾向らしく,見るに堪えない演出の時に限って立派な歌唱が聴けるのは不思議なも
のです.そこを逆手にとって歌手に頑張らせるためにこんな突飛な演出にしたの
か.とすれば見事な演出と言うべきか.

多分俳優だと思うのですが気味の悪いなりをした寺田某という人が,わざとらしい身
振り手振りと意味ありげで全く意味のない抑揚を付けた話に沿って舞台は進行しま
す.話している内容は真っ当で,変なことを言っている訳ではないことから,単に進
行役に寺田さんを使ったことがミスキャストだったのかも知れません.自分は俳優だ
からそれらしく話さないといけないと思ったのか,プロデューサーにそうしろと命じら
れたのか.余りに気持ちが悪いので,録画して後で進行役が出るところだけ早送り
して見ることにして,途中で見るのを止めてしまいました.

そう言えば今回に限らず,NHKは時々このような訳の分からない俳優(?)を呼ん
で,特集番組の進行をやらせる傾向があります.昔“46億年 人類への旅”という大
変興味深い特集番組があり,毎回欠かさず録画までして見ていたのですが,この時
も山崎某という人が出て全く意味のないクサイだけの話を合間合間で聞かされまし
た.だからこの山崎さんが出る部分だけ手間暇かけてきれいにカットした保存版を
作りました.デジタル放送では視聴者軽視としか思えないプロテクトがかかっている
のでこれが出来ないのが腹立たしい.

さて,話はオペラコンサートに戻ります.舞台そのものは光を巧みに使った,色鮮や
かで大変美しいものでしたが衣装がひどすぎました.作品とは何の関わりもない,あ
の素っ頓狂で変竹林で奇妙奇天烈な衣装と髪型は何だったんでしょう.程度の低い
ファッションスクールの卒業制作レベルかそれ以下.歌っている人達が気の毒にな
りました.役のイメージを壊すことにしか役に立たない出で立ちで歌うのは大変だっ
たでしょう.だからこそ歌に集中できて見事な歌唱を聴かせてくれたのかも知れませ
んが.

取り上げられたアリアはいずれ劣らぬ名曲ばかりで,一般的には文句の付けようが
ありませんが,ニューイヤーコンサートであることを思えば,ま,言ってみればオペラ
に縁のなかった人達への入門の絶好の機会でもあることを思えば,例年のような誰
でも知っている超有名曲を少なくとも半分くらいは入れるべきではなかったのかとも
思います.選曲と演出全体を見ていると,製作者の自己顕示性ばかりが鼻につきま
す.やはりニューイヤーコンサートはセレモニーですのでウィーンフィルのニューイヤ
ーコンサートを見習うべきだと思いました.

もう一つだけ.“ばらの騎士”の最後の三重唱とその後の二重唱.特に二重唱の方
は“愛の二重唱”の最高傑作だと思います.そしてその前の三重唱は元帥夫人が若
い2人から身を引く場面で,このオペラの最大の心理的見せ場.こんな場合,新年
のお祭りなら美しい二重唱の方を採用すべきだと思うのですが,今回の自己顕示性
製作者は心理描写の方を取りました.この結果,林さんと森さんによる美しい二重
唱はさわりだけしか聴けなかったのが残念でした.

今日は俄評論家になってしまいました.失礼.






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