
あれやこれや
今日は少しだけ中身に触れます.純朴田舎育ちのホセが魔性の女カルメンに惚れ
たが故ににストーカーになりはてついには殺人犯になるというストーリーは今更説明
を要しないでしょうが,この間2回程ホセは命をかけた(かも知れない)争いに巻き込
まれます.
ところでどの映画もアクションドラマも戦闘場面がくどすぎるとは思いませんか.ちゃ
んチャンバラばらに時間を費やされるのは時間の無駄というモノ.時々書いている
大音響大スペクタクルの比較的最近見た中国の歴史物映画なんか映画館でも出来
ることなら早送りボタンを捜した程でした.ましてオペラを見に(聴きに)行ってチャン
バラを期待する人は皆無.なのにカルメンでは2度の立ち回りがあるんです.上記
のホセの争いですね.両方ともカルメンをめぐる焼き餅が原因.
1回目はつれなくされた上官のスニガがカルメンの所にいたホセとやり合います.ホ
セがジプシー仲間に入るきっかけとなる重要な場面ですが,ほぼ100%の演出では手
にした軍刀でのチャンバラ.オリジナルがそうだったんでしょう.今回はホセが拳銃
を使います.だから立ち回り無しにあっさりスニガが降参.これで良いんです.これこ
そ正しい読み替えというモノ.真に内容を理解した演出です.要はスニガが負けてホ
セが成り行き上ジプシー仲間に加われば良いのです.
その前にもう一つ.喧嘩をしたカルメンをホセが逮捕する時に縄で縛ることになって
います.これがまどろっこしいのですが,今回はあっさり手錠.現代オペラはこれで
なくては.なお,手錠の使用は最近見た佐渡裕のプロダクションでも採用していまし
た.
2回目の争いは目の上のたんこぶ,エスカミーリョと.この争いは殺し合う程の必然
性があるとは思えませんが,演出によっては実に長い.と言うか元々勝ったり負け
たりの挙げ句カルメンが仲裁するのがオリジナル.でも今回はホセが足を出して長
い足のエスカミーリョを転ばせ,あっさり優劣が付きます.これならその後のエスカミ
ーリョのセリフ“命の恩人はカルメンとは嬉しいね”との整合性がとれますし長々と意
味のないチャンバラを見ないで済みます.
もう一つだけ演出を誉めておきます.先程ちょっと書いたカルメン逮捕のきっかけと
なったカルメンとマヌエリータの喧嘩.マヌエリータは大きな今まで見た中で最大の
×を頬に付けられていました(2008.01.03 必要な×印).これなら誰がマヌエリータだ
か直ぐ分かりますし,カルメンが加害者でマヌエリータが被害者であることもつまりカ
ルメンだけが逮捕される必然性も明らかになります.
間奏曲の時間に観客を引きつける工夫も含めて流石にメトロポリタンの演出家は並
みではないと思いました.
続く.
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