あれやこれや

2010年03月03日
パウロ頑張れ


予告通り先週,METライブビューイングのシモン・ボッカネグラというヴェルディのオ
ペラを新宿ピカデリーで鑑賞してきました.市民vs貴族という争いの典型的構図.敵
味方に分かれた祖父(貴族派)と父(市民派,主人公のシモン)と娘の複雑な感情と
色恋,さらに財産目当てなど,ありがちな物語のテーマが絡みます.こうなると私に
はちょっと難しいので,既に何回か見ていますが改めてしっかりと予習して行きまし
た.なお,渡されたパンフレットの裏には登場人物相関図が書かれていました.予習
を怠った人にこれは必須でしょう.

前回(2010.2.7 間奏曲を聴かせる工夫)の時と同じプラチナシート.しかも全く同じ席
を予約できました.ベストポジションです.今回は既に経験があるので,現場探検
(2010.2.6 徘徊癖再発)などみっともないことをせず,さも常連風に場慣れした振りを
していました.でも,案内のお兄さん(今回はお姉さんではない)の“会場の準備が出
来ました”との案内に,幾ら見栄を張りたくても,気短者はゆったりとロビーでくつろぐ
なんてコトは出来ず,真っ先に席に駈け込んでしまいました.

このオペラは魔が差したたった1人(パウロ)を除いて,全ての配役は善意の人ばか
り.彼らが時代の流れというか環境というか運命に弄ばれ,抜き差しならない羽目に
陥るのですが,結局はメデタシメデタシ.中でもシモン役は理想の人物.魔が差した
パウロの仕掛けた毒によって最後に命を落とすのですが,それがまたヒーローに相
応しい格好の良い最期.あのP.ドミンゴがキャリアの最後に選んだ役どころだけのこ
とはあります.何しろテノールで売りまくった大スターがバリトン役であっても,この役
をやって歌手人生を終わらせたいと考えた程なのです.ドミンゴだからこそ許される
我が儘なんでしょう.

さて,私が気になるのは唯一の嫌われ役パウロ.オテロのヤーゴやトスカのスカル
ピアのような立派な(?)悪役ではなく,小悪役.魔が差したが故に最後に処刑され
てしまうのです.ストーリーを成り立たせるために無理に取って付けたような役.だか
らヤーゴやスカルピアのようなワルを誇る歌もありません.下心のある約束だったと
はいえ,その約束の結果,総督になったシモンがパウロに約束の代償を払わないの
で,パウロは自暴自棄に陥ります.そして,遂には叛乱者に荷担して結局は処刑さ
れてしまうのです.確かに毒を盛るのは犯罪ですし,叛乱に荷担というのも頂けませ
んが,それよりも,私はシモンの違約そのものに引っ掛かるものを感じるのです.
ま,多寡がオペラですので,うるさいことを言うのは止めましょう.パウロの味方は観
客の中に1%もいないでしょうから.でも,私はちゃんと見ていたよ.フレー,フレー
ッ,パ・ウ・ロ!






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