あれやこれや

2010年05月20日
子猫捕物帖(Iさんとネコ1)


新潟のトキケージを襲った疑いにより捕獲されたテン.このニュースを聞いた時,本
当に悪いのはヒトなのに,このテンちゃんの運命は報復のための死刑確定か? と
思いました.でも,罪一等を減じられて無期懲役.動物園に引き取られたとのこと.
この懲役刑は苦労しなくてもエサが貰える.多分,テンちゃんにとっては無罪放免よ
り有り難い判決でした.流石に動物保護を仕事にする人達は素人とは違うと感じ入
りました.大拍手の出来事.

先日,皇居で逮捕されたアライグマは本人は何の認識も責任もない家宅侵入を犯し
ていた廉(カド)で死刑が執行されてしまいました.なんと言うことを.これには腹が立
ちました.

宮崎県の牛や豚はヒトに食べられたくて飼われていた訳ではないのに,しかも家宅
侵入を犯したアライグマほどの罪さえないのに,そこで飼われていただけで大量虐
殺されています.“可哀想”だと思うのならまず牛肉,豚肉を私のように食べないこと
です.肉食する人は自らの手をもって無垢の牛や豚を殺しているのと同じなんです
よ.彼らはあなたが食べる前には結局遅いか早いかの違いで処刑されて居るんで
す.

さて,今日はネコ話.大先輩のIさん.現役時代私の上司だった方です.へそ曲が
り.その曲がり振りは数々あるので,いずれ小出しにご紹介したいと思います.その
前に.

新聞やテレビで何回となく紹介されたのでご存じの方が多い話題です.18歳で名人
に挑戦した大天才加藤一二三さんという将棋棋士の話.この人は敬虔なクリスチャ
ンとしても知られ,私のような最低の俗人とは対極にいる人.旅行中に加藤名人の
庭に遊びに来たネコが出産して,それ以来ネコにせっせとエサを与えているんだそ
うです.博愛の精神ですね.色々議論があるでしょうが,そこは神武以来の大天才.
凡人ではその心境は推し量ることは出来ません.多寡が裁判官ごときが畏れ多くも
神武以来の大天才に向かって判決を下すなんて,烏滸がましいこと甚だしいとは思
いませんか.

そこで,I先輩を思い出したという訳です.Iさんだって負けてはいません.将棋が強か
ったかどうかは分かりませんし,少なくとも宗教家ではなかったはず.でも凡人とは
桁が違う思考回路の持ち主(要は変わり者?).

勤め先は事務部門の他に研究所が併設され,試験工場も建っています.そしてIさ
んの下駄箱の中にはキャットフードが.ここが加藤名人との共通点.そうなんです.
結構広い事業所の中には野良ネコが住み着いていて,そのネコたちにエサをやる
のが日課.そして生物の摂理として当然の如くその内の1匹がおめでた.どこからと
もなくミャーミャーと子猫のモノと思われる鳴き声が聞こえます.“見せてやろう”誰も
頼みもしないのに(実は私は見たかった),早速Iさん,縁の下にもぐり何やらゴソゴ
ソと.足元では子猫の声とは思われない“ギャー”とか“ガゥー”とかいろんな声が聞
こえます.そうなんです.子猫を見せてやろうといった手前,責任感の強い(正確に
は意地っ張りで言い出したら聞かない),Iさんは頑張りました.その結果ひっかき傷
で腕を血だらけにしてやっと一匹の子猫を修羅場と化した縁の下から拉致してきま
した.

こちらは捕って食うつもりはなくとも,子猫の方は捕って食われるかも知れないと思う
のは当たり前.研究室に連れ込まれた子猫は自らの力で運命を切り開くために決
死の逃亡を試みました.健気ですね.でもこの部屋は旧研究室で2台の電子顕微鏡
とその付帯設備等でごった返しています.それに暗室設備もありますし,一抱えでは
持ちきれないほどのケーブル類や冷却管は床をのたうち回っています.ハムスター
より少し大きいくらいの生まれたばかりの子猫なら逃げ込める所は幾らでもありま
す.でも高電圧部分など危険も一杯.それに高価な機械を壊されたら大変.Iさんが
余計なことをしてくれたおかげで研究室中上を下への大騒ぎ.狭い部屋ですが,30
分ほどのレクリエーション.気楽な私は子猫ハンティングを多いに楽しませて貰いま
した.古き良き時代と言えるかも知れません.ネコ話はもう少し続きがあります.次
回に続く.







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