あれやこれや

2010年11月07日
面食い恐るべし(フィガロの結婚1)


先日,新聞の投書欄にある大学の先生(女性)からの投稿がありました.かいつま
んで書くと,韓国帰りに空港からタクシーに乗った彼女が,運転手に話しかけた際に
“クセー”と言われ,窓まで開けられたんだそうです.彼女は怒り心頭,自分がクサイ
ことは棚に上げて,憤慨して偉そうに色々書いていましたが,私はこの運転手に同
情します.迷惑を掛けているのはアンタ(この投稿者)じゃないの.臭いから逃れる
のは難しい.だから悪臭を放つ人は他人様に迷惑を掛けないように工夫しなければ
いけません.少なくともここは日本.ニンニク臭は嫌われます.自分のことを棚に上
げて他人を責める,この先生に習った学生達は気の毒だと思いました.

さて,今日から“フィガロの結婚”話です.フィガロの結婚はモーツァルトの三(五)大
オペラであるとともに,世界三(五)大オペラという分類があれば間違いなく入るので
はないでしょうか.楊貴妃が中国四大美人であると同時に世界三大美人であるのと
同じですね.だから新国立劇場(以下新国)で上演されれば行かない手はありませ
ん.ですが,今回はやけにモモママが熱心.コミカルな軽い歌,叙情的な歌,深刻な
歌,あらゆるオペラアリアがぎっしり詰まり,内容も複雑を極めた末に,助平伯爵(ア
ルマヴィーヴァ)だけが恥をかいて目出度し目出度しのハッピーエンド.プッチーニ作
品の取って付けたようなメロメロメロドラマと違って明るい喜劇です.モモママならず
とも公演日程が合えば是非行きたいと思うもの.

主人公は言わずと知れたフィガロ.内容的には前作に当たるロッシーニ“セヴィリア
の理髪師”では恋に悩むアルマヴィーヴァとロジーナの結婚の橋渡しをした利発なフ
ィガロは,本作ではアルマヴィーヴァの使用人となっており,同僚のロザンナとの結
婚予定.これに(昔の恩と苦労を忘れて)横やりを入れる助平アルマヴィーヴァを寄
ってたかって懲らしめるというのがフィガロの結婚のテーマ.だからアルマヴィーヴァ
もフィガロに負けず劣らずの主人公.昔,D.F.ディースカウというバリトンの名歌手が
アルマヴィーヴァを演じた映画を見たことがあります.このときのフィガロは現実でも
ディースカウと人気を二分するライバルのH.プライ,その他の主人公サイドの人たち
も伝説的な名歌手揃いでしたが,ディースカウの名優振りは驚くばかり.名歌手でも
あるディースカウは俳優としても超一流でした.ま,あの顔ですのでアラン・ドロンとい
う訳にはいかなくとも悪役俳優として一世を風靡できたことは間違いありません.

そういえば,今回の主人公フィガロ役はオペラ界では貴重なスマートな色男.モモマ
マがご執心だった訳が分かりました.この人,三年前,新国でのカルメン(2007.12.
05 世界レベルのカルメン)でエスカミーリョを演じたヴィノグラードフさんだったので
す.机から飛び降りながら闘牛士の歌を歌った人ね.もちろん本人の成長もありま
すが,この時の好評価が今回の招聘へ繋がったのでしょう.それにしてモモママの
面食いも恐るべし.その後,一度も見聞きしない名前を三年後でもちゃんと覚えてい
たとは.

(注)本稿はモモママの検閲済みです






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