あれやこれや

2010年11月14日
南京玉すだれの舞台(ラインの黄金1)


本ページを書き始めた頃,ペンシル(ペンシルフィッシュ,ナノストマス・ベクフォルデ
ィ)という熱帯魚について何回か触れたことがあります(2006.11.4 ペンシルの子供,
他).今はこの時の子供か更に孫の代になっています.その内の1匹が浮き袋異
状.体勢をコントロールできず,まともに泳げなくなってしまったのです.こういう事は
しばしばあります.こうなると助けるのは難しい.餌を摂ることがきわめて困難だから
です.水底に沈んだままで,あと1日か2日の命.浮くことができないのですから致命
的.でも,餌の気配を感じると藻掻きながら何とか水面にたどり着こうとします.食欲
は十分なのです.さすがはA君(柔道チャンピオンA君に因んで命名した雄のペンシ
ル)の子孫.そうは言っても,いかんせん30cmも重力に逆らって泳ぐ体力は残ってい
ません.だから途中でまた水底に落下.この繰り返しです.手の施しようがありませ
ん.せいぜい最小限度の力で水面までたどり着けるようにと,深さ7cm程度のプラス
チックケース(産卵箱)に入れて浮かせておきました.体力は残ってなくとも結構ガッ
ツキ.死んだようになっていても,人の気配を感じると突然目を覚まし水面に向かう
のです.そして水面までたどり着ければ何とか餌を食べることができるのです.

他の魚と争うことなく餌が確保された恵まれた環境で,こんな状態のまま3ヶ月.この
可哀想な子は驚くべき生命力を見せ,浮き袋異状で底に沈んで見つけられた時より
遙かに元気になっています.体はグニャグニャ.ちょうど楽譜の4分休符のような形
になったまま毎日立ち泳ぎをしながら餌をねだるのです.半世紀になる熱帯魚飼育
歴でもこれ程の生命力を見せてくれたのは他にはグラちゃん(2006.9.5 福島の帝
王)しか居ませんでした.

先々週の土曜日(11月6日)新宿ピカデリーでメトロポリタンオペラ(MET)の実況映
画(ネットビューイング)“ラインの黄金”を鑑賞してきました.歪みだらけの大音響,
大迫力の映画館が当たり前の中,今回上映の第1スクリーンはほとんど音が歪みま
せん.しかも前にも書きましたが音量調整も大迫力にこだわらないリーズナブルなも
のでした.

さて,こんなところでの蘊蓄は嫌われますので最小限にとどめますが,ある程度は
書いておかないと先に続きません.お許しを.ワーグナーの超大作“ニーベルングの
指環”の序章に当たるのがこの“ラインの黄金”.因みにRingなんですから指“輪”で
良いはずなのになぜか指“環”と書く習慣です.METでもこの15時間にもなる超大作
を上演するつもりになったのでしょう.この作品を上演する以上,莫大なエネルギー
が必要で,その趣向は“・・・リング”などと命名され毎度音楽界の大きな話題になり
ます.METでやるからには世界1の劇場にふさわしい目玉が必要です.そして私は
この舞台に“ロッククライミングリング”と名付けました.わけは後で書きます.

超大作といっても4つの独立したオペラの集まり.“ラインの黄金”はその序章ですの
でたったの1幕物.それでも3時間休み無し.鑑賞する側も覚悟が必要.でもこのロ
ッククライミングリングの歌手達は宙づりのままの演技と歌が要求されます.おそらく
最後の“神々の黄昏”が終わるまでには何人かの転落犠牲者が出るに違いありま
せん.私はこうまで頑張らなくても良いのではないかと思ってしまうのですが.

見ていない方にどんな舞台かは次回で簡単に説明します.早く言えば南京玉すだれ
の超巨大版.お楽しみに.






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