
あれやこれや
人類に共通の長い生き物への嫌悪と恐怖.長い虫(ミミズ,ゴカイ,サナダムシ,コ
ウガイビル,・・・)やヘビ,ウナギ,・・・.ウナギは好きな人もいるかも.これは恐竜
時代の遠い祖先がティラノザウルスやヴェロキラプトルにいじめられ,逃げ惑った記
憶がDNAに残っていて未だに長いものを嫌悪するんだ等という人も居ます.でもラプ
トルって長かったのかな.この説は無理なこじつけでしょう.
もっとも,サルが初めて見るヘビを見てパニックに陥るなんて話もありますので,こ
の辺については未だに専門家の間でも結論が出ていないようです.ところで,生物
毒の強さでは細菌の作り出す毒素は別格として,噛み付かれたり刺されたりで被害
を受ける毒としては,コブラやマムシなどの毒でさえ最強という訳ではない(クラゲや
イソギンチャクの毒のほうが強い)んだそうです.でもその毒の量たるや半端ではな
いので,ヒャッポダ(咬まれれば百歩も歩かない内に倒れる)なんて飛んでもない名
前を貰っているヘビもいるそうです.ヒャッポダは高校の下校時,デパートのヘビ展
で挨拶をした記憶があります.キングコブラに至っては,咬まれてから病院にたどり
着くまでに生きている人が居ないので,咬まれた後どうなるかのデータ(血清が有効
かどうかなど)さえ整っていないのだとか.また砂漠なら馬にも追いつくという快速ブ
ラックマンバの攻撃距離は周囲50mもあるんだそうです.いずれにしても毒ヘビは怖
い.
さてオペラでも“魔笛”の冒頭(2010.9.30 とり八へ行こう)をはじめヘビを使った名場
面が幾つかあります.今度の演出ではどんなヘビを見せて貰えるのかなというのも
ひとつの楽しみ.如何に巨大で恐ろしげに見えるかが演出家の腕の見せ所.この前
の“魔笛”では機関車の先頭車両のようなマンガチックなヘビでした.ところで,“ニ
ーベルングの指環”は2回も巨大ヘビが出るというサービス振り.1回目はその序章
(序夜)“ラインの黄金”.もう1回は来年あたりに今回の続きとして書くことになるの
ではないかと思いますが第二夜“ジークフリート”の中で主人公ジークフリートが退治
する大蛇(ラインの黄金で最後に指環を奪ったファーフナーの変身)です.どんな趣
向か今から楽しみ.何せ,今回の大蛇には度肝を抜かれました.舞台ではなく映画
館で比較的冷静に見ている観客でさえどよめく(+笑い)程だったのです.
ローゲの口車に乗せられたアルベリッヒが魔法の力を誇示する余り巨大ヘビに変身
する場面です(そのあと調子に乗ってカエルなんかに変身するから簡単に捕らえら
れてしまう).何と言ってもメトロポリタン歌劇場の威信をかけた巨大ヘビです.期待
はいやが上にも盛り上がるというモノ.観客は虎視眈々.そしてアルベリッヒは何や
ら怪しげな呪文と共に“ヘンシ〜ン・・・”したのは大蛇ではなく恐竜の骨.勿論,舞台
に納まらない巨大恐竜の骨.骨というところが素晴らしい.この演出家は人類の本
当の恐怖は長い生き物ではなく太古の恐竜だったのだということを主張したかった
のでしょう.なお,前回ご紹介したリンクの中にもこの見事な恐竜の骨が写っていま
す.
巨大恐竜の骨に変身した場面は資料が無いので載せられません(代わりにこのリン
クの写真を見て下さい)が,私が持っているDVDから“ラインの黄金”の大蛇場面を
張っておきます.余りリアルな物はないのでヘビ嫌いの人もご安心を.

これが大蛇? 犬のようですね.顔も可愛い(ブーレーズ/バイロイト1980)

キノコのような蛇. やはり顔は可愛い? (カラヤン/ベルリン1981)

これは超巨大.顔だけで舞台一杯.でも蛇の舌ってこんなだっけ?
(サヴァリッシュ/バイエルン1989)

リアルで可愛くもないが小さくて怖くもない.左の写真の右端にちょこっと
見えるのが大蛇.右の写真はその拡大.(レヴァイン/MET1990)

これが一番リアル.でも10m級の蛇なら現実にも居そう(アミメニシキヘビ等).
(バレンボイム/バイロイト1991)

ただの松明行列.蛇と言うにはお粗末.右の写真が蛇の頭(のつもり).
こんな現代演出は面白くない.(メータ/バレンシア2007)
結局,今回の観客の度肝を抜いた恐竜の骨が最高傑作でした.
|
|
|

|