
あれやこれや
先日は“ラインの黄金”の人類(霊長類)共通の敵である蛇(竜?)のことを書きまし
た.大蛇だったり恐竜の骨だったり様々な工夫が面白いのですが,“ラインの黄金”
以上に上演回数の多い“魔笛”の冒頭も大蛇との戦いから始まります.先日DVDか
ら蛇場面のスナップショットを取ったついでに魔笛の蛇場面も抜き出してみました.
手元には1971年のドイツ映画版から,つい先日観てきた新国立での二期会公演
(2010.9.16 夜の女王で決まり,他)の放送の録画まであります.残念ながらこの二
期会公演はディジタル録音なのでスナップショットがとれません.で,その代わり5年
前の同じプロダクションのアナログ放送からのスナップショットを掲載します.

シュタイン/ハンブルク(1971 映画)
ドラゴン顔で双頭(右の画面外にもう一つの頭がある)の蛇.さすがにこれだけ立派
な蛇には勝てそうもありません.頭の部分と胴体に何人かの入ったハリボテのようで
す.なおタミーノ役は畏れ多くもニコライ・ゲッダです.

エリクソン/スウェーデン(1975 映画)
これは蛇型ではなくザウルス型のミニドラゴン.余り怖そうに見えないと言うよりむし
ろ可愛いのですが,歌が始まるまで舞台を右から左へ,そして左から右へと逃げ回
るタミーノをボテボテと見るからにぬいぐるみドラゴンが追いかけ回すのがご愛敬.

サヴァリッシュ/バイエルン(1983)
これもドラゴンが逃げ回るタミーノを追いかけ回すのですが,蛇型ドラゴンなのでスェ
ーデン版のように速くは追いかけられない.なかなかリアルなドラゴン.

ムーティ/スカラ(1995)
これもハリボテタイプですが出来はこの通り見事.タミーノさんも,演技と分かってい
ながら相当に怖かったのではないでしょうか.“どうかお救い下さい”との言葉に切迫
感があります.

レスキー/ザンクトマルガレーテン(1999)
これは野外オペラです.ドラゴンの後ろの木は本物.ドラゴンがいかに大きいか分か
るでしょう.それだけにこれはハリボテではなくセット(一種のロボット).だから顔を
出してまた茂みの中に沈むだけ.追いかけ回す動きはありません.ま,仕方ないで
すね.

デーヴィス/ROH(2003)
この蛇はリアル.この後口を開けるのですが“おまえを食べてやる”と言いたげな見
事な歯がはえてます.蛇踊りというか大勢の黒子達が操っています.迫力満点.とこ
ろでこの黒子さん顔を隠してないので明るいところを通る時に顔が見えるのですが,
黒子ではもったいない美女揃いでした.

レヴァイン/MET(2006)
さすがMETと思わせる美しい魔笛でした.暗くてわかりにくいかも知れませんが画面
中段の少し上に右を向いた大蛇が居ます.光っているのが目ですね.この黒子に操
られた大蛇も幻想的.動きも実になめらかでした.

ムーティ/ザルツブルク(2006)
左の赤っぽいのが胴体でやや右に青く見えるのが頭.こちらを向いていて両目が光
っている.この蛇も蛇踊りタイプだが出来は上2作品よりかなり劣る.特にいただけ
ないのは右の写真.殺された後はなぜか豚鼻蛇?

下野/二期会(2005)
我らが二期会魔笛.SL型の蛇頭.メルヘンチックなところをねらったのでしょうが,
残念ながら観ている方にはよく分からず成功しているとはいえません.先日観てきた
舞台も同じプロダクションですのでほとんどこのままです.
手元にはもう一つ“ニーベルングの指環”の第二夜“ジークフリート”の蛇退治の場面
があるのですが,またいつか気が向いたらご紹介します.今日はここまで.
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