あれやこれや

2007年01月18日
netで世界の第1人者


たまたま仕事で使うアイテムの使い方を検索したら大学の1級上の先輩(以後KIさ
ん)がヒットしました.卒業後直ぐに結婚し,お子さまも大きくなられたからか,また大
学で化学分析に関する仕事をされているという話は昔頂いた年賀状で知っていいま
した.でも,現実に接点が有ろうとは.一度引退して主婦の座の味を覚えた後に再
び社会になど復帰するのは煩わしいことだと思うのですが偉いものです.今日は彼
女のこと,そして彼女の結婚式のことを書こうと思っていたのですが,この話題は後
日.

KIさんが偶然ヒットしたことを書いた時点で気が変わりました.勤務先では宣伝を兼
ねて技術情報誌を出版しており,その編集に私も関与しております.そういうわけ
で,記事の埋めグサに所属するグループでもしばしばレポートなどを書いているので
すが,昨年もある大型の分析装置の解説をこの装置を取り扱っている仕事仲間の
Ku君に書いて貰いました.導入当時,世界的に見ても数台しか設置されていない当
社自慢の分析装置です.ということは,その装置の解説記事を書く資格のある人も
世界中にそう多くはないということも確かに事実です.さて,インターネットでその装
置名を検索するとgoogleでもgooでもinfoseekでもはたまたyahooでも真っ先にヒットす
るのはKu君の解説記事.少なくともnetの世界では世界の第1人者です.通常,専
門の雑誌に解説記事を書くのは本物の第1人者か,それに近い人に決まっていま
す.何でもnetでしか調べものをしない人は本当にそう思うかも知れません.本人(Ku
君)も困っているようですが,netとはこんなものです.私もある物質の合成法を一流
の学会誌に投稿した数ヶ月後からその物質合成の第1人者になってしまったことが
あります(言うまでもなくそんなことは全然ありませんよ).

どなたかがブラインシュリンプという養魚では必須の稚魚用の餌の卵の殻除去法を
開発してnetに書き込まれたことがあります.これは素晴らしいアイデアで,私もこの
方に敬意を表しつつ,何時か真似しようと思っているのですが,ものぐさなもので未
だ実験していません.塩素系漂白剤つまり次亜塩素酸ソーダで殻を溶かしてしま
い,殻とシュリンプの幼生との分離の手間を無くそうというものです(2006.10.14 ブラ
インシュリンプ昔話).こういう情報が得られるのはnetの最も優れたところですが,
その後がいけません.シュリンプの殻はキチン質ですので酸では溶けないと思われ
ますが,この実験を真似て上手く殻を溶かせたと報告している多くの人が次亜塩素
酸から発生する塩酸によって溶けると書いているのです.まあうまくいけばいいのだ
からどうでも良いようなものですが,これは飛んでもない誤りです.次亜塩素酸ソー
ダは強アルカリで,いつまで経っても塩酸にはなりません.塩素は反応の結果ガスと
して抜けてゆき,ナトリウムイオンが過剰に存在するので,生成する塩化物イオンの
分は中和してただの食塩水になるだけです.推定ですが,アルカリによってつなぎの
タンパク質成分が溶けたか,キチン質がキトサンに変化して水に溶解または分解し
た結果,殻の形を維持できなくなったと見るべきだと思います.次亜塩素酸による酸
化がその後(あるいはその際)何らかの働きをしていることも考えられますが,溶解
の駆動力がアルカリなのか酸化なのかを確かめるために酸化力のない只のアルカ
リである炭酸ソーダ(あるいは苛性ソーダ)処理ではどうなるかもやってみたいと思っ
ています・・・がものぐさなもので・・・.なお,殻がキチン質だからアルカリ単独でも溶
けるのではないかという指摘は,以前このページで書いたBさん(2006.11.02 Bさんと
Cさん)によるもので,私のオリジナルではありません.うまくいった場合の,Bさんの
名誉のために一言.

いつも主張しているように,誰でもが無責任に情報を発信できるnet社会はありもし
ないデマカセ,嘘,噂のルツボです.勿論,私はこのページも,投稿記事も真面目に
書いてますが,掲示板やブログは公開にフィルターがありませんので,net情報はい
い加減な新聞テレビの記事より更に何倍も注意をしなくてはなりません.まあ,嘘ば
かりと考えるべきでしょうね.





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