あれやこれや

2007年03月15日
牛耕書法


学名や学術用語には驚くほどイメージ貧困なものがあります.とにかく人より先に名
前を付けてしまおうなんてケチな発想でネーミングされた生き物のほうが可哀想で,
有名なスベスベマンジュウガニやバフンウニなんてのもそんなものですよね.イメー
ジ貧困は自然科学の分野だけではありません.上野の国立博物館や佐倉の歴史
民族博物館などに展示してある貴重な文化遺産の名前も素人には納得がいかない
実に奇妙なものが沢山あります.

ところで牛耕書法なる用語をご存じの方は多くはないと思いますが,これは逆にイメ
ージピッタリ.良く思いついたものだと感心します.最近読んだ古代オリエントの歴史
に関する本で初めて知った言葉です.シバの女王で有名なシバ(サバ)辺りで使わ
れた古代南アラビア語は牛耕書法だったんだそうです.さて,牛耕書法とは?

この本を読んで,子供の頃からの疑問の一つが解決しました.歳をとると(耄碌する
と)忘れっぽくなって,つい今しがたのことを忘れるくせに昔のことは良く思い出すも
のだと言われますが,少なくとも私にはドンピシャリです.この長年の疑問を感じた
最初は小学校下級生の国語の授業.どうして先生は黒板に上から下に文章を書い
た後,次は下から上に書かないんだろうと思いました.教科書だってそうです.でも,
そう考えると今でも不思議なことではありますよね.世界中の言語が一方向にしか
文章を書きません.上から下にとか左から右にとか一方通行です.行を変える時は
反対の一番端まで大きく手を動かし,次の行を読むときは大きく目を動かさねばなり
ません.そして世界中のおそらく全ての人がこれをやっているはずです.ところが一
行おきに逆に書いてあれば,次の行は下から上に,あるいは右から左に読めます
ので無駄なエネルギーは必要有りません.このエネルギーロスを全部集めれば大
変なものになるでしょう.勿体ないことです.牛に鍬を引かせて農地を耕す時は当た
り前のようにやっていることをどうしてどの国の言語も取り入れていないのか?例外
はないのだろうか?というのが子供時代からの疑問だったのです.まあ,冷静に考
えれば現状の一方通行書法の方が都合が良いことが多いことは分かりますが,各
国語の全てが全てそうなのが不思議なことではあります.

古代南アラビア語が牛耕書法であることを知った時,急に3000年も昔のシバ人達に
奇妙な懐かしさを感じてしまいました.





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