あれやこれや

2007年03月27日
Struviteに騙されるな


最近桃が膀胱炎とかでここ一月近く抗生物質を投与されています.何事もないのに
下り物(おりもの)が何回か出たので心配して獣医に連れて行った結果,細菌感染
が原因で尿がアルカリ性(pH8.0)になっているとのことでした.しかもストラバイト
(Struvite リン酸マグネシウムアンモニウム)なる結晶が出ているとの話でした.細
菌感染で尿のpHが酸性に保てなくなり,その結果アルカリ性で析出するこのような
結晶が出たということなのでしょう.

さてストラバイトが膀胱内で発生し,これらが核となり複雑な成分が積もり積もって結
石に成長するんだそうです.だから結晶が出たら要注意.ここまでは一応納得で
す.特にアルカリ尿が続けば,運悪く膀胱内などに滞留したストラバイトが成長を続
け,結石となるのかも知れません.リン酸,マグネシウム,アンモニアいずれも普通
にあるものなのでアルカリ性であればこの結晶が析出しても驚くには当たりません.
但し,普段の尿が酸性でありさえすればこの結晶は生成も成長もできないはずで
す.

というわけで,その後,尿の度にpHを測定していたのですが,新(?)発見.知ってい
る人は皆知っているのことなのでしょうが,朝のpHは6.0を切るほど強い酸性.その
後,pH6.2〜6.4程度を推移して,寝る前のただ一回の尿だけが特殊でアルカリ性に
なることが分かりました.しかも,これは毎日のこと,つまり再現性の高いことなので
す.そして獣医に持っていった尿は前の日の夜のものを採取した,つまり一日で唯
一回だけ出る貴重な(?)アルカリ性の尿だったのです.そんなことを知ってか知ら
ずか,“これはいけません,感染症を治療しても結晶が出る様なら体質かも知れま
せんので治療食を”と獣医.確かに下り物もあり感染症はあったのでしょう.pH8.0は
アルカリ性が強過ぎるかも知れません.よって,抗生物質治療は妥当だと思うので
すが,ストラバイトが出たからといって直ちに結石を疑うのは早計です.前述のよう
にアルカリなら析出するのが自然なのです.繰り返しますが,普段酸性ならストラバ
イトは成長できるはずはなく,ストラバイトが出たことに問題があるわけはありませ
ん.

抗生物質治療のおかげ様で,やっと感染症が治ったのか,その後下り物は全くなく
なりました.寝る前はやはりちょっとアルカリになるのですが,pH7.2程度.治療もこ
れで終わりだと思ったていら,今度は“シュウ酸カルシウムの結晶が出ていますので
やはり治療食を”.何か変だとは思いませんか.シュウ酸カルシウムとストラバイトは
全く関係がありません.ストラバイトはある意味ではpHのバロメーター.常にアルカリ
なら成長して結石の元になるというのは分かります.だから尿は常にアルカリ性にし
ていてはいけない.一方,シュウ酸カルシウムの方はもう少し別の問題で,シュウ酸
が腎臓から排出され,尿中のカルシウムと結合したことを示しています.だから対策
としては,腎臓からシュウ酸が排出されないように,つまりシュウ酸の過剰摂取に気
を付ければよいはずです.尿のpHなんて全然関係ないはず.少なくとも食べ物でpH
をコントロールすることは意味がありません.厳密にpHを保たねばならない血液と違
って尿は排泄物であり,色々な不要成分が混じり込む尿のpHをコントロールするこ
とは意味がありません.実際,食事,睡眠など生活のサイクルで日周変化すること
が今回の観察で分かった訳ですので,たまたま採取した尿のpHは極端でなければ
問題ないと思われます.

これは,何とか治療食に持っていこうとする獣医師会,ペッフードメーカーが結託し
た陰謀に違いない.そこまで悪辣ではないにしても,この世界ではマイナスイオンに
近い迷信が作り上げられているのに違いないと思います.尿のpHをコントロールす
るペットフードなんて筋違いです.シュウ酸カルシウムの結晶が出るようなら,シュウ
酸が過剰なのですからシュウ酸成分の少ない餌を与えるか,それ以上にカルシウム
分の多い餌を与えてシュウ酸を腸壁から吸収させないよう心がけるのが先決で,治
療食なんて素人騙しです.

まあ生殺与奪の権を持った獣医と喧嘩したくありませんので,一回は治療食なる物
を少量買って成分をチェックするか,桃はドッグフードは喰わないのでどのような物
を食事の原料にするべきかを相談することにします.

実は今日は,桃の膀胱炎治療に関連して結石に関わる全く別の話を書くつもりだっ
たのですが,つい横道にそれてしまいました.





トップへ
戻る
前へ
次へ