
あれやこれや
待ちに待ったゴールデンウィークです.年に3回の長期休暇のひとつ.でも,この年
に3回の長期休暇に鎌倉の実家に帰ることはほとんどありません.なぜなら私はわ
ぁがままだからです.列に並ぶのが嫌い,混雑が嫌い.故に,観光地でもある鎌倉
には混むと分かっている時は帰りません.これらの連休の翌週の土,日がアナなの
です.この日は逆に普段以上に空いています.とは言っても夏休み中の土,日はア
ナではありますがやはりある程度の混雑は我慢しなくてはなりません.
普段は真面目なサラリーマンや学生でも観光客になった途端“旅の恥は掻き捨て”
を実践します.だから“観光客は嫌いだっ!” 江ノ電鎌倉駅は常に整列乗車.降車
側のホームから乗客が全員降りたのを見計らって乗車用のドアが開き一斉に乗り
込むことになります.だから,これから乗る人達は乗客が降りるのを今か今かと待っ
ていますが,そのまま座り続けて藤沢行きに乗って行くつもりか,なかなか降りず,
衆人環視の中で車掌に注意をされ恥をかく人が毎回居ます.そういうのは殆どが複
数で遊びに来た観光客.旅の恥は掻き捨てといってもズルは許して貰えません.
こんな江ノ電でも更に格別に混み合うのが花火大会の日.この時の混み方は半端
じゃありません.江ノ電鎌倉駅のホームには入れないなんてレベルじゃないんです.
ホームからずっと離れた改札口から構内に入るだけでも押し合いへし合い.でも,
江ノ電の途中駅に家がある私は観光客に負けるわけには行きません.では,どうす
るか.このページを見た方にだけお教えしましょう.内緒ですよ.それは次の和田塚
駅から乗る.簡単なことです.幾ら超満員でも電車が動いて揺れれば多少こなれて
数人は入る余地が出来ます.そして和田塚駅から乗る人はゼロに近い.もちろん改
札制限もラッシュもなく一番空いたドアから乗ることが出来ます.鎌倉駅で1時間も
待たされた挙げ句やっと電車にたどり着き,ドア口で押し合いへし合い掴み合いで
苦労して乗るより,たった5分歩くだけで,さあ乗って下さいと江ノ電のドアが開いて
待っているのです.
これほどの殺人的ラッシュは最近のJRでは事故の時くらいですが,京成成田線は
未だに毎日の通勤風景らしいのです.この件については後日書くつもりです.いず
れにしても通勤電車のラッシュ時は殺伐としたもの.一触即発状態で皆目が血走っ
ています.でも,観光地のラッシュは大分趣が違います.大方がアベックですし,浴
衣がけのお姉さん達も大勢乗っています.やっとのこと江ノ電に乗れたという安堵感
からか,これからみんなで花火を見に行くぞという連帯感からか,意外なほど和やか
なのです.揺れる度にあっちに押しつけられこっちでへたり込み,“ギャーギャー,ピ
ーピー,キャッキャッ”状態なのですが結構それなりに楽しんでいる風情なのです.
その中には私のようなスーツを着た通勤帰りのおじさん達も混じっていますが,一緒
になって“ギャーギャー,ピーピー,キャッキャッ”.郷に入りては郷に従えです.
そうは言っても人それぞれ.苦々しく思っている変わり者のおじさんだって一人くらい
はいるものです.何がそんなに面白くないのか,苦虫を噛み潰した顔(誰がこの言葉
を思いついたのか知りませんが素晴らしい言葉ですね)をして一人外を見ています.
このおじさんだけが一人蚊帳の外.
いつものように,いやいつも以上に長い前置きになってしまいましたが,これからが
本題です.花電車のことを書いたことがあります(2007.3.6).今日はその続きでもあ
るんです.こんな満員電車の中に虫が入ってきたらどうなるか.既に“ギャーギャー,
ピーピー,キャッキャッ”状態でしかも自由度がほとんどないところにです.一瞬にし
て車内を飛び回る虫(大きな蛾)がその場の主人公.満員の全乗客(-1名)の関心
はたった一匹の虫に集中します.虫が移動する度に大騒ぎ.私も虫が大の苦手な
のでもちろん一緒に大騒ぎ.でも一人だけ無関心で外を見ているおじさんが.きっと
仲間に入り損ねて意地を張っているのかも知れません.それとも遠い過去に思いを
寄せて・・・妄想の世界・・・怖い.喧噪の中,そのおじさんだけ不思議な別空間を構
成していたのです.
ところで飛び回る蛾さん.さてどこに止まろうか.止まるにも車内は大騒ぎで安心して
羽を休めるところなんて・・・ありました.そう,たった一個所動かない場所が.
ようやく安住の地(そのおじさんの後頭部)を見つけた蛾さんと生きたリボンを付けた
気の毒なおじさんという構図に満員の車内は益々大騒ぎ.大爆笑.ヤンヤの大喝
采.一人おじさんだけ夜の海を見つめて・・・遠い昔の思い出を・・・.なかなか良い図
でしょ.この電車に乗り合わせた人達は“鎌倉に来て良かった”,終生この美しい思
い出を忘れることはないに違いありません.
|
|
|

|