
あれやこれや
年のせいで努力と工夫が億劫になり,ついついリコーダーより音程が自由なフルー
トばかり吹いていると書きました(2007.4.14 むかしのむしが).でもこのところフルー
トの調子が悪いことと,公約(?)通りこの連休はリコーダー三昧.この件に関しては
宿題ということにして,今日は最初に出す音,第一声について思い付いたことを書き
ます.
この前,といってももう1ヶ月以上前ですが,ヴェルディの“運命の力”というオペラを
観劇して感激した話を書きました(2007.4.1 運命の力).主人公は外国から招聘した
文字通り大型ソプラノの有望株.流石と思わせる歌唱を聴かせて貰い,入場料を儲
けた感じでした.でも,前に書いた通りこの人は音痴? 勿論,そんなことはありませ
んが,第1声の音程が低い.最初にこの声を聞いたとき“アレッ”と感じ,周りを見渡
してしまいました.でもみんな真剣に聞き入っているので,細かいことを気にするの
は私だけだったのでしょう.それなりの効果を上げるためにわざと低めや高めに音
を取ることは普通に行われます.でも,わざと低く出しているとは思われません.変
だったのですから.なお,耳にタコができる程何回もテバルディの“運命の力”を聞い
ていたので,自然に心の中で予期していた音と違うと感じた私の方に問題があった
可能性もあります.
ところで,皆さんはいきなり正しい音程で声を出すことが出来ますか? 少なくとも私
は全くダメです.前奏を良く聞いていて音程を認識しているつもりでもダメです.声帯
をこの程度に絞ればこの音程になるという感覚をもっていないのです.きっと“運命
の力”の主演歌手も私と同じような音痴だったのでしょう.でも私との決定的違いは
(沢山ありますが)瞬間的に音程修正できることと,その後は外さないこと.私はいつ
まで経ってもコントロールできません.そういえば,魔笛の中の“夜の女王のアリア”
なんてどうやっていきなり出すあの突拍子もない音を決めるのでしょうか.プロの歌
手の(間接的な)知り合いが何人かいる(た)のでこの辺の事情を聞いてみる機会が
ありましたらいずれご紹介しますね.
これからが本題.冒頭に書いたようにフルートの音程はかなりの自由度があり,こ
の点はリコーダーにはない大きな長所でもあるのですが,自分で声を出す歌と一緒
で,第1音の音程は吹いてみなければ分からない.物理現象ですので先ずは音を出
してみなければ正確にはどんな音程で鳴るのか分からないのです.でも,私の歌と
決定的に違うのは修正が容易.息づかい(口の形や吹き込み方,角度)だけで次の
音,あるいは第一声を出した直後なら幾らでも音程修正可能です.一方,リコーダー
には息の強さ以外に音程修正の余地がないのです.だから事前の調律が全て.後
は指使いなどテクニックを駆使してのいわば小手先の音程調節が必要で,リコーダ
ーを完璧に操るプロはどんな訓練をしているのか不思議に思ってしまいます.逆に,
音程自由なフルートの音程は演奏者の全責任とも言えます.その証拠に,音感の悪
いプロのフルーティストはいません.ただし・・・.
名曲満載のオペラ,カルメンの第三幕への前奏曲.ハープの伴奏に乗せてフルート
が牧歌を歌うカルメン中でも最も美しい名曲です.演奏技術的には実に易しいので
すが,フルートの最初の音(変ホ音)が意外に難関なのです.このことが書かれたり
言われたことは余り無いと思いますが,演奏する側にとっては誰でもが悩みの種な
のではないでしょうか(私だけか?).正規の指使いでは少し高くなるので,僅かに低
めにコントロールする必要があるのです.そのコントロールの程度は実際に音を出
して聞いてみなければ(私には)分かりません.この件について今まで話題になって
いないのは,思い入れがあるが故に気にしているのが私だけなのかも知りません.
それにしてもこの曲も,かの有名なアルルの女のメヌエットもフラットが3つ付く変ホ
長調.だからどうと言うことはないと思われるかも知れませんが,演奏側から見る
と,技術的には易しいので,やはりどうと言うことはありません.でも,音階だけには
滅法神経を使う隠れた難曲でもあるのです.ビゼーという人は性格が悪かったのか
楽団のフルーティストに恨みを持っていたのかに違いありません.
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