
あれやこれや
フォームとはプラットフォーム,日本語の駅のホームのことで,ホームは家,住処の
こと.詰まらない駄洒落(のつもり)でした.では誰がフォームをホームに? 昭和50
年代の話です.ホームレスがフォームをホームにしていたということではありませ
ん.実は,フォームをホームにしていたのは蟹さんです.海岸ならではの風景です
ね.
当時の江ノ電の駅は線路の廃材が使われていました.今でも結構あちこちに使って
いますが,鉄柱や柵はレール,建物など木を使うところは枕木といった具合です.当
然フォームも枕木を組み合わせて作ってありました.だからボコボコ.大穴小穴のア
ナだらけ.そしてフォームの枕木の小穴をホームにしていたのが蟹さん.ですので,
七里ヶ浜駅の至る所に美味しそうな蟹が見え隠れしていました.
ある日,江ノ電の中で座っているとふと,前の床を美味しそうな蟹が歩いているのが
見えました.私より本数は多いのですが短い足で一生懸命歩いていました.進行方
向とは逆の方向に.幾ら頑張っても電車に前の方に持って行かれてしまうのに・・・.
あの蟹さんはホームにはもう戻れませんね.
私は必要がなければまず旅行はしません.最新の旅行が数年前に勤め先からのご
褒美の25年勤続記念旅行.その前は忘れるほど昔の新婚旅行.確かに新しい土地
に行けば,その度に心を揺さぶられる発見があるのは分かっているのですが,地上
に居る以上たった1日で地球を1周するという大移動(地球の自転)を常に続けてい
る訳ですので,水平移動(物理的にはエネルギーの変化を要しない)のためだけに
貴重な化石エネルギーを浪費することへの罪悪感をついつい重く考えてしまうので
す.そして,江ノ電の中を夢中で歩く蟹の愚かさを考えてしまうのです.
蟹は電車に乗ったらもうホームへは戻れませんが,では犬は? これは犬によります
ね.ほぼ同じ駅で乗り降りする犬をしばしば目にしていたので,移動手段として電車
を常用する犬も希にはいるのでしょう.江ノ電の駅員の中に犬語を喋れる人が居な
いらしく,いつもその犬は無チン乗車をしていました.白っぽい犬でしたが最近その
犬を見ることは全くありません.初めて見てから大分経つので,通勤からはもう引退
したのでしょう.
江ノ電のその犬は行き先を理解しているので安心ですが,大船駅で人の流れにつら
れて東海道線に乗り込んでしまった犬を見ました.ホームが違うので,しかも咄嗟の
ことでどうすることもできませんでしたが,この犬は間違いなくフォームに紛れ込んだ
ばっかりにホームレスになってしまったに違いありません.今でもその時の乗り込ん
で行く様子が目に浮かび,阻止できなかったことに胸が痛みます.
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