
あれやこれや
“そこのモーターボート,ここは海水浴場です.直ちに出て行って下さい”・・・“何処
だ,何処だ?どれだ,どれだ?”・・・“あっ,あれか.何やってるんだ?馬鹿なヤツだ
なぁ.”,芋の子らの話し声が聞こえるようです.昨日の図の(B)点です.数万×2の
目は一斉に私(の船)に集まります.生まれてこの方,これほど世間の注目を集めた
ことはありませんし,今後も無いでしょう.名誉という点で僅かな違いはありますが,
甲子園のピッチャーと同等くらいの注目度でしょうか?
エンジンが止まった(A)点で直ちにアンカー(ボート用の錨)を入れれば良かったので
すが,混乱していたせいで,その余裕はありませんでした.それに遊泳区域の方に
打ち寄せられることは正に想定外.ここで慌ててアンカーを入れてももう遅い.繰り
返し繰り返し,“そこのモーターボート・・・”.うるさいなぁ,分かっているって.でもどう
することもできません.後は助けを求めるのみ.でも,私は必ずしも遊泳禁止区域か
ら浜まで泳ぐような蛮勇は持ち合わせていません(2006.7.25 スイマー誕生・・・せ
ず).遠くに見張り台が見えます.“そうだ,あそこに合図を送ろう”昔の記憶で曖昧な
のですが,手信号による遭難信号の合図は手を大きく広(逆ハの字)げ頭の上で輪
(Oの時)を作る.サッカーのOKサインのような感じです.これを繰り返すのだったと思
います.
数万の観客から見ればパフォーマンス,単にウケを狙っているようにしか見えなかっ
たかも知れません.でもこっちは真剣そのもの.その間も“ここは海水浴場です,直
ちに・・・”,何と鈍いヤツらだ.そうこうしているうち,流石の鈍いヤツらもこれは変だ
とやっと気付きました.見張り台に上るくらいなら救難信号の勉強くらいしておけ.放
送内容が変わります.“救助艇は遭難ボートの救助に向かって下さい”.ついに“遭
難ボート”にされてしまいました.でも私の発した遭難信号の意味は“遭難したから救
助してくれ”という意味に間違いは有りません.結果的に,出演料タダで漫才をやっ
てしまいましたが,これで飢え死に,干乾しだけは避けられます.
来ました来ました,やっと来ました救助艇が.海水浴場の救助艇の目的は溺れた人
を助けること(だけ).あんなちっちゃな手漕ぎボートが来るとは思っても居ませんで
した.あれでどうするんだろう.でも,流石はプロ.私の船の先端にロープを結びつ
けて堤防の突端(C)の位置まで引っ張ってくれました.それまでの数分間の情けなか
ったこと・・・.文字通り筆舌に尽くしがたい屈辱.何しろ小型とはいえ5mを超えるキ
ャビンクルーザーを4人の手漕ぎボートに引っ張られる姿を想像して下さい.でも,救
助はそれまで.そりゃそうですよね.誰も溺れていないのですから.救助員も大した
もの.用が済んだとばかり,ほぼ無言でさっさと引き上げてしまいました.今回の場
合は,遊泳区域から邪魔者を排除することだけが彼らの役割ですものね.
さてこちらは動けない船を堤防の突端に繋がれてもどうしようもありません.まあ,遊
泳区域にもう入り込むことはないし,歩いて丘に上がれるんだからこれ以上の贅沢
は言えません.有り難いことです.
この後始末は,また次回.
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