
あれやこれや
昔住んでいた大森にちょっと寄っただけなのに,次から次と昔話が思い出されます.
申し訳ありませんがしばらくは,全くの私事が続いてしまうかも知れません.
私の通勤時間は早朝.勤め先付近の広い川沿いの道を通る頃は未だ6時台です.
だからジョギングや犬の散歩など風景も長閑.そんな時間なので都会地といえども
犬を野放しで散歩させている人もしばしば見掛けます.ジャーマン・シェパードや,グ
レート・デンを野放しにされたら困りますが,野放し犬はシーズーやせいぜいパグ程
度.まれに自由に走り回るラブラドル・レトリーバーもいますが,多少大きくても大人
しい犬なので危険はなさそうです.まあ平和な光景ではあります.
ここからが昔話.大森に住んでいた昭和30年代は犬を野放しにするのは当たり前.
あちこちで自由に行動している犬を見掛けました.友人のK君宅では毎日夕方,犬
を外に放ち,犬は勝手に自分のペースで散歩をし,気の済む場所で用を足したら帰
ってくるというのが日課でした.この犬は,むやみやたらに噛みつかないとかゴミの
ポイ捨てはしないなど人社会に溶け込むための最低限のルールをわきまえていまし
た.彼だけではなく,1人(匹)で行動する犬は人社会の掟に従わねばなりません.で
も,どの世界にも勝手なヤツはいるものです.その時は同級生のS君と歩いていまし
た.そして同じ道を同じ方向に薄茶色の大きな犬も.種類は分かりませんが,まあ
秋田犬と考えて大きな間違いはありません.サイズ,雰囲気はそんなもの.S君と私
は顔を見合わせながらどちらともなく言いました“デカい犬だねぇ”.10mほど前を同
じ方向に歩いていた彼氏は後ろからの話し声にちょっと反応しました,“後ろのガキ
どもはオレのことを噂しているな,失礼なヤツらだ”.我々はけなしたつもりどころか
むしろ畏敬の念を持って“デカい”と言ったのですが,正しくは伝わらなかったようで
す.
その犬は左側の路地に消え,我々がその路地を通り過ぎようとした時です.驚くべ
き事に誤解に基づく理不尽な復讐を誓ったその犬に待ち伏せされてしまったので
す.いきなり跳び出して来て,S君の(多分)左足をガブリ.巨大な秋田並みの犬です
よ.辺りは血の海・・・それほどではなかったとは思いますが,我々はパニックです.
何のことだかさっぱり分からない内にその犬は消えてしまいました.犬の行動を知り
抜いている私なら,そう易々とは噛まれなかったでしょうが,そこは運の悪い(左側に
いた)S君.思いっきり噛まれてしまいました.
実はこんな事は当時は良くあったことなんです.だから,余り話題にもなりません
が,今なら大騒ぎでしょうね.下手したら新聞沙汰.この時は,誰かの通報か,見て
いたのか,飼い主がS家へ自首して来て一件落着しました.“予防注射はしてありま
す”と平身低頭でしたが,確かにこの頃は未だ狂犬病発生の可能性があった時代で
す.何をそれほど気にするのかと思いましたが,致死率100%のこの病気のことを思
うと噛まれた方にとっては深刻な問題だったんですね.
幸いなことに日本での狂犬病の発生は久しくありませんが,これはある意味で偶然
のことなんだそうです.ハムスターや猫でも感染するということ(昨年,ニューヨークで
猫に噛まれての感染事例も),最近交流の著しい中国では毎年数千人が感染して
亡くなっていること(インドは更に一桁上)などを考えると,いつ発生してもおかしくな
いんだそうです.例え,小さな犬といえども,繋がっていない犬の側には近付かない
に越したことはありません.犬は噛むのが商売です.
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