あれやこれや

2007年08月30日
続パンツを求めて(成都16)


なるべく前置きは短くしないと・・・.中国に原料調達の拠点を作りたいNさんは嫌が
る私を何としても出張に引き込まねばなりません.手を替え品を替えの誘惑です.豪
華絢爛たるホテルの内外,武候祠等歴史的名所旧跡,・・・.それは無駄な努力とい
うもの.なぜなら単純に,飛行機に乗るのが怖いということだけが中国に行きたがら
ない理由なのですから.それに歴史的名所旧跡や豪華ホテルなんかには全く興味
はありません.でも,良く調べてみると市内にある地学博物館には世界に3体しかな
い貴重なマメンチサウルスの骨格標本があるとか.この手の誘惑には弱い.これが
決め手でした.

嫌がる私を無理矢理連れ込んだと思っているNさんは,出発前から何くれとなく面倒
を見てくれました.これは無神経なNさんにとっては大変なことなのです.そして,何
故か彼がしきりに強調するのは“パンツは持って行かなくても良いからね”.これって
不思議な会話だと思いません? 唐突に家庭外では非日常の用語パンツが出ること
も,たったこれだけのフレーズを数回も聞かされたことも.同じことを何回も言うのは
Nさんの特徴ではあるのですが.

前にも書いた通り,改革開放の余韻が残る十数年前の中国奥地の田舎町のことで
す.物価,特に人件費と人手のかかる製品は極端に安く,それこそ使い捨てにして
も洗濯代より安いほどでした.例えばパンツが日本円で20円とか.そうなのです.
私にとって初めてのこの成都出張の前に,Nさんは既に2,3回程現地調査の経験
があり,“そうか,パンツは洗濯するより新品を買う方が安いのか”と,しみじみ考え
たのでしょう.でも,私は(商社のお二人も)そんなつもりはありません.ごく普通に着
替えは準備しましたが,意志堅固な本人だけはパンツ不持参を実践.

成都に着いて中国の相手先からの一通りの歓迎会の後,私たちだけになると,真っ
先に“おい,パンツ買いに行こう”.こうして4人のパンツを求める成都行脚(?)が始
まったのです.商社のお二人の中国語は達者ですが街は未だに不案内.パンツ屋
など知るはずがありません.今はイトーヨーカ堂が出店していますし何を買うにも不
自由のない成都ですが,当時は通常の買い物さえままならない状態だったのです.
勿論,英語は通じません.デパートはあるにはあるのですが,照明もロクに点けてい
なくて薄暗く,しかも店員はフロアに1人か2人.黙って売り物を持って行く人(泥棒)
が居ないかのチェック程度しか仕事はないようです.やっと見つけた店員に話を聞
いてみてもキョトンとするだけ.だって,4人の外国人にいきなり“パンツは何処だ?”
なんていわれても店員としてはかつがれているとしか思わないでしょうね.それにも
まして,デパートとは名ばかり.商品を売る気なんてさらさらないのです.店員は公務
員で売り上げがデパート経営にとっても店員にとってもメリットがないことが理由なの
だと思います.品物を売るより何もしない方が楽に決まってます.それでもやっとの
ことで下着売り場まではこぎ着け,店員が差しだしたものは・・・どう見てもブルマ.女
の子が運動会で着るあのダルマみたいな丸いヤツですね.“Nさん,絶対に誰にも言
いませんからこれにしましょうよ”と言っても“これはいやだ”と聞きません.私はどう
でも良いと思うのですが,NさんにはNさんの美意識があるのです.あるいは“誰にも
言わない”と言いながら“文章に書くのなら約束違反じゃない”と,私があとでバラす
のをちゃんと見破っていたのかも知れません.だから買わなかったのは正解でし
た.でも課題が残ってしまいました.そしてパンツを求める成都行脚は続きます.





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