
あれやこれや
“ウォーリーをさがせ”という絵本がありました.大昔の子供の本ですが,子供だけで
はなく私も楽しませて貰いました(桃は何故か余り興味はないようです).見開きのペ
ージにごちゃごちゃと小さな人が何百人と書かれていて,それぞれが様々な(あるい
は似たような)服を着て勝手なことをしている.この中からたった1人のウォーリーさ
ん(囚人服のようなシマシマの服を着ている)を探せばそのページは完了というゲー
ムの絵本です.これとカルメンとどんな関係が?
カルメンの最後の見所.未練タラタラの疲れ果てうらぶれたストーカー.同性として
は実に情けないドン・ホセが建物に見え隠れしながら,人混みの中のカルメンを見て
います.友人達はカルメンに“ホラ,アイツが見ているよ”と注意を促しますが,気丈
なカルメンは自分の意志を貫きます.DVDでは,この場面は主人公達の視点で,う
らぶれたホセが大写しになるのでホセの存在は良く分かるのですが,舞台の上のホ
セはウォーリーそのもの.正に“ホセをさがせ”なのです.だって,20m×20m以上も
ある大きな新国立劇場の舞台に100人近い人達,観客,野次馬,警官,物売り,・・・
がひしめいている.その中に目立たないような衣装を着て,しかも,ストーカーですの
で,一応建前としては見つからないように物陰に隠れているんですよ.
双眼鏡でスキャンしてもよく分かりません.結局カルメンとホセの2人だけの最後の
場面になるまでは,“ホセをさがす”ことは出来ませんでした.ウォーリーであれだけ
鍛えたのに学習の成果は出ませんでした.鍛え方が足りなかったか.
全ての観客に,こっそりと隠れていることが分かるように見せる演出とはどんなもの
なんだろうかと考えてしまいました.スポットライトの利用は手っ取り早いのですが,
不自然.また,私の発明した“ココに居ます”と上から矢印を吊す方法は黒子的で面
白いアイデアだと思うのですが,マンガチックで悲劇の結末に相応しくない.やはり
気付いた人だけが分かる程度で仕方がないのか.
スポーツ中継などにも同じことが言えますが,“ここを見ろ”とテレビ画面に示すのは
良いことなのか不自然なのかは議論の分かれるところではありますが,インスタント
のテレビやDVDとは違った観劇の難しいところでもあるのですね.
それはそうと,本物の良さは,逆にカメラが写さない所まで見えること.サッカーで攻
撃中に暇なキーパーは何をしているか? 野球で三遊間のゴロに対してキャッチャー
や,右翼外野手は何をしているか? カルメンで兵隊さんが街行く人達を眺めている
時に壁の上にいる左官屋さんはちゃんとセメントをこねているのか? 等々です.こ
れらこそ現場に行かなければ知り得ない世界なのです.前にも書きましたが純粋に
音の良さ(何をもって良いというかは難しいのですが)を求めるのなら,良くチューニ
ングされた再生機でスタジオ録音番のCDを聴くに限ります.携帯電話の明かりにビ
ックリさせられることも肝心な場面で隣の人にゴホンゴホンとやられることもないので
すから.
|
|
|

|