第五回  「たぶん。」

ご存知の方も多いかと思いますが、
私が文字で話す時(チャットや掲示板等)、
よく、最後に「たぶん。」と言います。
これを聞くと、初対面などで私とあまり話したことのない人は、
とても不安に感じるようです。
そう思われるのも無理はないのですが、
これはこれで、私なりの考えがあってのことなのです。
(もちろん、親しい人に冗談で言うこともありますが。)

私は「絶対」とか、「ずっと」とかいう言葉を使うのはあまり好きではありません。
「命あるものは云々」などという理由ならかっこいいのかもしれませんが、
私の場合はもっと小さなことです。

それは、言ってみれば「責任からの逃避」のようなものです。
一般的に、「たぶん」とか「おそらく」という言い方が嫌われているのは、
そのような表現をすることで責任の所在をはっきりさせないからではないかと思います。
それは至極もっともなことではあるのですが、
私は、(少なくとも友人同士レベルの会話では)、
全ての言動に責任をとりたくはありません。
無論、できる限り自分の発言には責任をとりますが、
不確定要素等がある状況で、その責任を事前に逃避する権利もあると思うのです。
確かに、その時は相手を不安にさせることもあるかもしれませんが、
そこで断言しておいて、後から否定することになるよりは、
相手にも不安材料があることを知ってもらったほうがいいと思うのです。
社会に出て、仕事の上での発言ということになったら、こうはいかないのはわかっています。
ですが、私生活でならそれくらいの余裕があってもよいのではないか、と。

このことを書こうと思ったのは、つい最近、私自身が嫌な思いをしたからです。
確かに、その状況では私も「ずっと」と言うべきだったのですが、
それでも、「何があるかわからない」と思い、少し悩みました。
結局、私も「ずっと」と言ったのですが、現実は「ずっと」にはなりませんでした。
言った時には間違いなく、「ずっと」だと思っていましたが、
どれだけ思っていても、現実はそううまくいかないのでしょう。
このことがあって、私は今まで以上に「絶対」を信じなくなりました。
もうあんな思いはしたくないので。
かなり抽象的な表現になっていますが、私事ですので、
内容は皆さんのご想像にお任せします。

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