和田岬線2.7kmの旅〜大都会のローカル線〜(2)


和田岬線の車窓

運転室越しに和田岬線の沿線風景を見る。
2.7kmの沿線風景
 ポイントを左にガクンと揺れ単線に入る。左に大きき曲がり、高架を降り住宅街を走る。近郊電車風のオールロングシートだが、気動車なのでゴゴゴとエンジン音を低く響かせている。やがて、右手に鉄道車両を製造する川崎重工への引込み線が見え、回送されるのを待ち侘びていそうな小田急の電車が顔を覗かせている。

 工場地帯の中を走るのだろうと予想していたが、ひたすら住宅やマンションが立ち並ぶ中を40km前後の速度で真っ直ぐ走っている。前方の右下に駅の残骸のようなものが見え、その横を一瞬で通り過ぎた。後で調べたら鐘紡前駅の跡で昭和30年代後半で廃止されてたという。

 夕暮れの神戸運河を渡り、建設中の神戸ウイングスタジアムが近くに見えてくる。Jリーグ、ヴィッセル神戸の本拠地となり、2002年サッカーワールドカップの会場の1つとなる。徒歩圏内なのでワールドカップの観客輸送に使ったら面白いなと考えていると、前方に和田岬駅のホームが近づいているのが見えてきた。

終点、和田岬駅
 和田岬駅は1面1線で、周辺はマンションや民家が並ぶ住宅街で庶民的な飲み屋などもある。それら家屋とホームは低い金網で仕切られている。だが数ヶ所は途切れていて階段で下りられる、途切れ目の横に電話ボックス位の大きさの小屋がある。謎めいた物だが最盛期はそこに改札のような物があったのかもしれない。

 続々と帰宅客が和田岬駅に集り、先程乗ってきた列車の中に消えていく。5分後に兵庫に引き返す6両編成の列車は、全ての席が埋まり立ち客も多い。鉄道ファンは乗ってきた列車ですぐ引き返すためか、忙しそうに写真を撮っている。鉄道ファンが列車に飛び乗ると、空色の車体は駅から離れ、どんどん小さくなっていく。レールに分けられた住宅の間の先には、市街地を見下ろすような高取山がそびえ立っていた。

行き止まり部分には無人駅ながら立派なコンクリートの駅舎がある。でもドアなどが無く、風や寒さをもろに受けてしまう。むしろ大きな東屋風駅舎と言った方がいいかもしれない。もっともこの駅で長時間待つ必要があるような利用はないだろうが。

 昔は有人駅だったようで、吹きさらしの待合室に白いシャッターが下りている窓口が2つもある。待合室の改札口の右横に時刻表がある。一応、5時から0時までの欄があるが朝夕の欄しか書かれていなく、まん中の空欄に「9時から16時までは列車は運転されておりません。」と注意書きが書いてある。左側には乗車券は兵庫駅に到着後に買ってください。列車にはそのままご乗車くださいという旨の注意書きがある。兵庫駅の和田岬線専用改札口を抜けたら精算機があり「和田岬駅から…」と書かれていたので、そこで買うのだ。

 駅の外観は白く塗られ屋根は灰色の瓦が葺かれていて、左横には、かつての駅務室が付け足したようにある。雨よけのように伸びた屋根を支える柱が短い間隔で並んでいる。

 駅舎を出ると工事中の神戸市営地下鉄海岸線の出入り口の階段があった。7月に開業で、ここに和田岬駅が設置される事になっている。目の前は道路で、更に向かい側に三菱重工の工場があり、和田岬線の主要顧客となっている。工場の南側は海で“岬”と言われるだけの事はある。
 
 薄暗くなり引き返すことにして、兵庫行きの列車に乗った。先ほど同じように席が全部埋っていて、非冷房の車内は少し蒸し暑い。仕事を終えた人々は疲れた中にもリラックスした雰囲気が漂う。

 兵庫で多くの乗客が一斉に降りると、狭いホームと通路は大勢の人で混み合いノロノロ歩きとなる。要領がいい人は、混み合うホームを避け、抜け道のように、編成の端まで車内を早足で歩いてから降りている。改札口の前に辿りつくと、「和田岬駅からに自動きっぷ売場」と表示された自動券売機があり、数人の列が出来ている。これなら和田岬駅や車内できっぷを売る手間が省け、兵庫駅の和田岬線用改札口でチェックが入るから効率が良く、よく考えたものだと関心する。と言っても、人込みの流れは、そのまま件の改札口に向かっていたので、定期利用がほとんどなのだろう。
 
有人改札口を通り、ここから約3時間の帰宅の途に就いた。
[2001,4月訪問]

和田岬線の終点、和田岬駅に到着

和田岬駅に到着。運転士がタブレット
を持って何かをしている。
和田岬駅駅舎内

和田岬駅駅舎内部。元有人駅だった
ようだが、今はきっぷ売場のシャッター
が下ろされている。
薄暗くなる駅

日が沈み暗くなっていく和田岬駅。
住宅を分けているレールの先には
高取山がそびえる
和田岬駅駅舎

和田岬駅駅舎外観。小振りながら
も意外と立派なコンクリート駅舎。
外から和田岬駅ホームを見る。

外から和田岬駅ホームを見る。
なぜか植木がズラリと並んでいる。
兵庫駅、和田岬駅から乗った乗客専用の切符売場

兵庫駅に着き、通路を進むと突き当たりに
「和田岬駅からの自動きっぷうりば」と
書かれた券売機がある。和田岬駅と車内では
切符を販売してなく、ここで買うことになる。

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