竹鼻線(江吉良-大須)の廃線跡を歩く(2)


廃線約1ヶ月後(11月上旬)

市之枝駅

市之枝駅。
 市之枝駅に到着。近くのスーパーの自動販売機でジュースを買い、ホーム上のベンチに座り一休み。すれ違いができる駅だったが、片側のレールは取り外され単線の駅になっていた。隣りに30台程度収納可能な屋根つきの自転車置き場あり、今も使えるが、数台しか置かれていない。代替バスのバス停が100メートル程離れているので、自転車利用者には不便だ。もう列車が来なくなった駅には無用の長物となってしまったのかもしれない。
中区駅、羽島は円空出生の地

円空誕生の地にある中区駅。
 中区駅のある羽島市上中町は円空仏で有名な江戸時代の僧、円空が生まれた場所だ。中区駅跡のホーム上には「鉈彫りの名僧 円空上人誕生の地」という銘が、中区駅の墓標のように虚しく立つ。

 この駅から歩いて数分の所に中観音堂、円空仏資料館があり、円空仏というものに漠然と興味があったので、廃線跡から一旦離れ足を運ぶ。ご本尊の「十一面観音像」など、17体の円空仏を、ガラス越しなど遮断するもの無く、彫り跡がリアルに見えるほど間近に見ることが出来た。円空仏にはきらびやかさや荘厳さはないが、柔和な微笑みを浮かべる顔や、荒々しくダイナミックな鉈彫りなどがユニークで親しみがあると素人目には感じる。当時の子供もそう感じたのか、テープのガイドが「子供達が円空仏を引きずって遊んだため、すれているものもある」と案内していた。仏像であり、現代では貴重な文化財でもある物によくもまあと唖然とすると同時に、微笑ましかった。

 ここから約500m北の長間駅跡に近い長間薬師寺にも円空仏が9体安置されていているので、この後、廃線跡巡りの途中で立ち寄った。 
今は廃線跡沿いのコスモスが美しい季節

竹鼻線廃線跡沿いに咲く秋桜。
 6月に来た時の車窓風景で印象に残っているのは、車窓から見える木曽川の堤防、なみなみと水を湛えた水田と、そこに植えられた青々しい稲だ。

 11月の今は、水田は涸れ、稲は刈り取られた。その代わり、コスモスが花盛りで、あちこちでピンクと赤色の小さな花を咲かせている。柿は美味しそうな実を付け、失敬したい欲望に駆られる。
長間駅駅名標のポール

長間駅の駅名標のポール。
 東海道新幹線の高架下を通り、その隣りの名神高速道路の高架下には長間駅跡があった。駅名標が抜かれたポールで後ろの建物をフレーミングしてみる。
 大須を除いて、ホーム、待合所など駅の構造物はまだ残っていたが、駅名標は全ての駅で抜き取られ、フレームが残っただけの、まるでスカスカの状態だった。
犬に睨まれる

レールの側にいた犬に睨まれる。
 沿線は犬を飼っている家が多く、忠実な犬達は見慣れない私が通る度に、鎖が千切れそうな勢いで飛び掛ろうとしたり、激しく吠えてくる。今日は何回吠えられた事だろうか…。
 牧野駅の無料貸自転車

 牧野駅待合所にあった無料貸自転車。
 牧野駅もかつては列車の行き違いができる相対ホームだった。だが、片方にはレールが無く、もう長い事使われていなかったようで、ホーム上は雑草で覆われている。

 屋根のある待合所に入ると黄色い自転車が置かれているのが目に入った。放置自転車ではなく、看板には「羽島市無料自転車貸自転車」と書かれていた。竹鼻線が廃線となった今、誰が使うのだろうか…?横のベンチにはまだ使っていそうなクーハンが置かれていて、一瞬「まさか中に赤ん坊が…」と思いどきっとした。

 空が徐々に暗くなり始めている。そんな時、不意に待合所の電気がパッと灯った。もう誰も利用しない駅だが、自動で灯ったようだ。
羽島線との分岐点付近

江吉良駅手前、羽島線との分岐点辺り。
 大須駅の手前から、ここまで途切れる事無く続いてきたレールが、江吉良駅近くの羽島線との分岐点手前で途切れていた。途切れ目辺りの幅がぐっと広げられ、レールの間にはコンクリートの電柱のようなものが立っている。江吉良側のレールの途切れ目には、枕木と標識で簡単な車止めが作られていた。

 江吉良駅で帰りの列車を待っている時、ふと後ろを振り向く。新羽島に向かう銀色に光るレール、片やすっかり錆び付きび、大須に向かって伸び途切れたレール…、竹鼻線の江吉良-大須間が羽島線より随分先に先に開業したのに、羽島線の方が生き残り、今や竹鼻線、笠松-江吉良間と一体になっている。まさに、両線の明と暗を思い知らされる気分だ。

[2001,11月訪問]

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