大社線廃線跡紀行〜栄華の跡(2)



大社線、荒茅駅

荒茅(あらかや)駅跡。
大社線廃線跡を歩く

 遠回りし内藤川を越え、歩みを進めると途中からはまたサイクリングリーロードとなった。廃線から10年経つが整備は思ったほど進んでいない。

 そして2つ目の駅の荒茅(あらかや)に到着。コンクリートのホームが未だに残っている。この駅はさすがに出雲高松程の規模ではなく、ホームはそれ程長くなく、1線のみで行き違いが出来なかった駅だったと思われる。ここも暫くはホーム上に駅名票と待合室があったというが、今は撤去され雑草が茫々と生えている。大社方に回ると黄色と黒の縞の柵がまだ残ったままだった。
荒茅駅ホーム上のレール

荒茅駅ホームの雑草の間から
生えているように伸びるレール。

 草生したホーム上に上がり何かが無いか探した。緑のフェンスが途切れているホーム中程の、待合室があったと思われる辺りで、レール同志を溶接した赤い謎の物体がホーム上から短く伸び出ているのを発見した。古レールが何か駅の施設として転用されていたのだろうが、撤去され、ホームに埋まっている部分だけが雑草に埋もれるように残されている。断面は乱雑に千切ったかのように荒々しい。もしかしたら写真で見た待合室の鉄筋か何かに使われていたのかもしれない。
未舗装の大社線廃線跡

再び未舗装道が続く。
 廃線跡はまた無舗装の道となって続いていた。だけど先ほどの道よりバラストよく残っている感じがした。営業してる線ならバラストの色は錆びた茶色っぽい色が濃く染み付いているのだろうが、長い歳月の内に雨や雪に洗い流され、元の灰色に戻り、所々に薄っすらと色が残るだけだった。
廃線跡に松が生える

草生す道床上に松が生えていた。
 廃線跡は水田地帯に出て更に続いていた。だが人が通らなく、冬で枯れながらも草木が網のように茂り、足を取られそうになる。行く手にはまだ背の低い松が道を塞ぐように生えていた。人が切り開いた地が不要となると、蘇るように生える松に植物の生命力の強さを感じ、また廃線から月日が流れた事を強烈に印象付ける。

 途中で廃線跡跡は尽き、片側2車線の広い道路が廃線跡を取り込んだかのように伸びている。鉄道を感じさせる雰囲気は微塵も無い。
大社線の終点、大社駅

大社駅跡の構内。
堂々とした和風建築の大社駅
 つまらない道を黙々と歩いていると、2面のホームがある広い駅が見えてきた。遂に終点の大社駅に着いた。気が付いたら出雲市駅からここまで休まずぶっ通しで歩き続けていた。

 2面3線の長いホームに側線が1つある構内は広く、改めてかつての隆盛を感じる。そして出雲大社へ参拝する人々から忘れ去られるように乗客が減ってしまった時は、この広さがどんなに虚しく寂しかったのだろうか…。

 レールは途切れ、草生しているが、往時の雰囲気を十二分に感じられる。「出口」と書かれた看板、駅名票はそのままだ。駅舎の横に何と8つもの臨時改札口があり、頭上には「歓迎」「大社町」の看板が設置されている。

 駅舎の正面に回り、楽しみにしていた駅舎を見てみた。「大社造り」と称される大正13年に完成した寺社風建築の駅舎で、黒い瓦が敷詰められた屋根に白壁の大きな純和風の建物だ。これが駅だったのかと思う程の素晴らしく、出雲大社の玄関口の駅だった威厳に満ちている。もし「大社駅」の看板が掛かっていなかったら旅館か寺院かと間違える人がいてもおかしくない。

 駅舎内も和風で、現役時を思い起こさせる状態が保たれている。正面入り口向って左側の出札口と改札口上の時刻表もそのまにされている。一際印象的なのは、壁際に建っている木造の元出札口で、凝った和風の造は懐かしいアンティークの香を漂わす。後にこの出札口は観光案内所として利用され、「観光案内所」の札が未だに掛かっている。照明は灯篭みたいな形をしていて、天井中央からぶら下がっているものはまるで和風のシャンデリアだ。

 駅舎内のベンチに座り一休みしてから、出雲大社へと歩き始めた。ここから1.6kmと少し遠く、大社駅は中途半端な位置にあったものだと感じる。

 沿線の道路は初詣に向う車で混み合い、かなりのノロノロ運転で、歩く私とあまり変わらないスピードだ。歩き続けたので、足の疲れが残り、お腹も減った。参道の出雲蕎麦の店に入り、腹ごしらえをしてから参拝に向った。 

[2002,1月訪問]
大社駅、かつての出札口

大社駅駅舎内の元観光案内所(その前は出札口)。
駅員の格好をした人形が立っている。

大社駅駅舎、廃線後も大切に残されている

寺社風建築”大社造り”の旧大社駅駅舎。大社線廃線後も大社町により大切に保存されている。

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