深名線〜記憶の中の旅路〜
 

1989年冬(3月)、深名線初乗車


深名線への興味
 私が初めて深名線に乗ったのは、1989年の3月で、北海道初上陸1日目にしてすぐさま乗りに行っていたのだった。「何が何でも真っ先に深名線に乗りたかった!」という訳ではなく、11時頃、札幌に着く寝台特急北斗星3号で乗ってきて、繋がり良く1路線、ローカル線を制覇できるという感覚でしかなかった。
 でも、深名線は気になる路線でもあった。時刻表を眺めていると、レールファンの嗅覚というべきものだろうか…?眺めているだけで、何となく気になる路線が出てくるもので、私にとって深名線もそんな路線の一つだった。深川と名寄を結んでいるが、途中駅に中心となる主要都市があるわけでなく、聞いたことも無いような名前の駅がずらりと並び、沿線に有名な観光地がある訳でもない。列車本数は一日数本と極端に少ない。深川と名寄を行き来するなら、深名線を使うより、旭川乗換えで函館本線と宗谷本線を利用した方が早いし、列車本数も多い。きっとすごいローカル線なんだろうなと想像を巡らせていた。

初乗車
 北斗星4号で北海道初上陸を果たし、一般的な観光客らしく、札幌の有名観光地の一つである北海道大学のクラーク像の前で記念撮影をして、札幌駅に戻ってくると、12時30分発の特急ホワイトアローに乗り込んだ。
 深川駅に到着し、案内通り、朱鞠内行きの列車が出るホームに行くと、駅舎から離れたいちばん隅のホームだった。運良く窓際の席を確保したが、発車時間が近付くにつれ、席がどんどん埋まっていく。沿線に帰る町の人々らしき人が多い。ガラガラに空いているという予想は見事に外れ、活気付いた車内となり、深川駅を出発した。

幌成駅の貨車駅舎

幌成駅。




 車窓は程なくして人家が少ない雪原となった。小さい駅にこまめに停車していく。北海道初上陸のせいか、貨物列車の緩急車を転用した安っぽく…、けどどこか愛らしい駅舎が、私の目に新鮮に映った。
閑散とした深名線車内

幌加内以降の閑散とした車内。




 人がぽつりぽつりと降りていき、沿線一番の駅、幌加内駅に着くと、乗客のほとんどが降りていった。かと言って、大量に人が乗ってくる訳ではない…。車内は先程とは打って変わって、一気に閑散とした。よく見ると、地元の人と思われる人は数人で、残りの3人は私と同じように、乗り潰しに来たと思われる雰囲気を漂わせている。
政和駅

政和駅ホーム




 この冬は暖冬気味だったが、さすがにここまで来ると、雪深い景色となる。電柱についている政和駅の縦長の駅名板が、雪で埋まりそうになるのを見て、さすが雪国だと驚かされ、カメラを向ける。雪国に暮らさない私には尚更だ。
朱鞠内駅

朱鞠内駅に到着。




 列車は15時56分に終点の朱鞠内駅に到着した。この先の名寄へ行く列車に乗るには一時間半近くも待たなければいけない。

 
朱鞠内駅周囲の景色

朱鞠内駅とその周囲。




 線名を冠する駅で、近くには沿線ではそこそこ知られた観光地、朱鞠内湖があるので、結構な規模の街なんだろうなと想像していたが、建物は多くなく山間の小集落と言った程度の規模でしかなく、ホームからは雪原と雪を被った山が見えるだけだった。
名寄発深川行き列車

名寄方から深川行きの列車がやってきた。

 駅で入場券を買ったり、周囲をブラブラしてたりする内に、意外と早く時間は過ぎ、17時05分に名寄16時00分発の深川行き列車がやってきた。これが朱鞠内から深川への最終列車だ(幌加内−深川間は、この後にもう一本列車がある)。名寄−朱鞠内間には、たった3本の列車しか無いが、名寄から深川へと、まともに行ける唯一の列車だ。名寄8時11分発は朱鞠内駅で、5時間もの待ち時間が発生し、18時00発だと、朱鞠内駅止まりで、翌朝まで列車が無い。
 


 そして、17時21分、名寄行きの列車が出発した。これが名寄行きの最終列車となる。両方面とも、これが朱鞠内発の最終列車とは、あまりに早すぎるが、それだけ需要が少ないという事なのだろう。
乗客はと言うと、一般の乗客は見事にゼロだった。私と先程の朱鞠内行きの列車から乗り継いだレールファン3人の計4人のみと、すっかりレールファンの貸し切り列車となってしまった。
 先程から列車を共にしてきた同好の志同士、互いが微妙に気になっていたようで、いつしか4人は集まりだし、会話に花が咲く。その内、手持ち無沙汰の車掌氏も加わった。
 車窓はいつしか夜の闇に覆われていた。列車は新たな乗客が加わる事も無く、18時19分に名寄駅の0番ホームに到着した。
 短い時間だが、旅を共にした4人は、ある者は廃線となる名寄本線へ、ある者は旭川へ、ある者は北を目指した。そして、私は旭川へ行く1人と途中まで同行し、札幌へと舞い戻った。

my旅BOX-鉄道旅行と旅- (C)solano.