日本油脂専用線廃線跡(2)


瑞々しい水田の中に伸びる日本油脂専用線廃線跡

瑞々しい水田の中に日本油脂専用線跡が伸びる。
 鬱蒼とした雑木林を抜けると、日本油脂専用線の廃線跡は水田地帯の中に伸びていた。苗は青々しく成長し絨毯のように沿線に広がり、厚い雲の間からは太陽が強く照りつける。歩いている私には暑くて少々参るが、夏の本格的な訪れを予感させる気持ちのいい風景だ。

 歩いていると、廃線跡脇に「旧軌道跡には埋設配管が施設してありますので、自動車等の横断等をお断りします。 日本油脂株式会社」という看板が立っていた。この付近には、日本油脂の配管が埋まっているらしい。
日本油脂工場の敷地で道床跡は尽きる

そして、廃線跡は日本油脂愛知事業所
の中に吸い込まれていく。
 廃線跡は日本油脂の愛知事業所の隅に突き当たった。立入禁止の札と柵が設置してあり、柵の向こうの廃線跡はまるで秘境のように雑草が密集し、その中からも架線柱が伸び出ているのが見える。

 昔の2万5000分の1地図によると、専用線跡は、愛知事業所内を通り、まだ先まで伸びているらしい。敷地内は通れないので大回りして先を目指す。その時に敷地内の道床跡辺りを見ていると、雑草の中から架線柱が僅かに数本続いただけだった。さすがに敷地内の殆どは整地されているのだろう。
日本油脂工場内のカーブに鉄路の面影が残る

日本油脂工場の従業員通用門内
の道路のカーブに専用線の面影が
色濃く残る。
 大回りして県道72号線に出て歩いていると、日本油脂第2工場の正門があった。何気に構内に目を遣ると、何と専用線を走った凸形の小さな電気機関車が保存されているのが見えた。ダメ元で写真を取らせてくれないかと守衛さんに頼んでみたが、やはり撮影禁止と言われた。しかし、守衛さんは、その代わりにと名鉄河和線富貴駅から歩いた所に、同じ型の機関車が保存されている事を教えてくれた。後で行ってみよう。

 正門から県道72号線を南に歩いた。左横には南知多道路の築堤が暫く平行する。専用線は先程の日本油脂愛知事業所内を池沿いに通り抜け、南知多道路をアンダークロスし、県道72号を横切ると、日本油脂第2工場へと入っていた。今でも専用線が通っていた南知多道路のアンダークロス部分はあるが、道床跡は他の区間のように放置されず、周辺共々整備されている。だが、第2工場の従業員通用門から右手にカーブしながら構内に伸びているアスファルトの道は、地図上に標された専用線のカーブと見事に一致している。そのカーブに沿って、専用線時代には柵だったと思われるコンクリートの短いポールが一部残り、今では意味無さそうに整列していた。

日本油脂専用線の保存車両

日本油脂専用線を走ったデキ2、ク102

武豊市内東大高交通児童公園に静態保存
されている電気機関車「デ2」と、工員を輸送した
電車「ク102」




モ102電車を正面から見る

後ろに回りク102の顔を見てみる。
 名鉄河和線に乗り、知多武豊駅の1つ南隣の富貴駅で下車した。守衛さんに聞いた「東大交通公園」を色々な人に聞いても知っている人がいなく、かなり迷ったが、通り掛かった武豊町の富貴支所で「日本油脂の車両が保存されている所」と質問して、その場所が「東大高交通児童公園」だという事が解かった。単に聞き間違えていただけだった。話によるとそこまでは約30分も歩かなければいけない。仕方ないので暑い中、汗を拭いながら歩き続ける。道から少し離れた所に名鉄河和線のレールが平行するようにあり「何で近くに駅が無いんだ!」とうらめしく思いながら歩き続けた。

 約30分も歩き、ようやく東大高交通児童公園に着き、給食センターの建物の裏に電気機関車のデ2と、西武鉄道から譲渡された電車ク102を見つけた。早速、専用線を走った車両達に近寄り、カメラに収めたり、興味津々に室内を覗いたりする。暇そうなゴーカート係員の中高年の男性が倉庫の側に座っていて、手持ち無沙汰にそんな私を見ていた。

 日本油脂専用線の現役時代を知らないが、ク102の車体に「東大高交通児童公園」と大きく書かれ、パンタグラフが撤去された以外に、大幅に変えられた様子は無さそうだ。塗装はweb上で見た画像より、下部が少し赤いかもしれない。ク102の客室内は木製で傷みが目立ちながらも、いかにも昔の車両といった懐かしい風情を漂わす。デ2は塗装し直され、色褪せや傷みはそれほど目立たない。だけど、運転室内の装備は何世代も前の時代を感じるものだった。
モ101

武豊町内、長尾児童館に静態保存されている
「モ101」。随分と姿が変わっている。


 もう一ヶ所、河和線上ゲ駅徒歩5分の長尾児童館にも日本油脂専用線で活躍した電車「モ101」が静態保存されている。暑さの中、歩き続け疲れ切っているが、もうひと頑張りして見に行った。

 児童館の建物の裏に回ると、つやつやした真っ青な車体で、サッシ枠の窓からレースのカーテンが覗く「モ101」を目にし唖然とする。さすがにこれは変わり果てていると一目で解かる。

 建物に近い側の真中の扉に階段が設置され、階段には靴箱があり小さな靴がいくつも並んでいる。車内からは子供達の賑やかで楽しそうな声が聞こえる。保存車両としては原型が大きく損なわれ、引いてしまう部分もある。しかし、子供達が大きくなって「小さな頃、電車の部屋で遊んだ」とい楽しい想い出が心に残ればそれはそれでいい事なのかもしれない。

[2002,7月訪問]

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